している神に仕える女性のことをいい、時に舞姫とか御神子《みかんこ》とかいわれてる。

巫女の果たす役割は時代と共に変化し、神楽を舞ったり、祈祷をしたり、占いをしたり、神託を得て他の者に伝えたり、口寄せなどをするなど神道において中心的な存在といわれてきたけど、時代が下って明治時代になると、神職の補佐的な役割に転じるようになり、現代では、巫女は神社に勤務し、主に神職の補助、また神事において神楽・舞を奉仕する役割を担う存在になった。

昔は神憑り的な神通力がある女性が巫女をしていたが、現在はその能力がある人が巫女をしてる神社は極稀になった。

『美月、年始年末は必ず、澤島神社に行きなさいよ!!』

「ーーわかってるって!!」

澤島神主家の血筋の私、佐伯美月《さえきみつき》は、分家の分家の分家の赤の他人レベルの縁も所縁も、もはやないのに、神通力が宿っているからと初経を迎えた13歳の時から澤島神社で巫女をさせられてる。

祭事が行われる度に触って澤島へ駆けつけ、巫女舞を踊ったり、賽銭箱の前で参拝客にお祓い棒の大麻《おおぬさ》を振ったりしてた。

巫女は25歳で定年退職で、3月に誕生日がくる私は、やっと来年の初詣でお役御免になり嬉しく思ってる。

京都で産まれ育った私。

12歳の時に着物を着て伏実稲荷大社の千本鳥居を歩いてる姿をたまたま通りすがったテレビ局の人に撮影され、全国ニュースで取り上げられたせいで、“無垢で天使のような可愛さ千年に1人の美少女”として有名になってしまった。

私も母も受験の年で洛西中学校に合格するための願掛けとして、着物を着て千本鳥居を通ると、願いが叶うという言い伝えを信じ、願いことを祈りながら参っていただけで、こんな事になるとは思ってもいなかった。

個人情報保護法という法律があるのに、通ってる公立小学校や学習塾にマスコミが詰め寄せ、ピアノとバイオリン、作文と詩のコンクールで入賞していて学習塾の模試でも常にトップ20に入ってる事からその情報が漏洩し、才色兼備な神懸かりの力を宿した少女とネット上で話題になってしまい、“佐伯”という名字から澤島神主家一族の末裔の可能性があると調べられ、遠縁の血筋とわかると澤島神社から使いがきて、巫女として神社の祭事を務めるよう言い渡された。

やりたくはなかった。

年間1500万円の報酬が支払われても、“神通力”がなくなるから“処女”でいないといけないといわれ、恋人を作る事を禁じられた。

こっそり恋人を作ろうとしたら、その意中の人が祟られて大怪我をしたり精神面が病んだりし、怖くなって恋愛を諦めた。

甘酸っぱい恋をする思春期と青春時代を、巫女を務めるために味わう事ができなかった。

だから、巫女の職を早く辞したかった。