「隣国でも流行り病が猛威を振るっているそうで、毎日多くの人が亡くなっているそうです」



「そうですか……」



 私の心は痛んだ。たとえどの国に住んでいようが、病に苦しんでいる人を救うことに変わりはない。だが、やはりわだかまりがないと言ったら噓になる。



「あなた方は隣国のご出身と伺っていますが……」



「はい……」 



「隣国にはご家族やご友人がいらっしゃるのでは?」 



 フィリップは、私が乗り気でないことを不思議に思っているようだ。









「もしあなたの大切な方が隣国にいらっしゃるなら、彼らに優先的に薬を手配するよう交渉してみましょう。それとも他に希望があればおっしゃって下さい。国王陛下は、国民の命を救ってくれたあなたにお礼がしたいそうです」



 私にある考えが浮かんだ。この国の国王の力があれば可能かもしれない。



 それは、とても卑怯な手だ。だが、この機会を逃してしまったら、もう次はないだろう。



「わかりました。薬を作ります。ただし、条件があります」



 私は心を決めた。



「ある人を助けて欲しいのです。それが薬を作る条件です」