「とりあえず――『絶望の神殿』のシナリオをなぞる方向で行くか」

 つまり俺が主人公の代わりに同じようなイベントを体験していくのだ。

 その先に――このシナリオクリアの道がある。

『絶望の神殿』シナリオを達成すれば、魔王が封じた強力なアイテムが手に入る。

 それは魔王自身の力を封じたり、対抗したりする力があり、俺にかけられた呪いが解ける可能性も十分にある。

 ただし――そんなものを求めていると知られたら、魔王に反逆の意志ありとみなされかねない。
 なるべく誰にも知られないように、ことを進めなくてはならない――。

 さて、どうするか。

 いったん人間界に戻り、魔王に報告した後、上手く言いくるめて『剣魔ドレイク』を討伐する命令をもらうか。
 それとも魔王に報告せずに、このままドレイクを追って『絶望の神殿』を目指すか。

 前者は、俺が思うとおりの命令をもらえないかもしれない、というリスクがある。

 後者は、魔王の命令もないのに勝手な行動をするわけだから、それなりの処罰を受ける可能性がある。
 さっきも言ったように、下手をすると魔王に反逆の意志があると思われてしまう。

 どちらにせよ、リスクはあった。

「ベルダ様」

 コーデリアが進み出た。

「ドレイクとの戦いに臨むのでしょうか?」
「そうだな……いや、こういうのはどうだろう? 『剣魔ドレイク』は得難い戦力。彼を味方に付けるため、この暗黒騎士ベルダは彼を追うことに決めました、と」
「……強引ではありますが、成功すれば魔王軍に大きく利する行為。魔王様の納得も得られるかもしれません」
「なら、その旨を手紙にでもしたためて送ろう」
「えっ、直接言わないのですか?」
「いや、却下されたら嫌だし……」
「子どもですか」

 あ、コーデリアにツッコまれてしまった。

「とにかく、あたしも一緒に行きますから」
「いや、でも」
「あたしはお目付け役です」

 コーデリアが俺にずいっと顔を近づける。
 俺は思わず気圧されてしまった。

「いいですね、それで」

 さらに、ずいっ。

 俺はさらにさらに気圧される。

 前世で、こんな美少女と至近距離で会話したことなんてないから、近づかれると焦っちゃうんだよな。

「あ、ああ」

 俺は結局、承諾してしまった。