普通だったら傷口のところに手のひらを当てるはず。
でも服が切れているところが、わたしには確認できる。服が切られたところというのは当然、ナイフが入ったところ。つまり傷口になる。
そこが見えてる?
橘先輩は傷口をおさえてはいない?
じゃあ、いったいなにを。
そこまで考えて、わたしはハッとした。
「……橘先輩、もしかしてそこに、やけどの跡があるんじゃないですか」
橘先輩は無言だった。わざとらしいくらいに反応を示さなかった。
「やけどの跡を見られるのが嫌なんですね。だから救急車を呼びたくないんですね」
橘先輩はわたしなんかは想像できないくらいに苦悩してきたはず。
中学生のころはやけどの跡をバカにされて、一時は不良の道へと走ったほど。
わたしにはすべての責任がある。
だからといって、自分を責めるだけで解決する問題じゃない。
橘先輩のためにできること、それがなにかを真剣に考えないといけない。
「……わかりました。とりあえず、救急車を呼ぶことはやめにします。その代わり、わたしにお腹を見せてください」
橘先輩は不可解そうな表情でわたしを見た。
まぶたがだんだんと落ちてきて、辛そうに見えた。傷は思った以上に深いのかもしれない。お腹をおさえていた手も下の方へと移動していた。
「怖いですか?昔の同級生みたいな反応をされることが。でもですね、橘先輩、わたしは違います。そういう人たちとは全く違うんです。どこが違うかというと、あの事故の当事者だからです」
「……」
「橘先輩をからかってきた人は、みんな関係のない人たちですよね。わたしはそうじゃない。あの事故を経験しています。だから決して適当な気持ちで言ってるわけではないんです。それに梨子ちゃんの手紙を見るとき、先輩は言いましたよね。苦しみも二人で分かち合えば怖くないって。今度はわたしです。橘先輩が背負ってきたもの、わたしも背負います。だからわたしのこと、信じてください」
でも服が切れているところが、わたしには確認できる。服が切られたところというのは当然、ナイフが入ったところ。つまり傷口になる。
そこが見えてる?
橘先輩は傷口をおさえてはいない?
じゃあ、いったいなにを。
そこまで考えて、わたしはハッとした。
「……橘先輩、もしかしてそこに、やけどの跡があるんじゃないですか」
橘先輩は無言だった。わざとらしいくらいに反応を示さなかった。
「やけどの跡を見られるのが嫌なんですね。だから救急車を呼びたくないんですね」
橘先輩はわたしなんかは想像できないくらいに苦悩してきたはず。
中学生のころはやけどの跡をバカにされて、一時は不良の道へと走ったほど。
わたしにはすべての責任がある。
だからといって、自分を責めるだけで解決する問題じゃない。
橘先輩のためにできること、それがなにかを真剣に考えないといけない。
「……わかりました。とりあえず、救急車を呼ぶことはやめにします。その代わり、わたしにお腹を見せてください」
橘先輩は不可解そうな表情でわたしを見た。
まぶたがだんだんと落ちてきて、辛そうに見えた。傷は思った以上に深いのかもしれない。お腹をおさえていた手も下の方へと移動していた。
「怖いですか?昔の同級生みたいな反応をされることが。でもですね、橘先輩、わたしは違います。そういう人たちとは全く違うんです。どこが違うかというと、あの事故の当事者だからです」
「……」
「橘先輩をからかってきた人は、みんな関係のない人たちですよね。わたしはそうじゃない。あの事故を経験しています。だから決して適当な気持ちで言ってるわけではないんです。それに梨子ちゃんの手紙を見るとき、先輩は言いましたよね。苦しみも二人で分かち合えば怖くないって。今度はわたしです。橘先輩が背負ってきたもの、わたしも背負います。だからわたしのこと、信じてください」