本来であれば無理やりバーストさせたエーテルを鍛錬無しに自在に操ることなど不可能。ではアデルはこれをどうやってコントロールしているのか。答えは非常に簡単なことであった。

 血の滲む様な修行時代、カルナックの元で行ってきた日々が彼の精神を強くさせ微量ながらのエーテルコントロールを身に着けていた。それは昼間の剣聖結界を防いだ対法術防壁を展開したことからの布石。あの時カルナックが本当に試したかったことは精神寒波を防ぐ事に有らず、微量ながらも自身の周りにあるエーテルを操り自身の意識に合わせたエーテルコントロールにあった。
 これを老人は驚かずに見つめる、最初から分かっていたことのように笑みをこぼす。

「やはり貴様はカルナックの意思を継ぐ者じゃな」
「……何をチンプンカンプンな事を言ってるんだ爺さん」
「そのままの意味じゃよ」

 アデルは次第に立ち上がり体の回りから放出するエーテルを自身の体内へとゆっくりとではあるが吸収していく。はっきりと力がわいてくるのを実感できる。
 次第に剣聖結界の恩恵をその体で実感し始めていく、髪の毛は赤く染まり足元からは微量ながら炎が走る。筋肉組織が活性化され精神が研ぎ澄まされていくのが良く分かる。アデルにとって見ればはじめての体験でもある。

「いいか、忘れるでないぞ。ワシ等はいつでも貴様の周りに居る、しかしその力をどのように使うかは貴様自身が決めること。何事も荒く事を考えることは許さぬ、そうすれば貴様にも分かるだろう」

 老人はそこまで言うとアデルの目の前に立ち手を差し伸べた。

「炎という儚い存在を……」





「来ます!」

 カルナックの叫びと同時に部屋のドアが吹き飛び、中から尋常では無いエーテルの量が外へと溢れて来る。同時にとても嫌な気配と共にそれは現れた。