「名前を聞く限り、詐欺師ではなさそうなので、信用せざるをえないようですね。

…ちょっと失礼します。」

「な、なんだ?」

動揺する雄輝をよそに、亜里香はグイっと進み出て、雄輝の目を見つめ、目を閉じた。

こうやって、心を読むのだ。

『あやかしは花嫁にメロメロになるというが、確かにそうだな。

めっちゃかわいい!』

『それにしても、不思議な花嫁だなあ。花嫁だと言われてそれをありえないといって否定するとは。』

『何とかして説得してきてもらわないと。天涯孤独もいやだからな。

一族も繫栄するわけだし。』

はあっ、とため息をついた。

「あたしが花嫁だというのは、本当のようですね。

…ですが、あたしは道具にされているようにしか聞こえません!」

「そうじゃない。…ちゃんと、愛おしいと思っている。」

亜里香はかあっと赤くなった。確かにちゃんと心でも思っているのだ。

口で言われると、余計にこそばゆい。

「もう、信用するしかなさそうよ。

さっきから、可愛いって思ってるのが、顔に書いてるもの。

真顔を崩さなさそうな人なのに。気付かなかった?」

くすくすと、美紗が笑う。

「美紗が言うなら……。分かりました。」

ふっと笑って、雄輝がほほ笑んだ。

「それでいい。放課後、迎えに来る。」




「もーう、わけわからん!色々ありすぎ!」

「ドンマイ、亜里香。でもよかったじゃん。あの虎ノ門家の花嫁なんだから。」

「そうは言っても美紗、」

「おい!もう終わったか?もうとっくにチャイムなってんだぞ。

授業だ!席につけ!」

担任の声が聞こえて、亜里香たちは時計を見た。

「うっわ、マジ?もうこんな時間?もう授業受ける気ないわ。」

「それな」

麗羅と世羅が口々に言う。

「なんでもいいから、授業始めるぞー」

「「「「はあーい」」」」