「マリア様、どうか落ち着いてこれをご覧ください」



 メアリが、一枚の紙切れ差し出した。その手は震えている。



「そんなに難しい顔をしてどうしたの……?」



 不吉な予感がしたが、私は意を決して紙切れに視線を落とした。



「……!」



 見出しが目に入った途端、私は床に崩れ落ちた。



「そんな……お父様!」



 私はそのままその場から動けなくなった。









 私に渡された紙切れは、号外であった。



 メアリが、今日たまたま用事で訪れていた町で、配られていたものだという。



 紙切れに書かれていたのは、父が逃走先で捕らえられ、幽閉されたという内容だった。しかも幽閉されたのは、父だけではなく、祖父や父の男兄弟も、反逆の疑いありということで、一緒に幽閉されたというのだ。



 現在父たちは、裁判を待つ身とのことだが、有罪は確定だろう。



 私は、父たちがありもしない罪を着せられていることを確信している。だが、今の私は何の力もない普通の農民だ。助ける術はない。それこそ祈ることしかできないのだ。









 父のことで精神的に参ってしまった私は、一時的に寝込んでしまった。もちろん、何が原因で寝込んでしまったかは公にできないので、それはメアリが上手く言い繕ってくれた。









 今なお不安な日々が続いているが、少しは気持ちが落ち着いてきたはずだった。私の体調不良は、精神に基づくものであるから、精神が落ち着いてくれば体調も徐々に回復するものだと思っていた。



 しかし、どうだろうか。それに反して、体調がどんどん悪くなっているのだ。しかも、今まで経験したことのない体調の悪さだ。



 ――何か悪い病気かしら……?



 私はさらなる不安を抱えることとなった。