「よし!」
呆然としていた母さんが、ややあって、なにやら決意したように頷いた。
「レン、私が稽古をつけてあげますね」
「え? どうしたんですか、いきなり」
「男の子なのに魔法が使えるだけじゃなくて、『疾風連撃波<タービュランスウェイブ>』を簡単に使い、しかも、威力もとんでもない……もしかしたら、レンには魔法の才能があるのかもしれません。だとしたら、それを伸ばしてあげることが親の義務です」
「そうだな……レン、母さんに稽古をつけてもらいなさい。男だからと魔法のことは諦めていたが……もしかしたら、レンは伸びるかもしれないぞ」
「はい、よろしくおねがいします」
素直に母さんの話を受けることにした。
家庭に入る前の母さんは、色々な魔法を扱い、一線で活躍していたと聞く。
俺の知らない魔法の知識、技術を持っているに違いない。
そんな母さんに稽古をつけてもらえれば、さらに強くなることができるはずだ。
「お父さん、お母さん」
どこか期待した様子で、エリゼが二人に声をかける。
「ん? どうしたんだ、エリゼ」
「その、あの……わ、私にも稽古をつけてほしいです。お兄ちゃんと一緒がいいです」
稽古も一緒に、と言うエリゼは素直にかわいいと思う。
ただ、それはどうなのか?
エリゼは体が弱い。
散歩くらいなら問題ないが、稽古なんてしたらどうなるか。
父さんも同じ懸念を抱いたらしく、難しい顔に。
「うーん……エリゼのお願いならなんでも聞いてやりたいところだが、こればかりは許可できないな」
「エリゼちゃん。まずは、体を良くすることを一番に考えましょう。元気になったら、いくらでも稽古をつけてあげますから……ね?」
「……はい」
寂しそうにエリゼは頷いた。
エリゼも、無茶なことを言っているという自覚はあるのだろう。
でも……
残念そうにするエリゼを見ていると、どうにかしてあげたい、と思う。
できることならエリゼの願いを叶えたいが、あいにく、体を強くする魔法なんてものはない。
万能の治療薬『エリクサー』でもあれば話は別なのだけど、そんなものが都合あるわけがない。
エリゼには悪いが、今回は諦めてもらおう。
「それじゃあ、私はレンと稽古をしますね。お父さんは、アラムを頼めますか?」
「あっ……そうだったな。わかった、任せておけ」
今の「あっ」は、どういう意味だろうか?
もしかして忘れていたのだろうか?
哀れ、アラム。
父さんは、アラムが吹き飛ばされた方に歩いて……
そして母さんは、家の中から魔法人形を持ち出してきた。
魔法人形というのは、魔法の訓練に使う的だ。
魔法に対する高い耐性を持っているため、的として最適。
さらに魔法の威力を数値化してくれるという機能付き。
一度、使ってみたかったんだけど、俺にはまだ早いと断られていたんだよな。
今にして思うと、俺が男だということが関係していたのだろう。
「お兄ちゃん、がんばってください!」
エリゼは、引き続き俺の訓練を見るつもりらしい。
訓練なんて見ても退屈だと思うが……まあいいか。
エリゼに見られていると、不思議とやる気が出てくる。
「もう一度、確認しておきますが……レンは魔法を使えるんですよね?」
「はい、使えますよ」
「そうなのですか……改めて聞くと驚きね。しかし、どこで魔法を覚えたのかしら? 魔法書の類は与えていませんよね?」
「それは……」
転生したからです。
……なんて言っても、普通、信じてくれないだろう。
最悪、大人をからかうんじゃない、と怒られてしまうかもしれない。
それと、男である俺が魔法を使える理由はわからない。
謎だ。
答えようがないんだよな。
ここは、適当にごまかしておこう。
「姉さんが魔法を使っているところを、たまたま見て……それで覚えました。それまでは、男が魔法を使えないなんて知らなかったので。普通に、誰でも使えるものだと思っていました」
「なるほど、そういうことなのね。でも、見るだけで覚えることができるなんて……やっぱり、レンは魔法の才能があるのかもしれませんね。男の子だからと諦めていましたけど……どうやら、それは間違った判断だったみたいね」
間違いというが、母さんの判断は仕方ないと思う。
俺が魔法を使える方が異常なのだろう。
この辺り、いずれ原因を突き止めた方がいいかもしれないな。
「そうなると、レンは基礎を知らないことになりますね。それはいけませんね。いいですか、レン? 直感で魔法を使うなんて、それはすごいことです。しかし、基礎を疎かにしてはいけません。自分が使っている魔法がどんなものなのかきっちり理解しないと、いつか成長が止まってしまいます。逆に言うと、ちゃんと基礎を学んでおけば、さらなる成長が期待できます」
「はい!」
「退屈かもしれませんが、まずは魔法の基礎理論について話しますね」
「退屈なんてことはありません。楽しみにしています」
本心だ。
あれから500年。
女性しか魔法が使えない、という予想外の事態はあったものの……
それは別にして、どのように魔法が進化しているのか、とても興味がある。
ものすごく期待していた。
期待していたのだけど……
「いいですか? レン。そもそも魔法というものは……」
母さんが基礎の魔法理論を語る。
その話を聞いて……俺は、軽く混乱した。
なんだ、これは……?
これが基礎の魔法理論だというのか?
ありえない。
こんなものが魔法理論だなんて……
だって、子供でも知っているような、ママゴトみたいなレベルじゃないか。
基礎中の基礎の、さらにその中でもレベルが低い基礎の、さらにさらに誰でも理解できるようなレベルに落とし込んだ内容で……
要するに、母さんが話している魔法理論は、赤ちゃんレベルのものだった。
驚くほどに低レベルだ。
母さんは、なぜこんな低レベルな魔法理論をドヤ顔で語っているのだろうか?
もしかして、男ということで舐められているのか?
お前にはこのレベルがお似合いだぞ……とか?
……いや。
母さんはそんなことをするような人じゃない。
何か意味があるはずだ。
「……そうか!」
話をする前に、母さんは基礎が大事だと言った。
その通りだ。
魔法に限らず、どんな物事でも基礎を疎かにしてはいけない。
しかし、俺はどうだ?
前世では賢者ともてはやされて……
基礎なんて……と、疎かにしていたところがあった。
きっと、母さんはそのことを見抜いたに違いない。
だから、あえて基礎の中の基礎から始めることにしたんだ。
これは、『慢心してはいけない』という教えなのだろう。
「どうしました、レン? ぼーっとしているみたいだけど……ちゃんと聞いていますか?」
「はい、大丈夫です!」
心を入れ替えないといけないな。
俺は、低レベルすぎる魔法理論に耳を傾けた。
低レベルすぎて眠くなってきたが、それでも耐えて、最後まで聞いた。
「よし、魔法の基礎理論についてはこのようなところですね。いきなりでわからないことも多いかもしれませんが……どうですか?」
「はい。問題なく覚えました」
「一度聞いただけで? 本当ですか?」
「本当ですよ。なんなら復唱しましょうか?」
「いえ……疑って悪かったわ。そうよね、レンは嘘をつくような子じゃないし……だとしたら、すごいわ。調子に乗って中級の魔法理論まで踏み入ってしまったのですが、きちんと理解しているなんて」
うん?
今、中級の魔法理論と聞こえたような気がするが……まあ、聞き間違いだろう。
あんな低レベルの魔法理論が中級であるわけがないからな。
「では、今の魔法理論を元に、改めて魔法を使ってみましょう。まずは、私が見本を見せますね」
「はい!」
「いきますよ」
母さんは手の平を魔法人形に向けて、魔力を集中させる。
そして、
「火炎槍<ファイアランス>!」
炎の槍が放たれた。
炎の槍はまっすぐに飛び、魔法人形を直撃した。
ゴゥッ! という音と共に炎が荒れ狂う。
それから、魔法人形の上に『75』という数字が表示された。
75という数字は魔法の威力を表している。
普通の魔法使いなら100に達するらしいから、現役を引退したことを考えると、母さんの魔法はなかなかの威力だ。
「ふう……こんなところでしょうか。どうですか?」
「はい、すごいです!」
「お母さん、かっこいいです」
俺とエリゼに褒められて、母さんは嬉しそうな照れくさそうな、そんな笑みを浮かべた。
子供に褒められるというのは、親にとってすごく嬉しいらしい。
「それでは、次はレンの番ですよ。今のようにやってみなさい」
「わかりました」
手の平に魔力を収束させる。
光の粒子が集まり、キラキラと輝いた。
そして……それを一気に解き放つ!
「火炎槍<ファイアランス>!」
ゴッ……ガァアアアアア!!!!!
母さんの魔法の何倍もの巨大な炎の槍が形成されて、高速で射出された。
魔法人形を飲み込み、紅蓮の炎を撒き散らす。
魔法人形の上に『999』という数字が表示されるが……
そこが限界だったらしく、次の瞬間、表示がバグって壊れてしまう。
「……」
魔法人形が壊れるという予想外の結果を目の当たりにして、母さんは唖然とした。
「母さん、どうですか? とりあえず、今のが俺の全力なんですけど……でも、これじゃあまだまだですよね。もっともっと強くなりたいんですけど、どうすればいいと思います?」
「え? これでまだまだなんですか? もっと上を?」
「もちろんです。これくらいで満足していたらダメになってしまいますからね。俺が目指すところは、もっともっと上です」
「……あ、うん。ソウデスカ」
「母さん?」
「……レン、あなたは免許皆伝よ。私が教えられることはもう何もないわ」
「えぇ!?」
「お兄ちゃん、すごいです!」
俺は戸惑い……
エリゼは無邪気に俺の活躍を喜ぶのだった。
呆然としていた母さんが、ややあって、なにやら決意したように頷いた。
「レン、私が稽古をつけてあげますね」
「え? どうしたんですか、いきなり」
「男の子なのに魔法が使えるだけじゃなくて、『疾風連撃波<タービュランスウェイブ>』を簡単に使い、しかも、威力もとんでもない……もしかしたら、レンには魔法の才能があるのかもしれません。だとしたら、それを伸ばしてあげることが親の義務です」
「そうだな……レン、母さんに稽古をつけてもらいなさい。男だからと魔法のことは諦めていたが……もしかしたら、レンは伸びるかもしれないぞ」
「はい、よろしくおねがいします」
素直に母さんの話を受けることにした。
家庭に入る前の母さんは、色々な魔法を扱い、一線で活躍していたと聞く。
俺の知らない魔法の知識、技術を持っているに違いない。
そんな母さんに稽古をつけてもらえれば、さらに強くなることができるはずだ。
「お父さん、お母さん」
どこか期待した様子で、エリゼが二人に声をかける。
「ん? どうしたんだ、エリゼ」
「その、あの……わ、私にも稽古をつけてほしいです。お兄ちゃんと一緒がいいです」
稽古も一緒に、と言うエリゼは素直にかわいいと思う。
ただ、それはどうなのか?
エリゼは体が弱い。
散歩くらいなら問題ないが、稽古なんてしたらどうなるか。
父さんも同じ懸念を抱いたらしく、難しい顔に。
「うーん……エリゼのお願いならなんでも聞いてやりたいところだが、こればかりは許可できないな」
「エリゼちゃん。まずは、体を良くすることを一番に考えましょう。元気になったら、いくらでも稽古をつけてあげますから……ね?」
「……はい」
寂しそうにエリゼは頷いた。
エリゼも、無茶なことを言っているという自覚はあるのだろう。
でも……
残念そうにするエリゼを見ていると、どうにかしてあげたい、と思う。
できることならエリゼの願いを叶えたいが、あいにく、体を強くする魔法なんてものはない。
万能の治療薬『エリクサー』でもあれば話は別なのだけど、そんなものが都合あるわけがない。
エリゼには悪いが、今回は諦めてもらおう。
「それじゃあ、私はレンと稽古をしますね。お父さんは、アラムを頼めますか?」
「あっ……そうだったな。わかった、任せておけ」
今の「あっ」は、どういう意味だろうか?
もしかして忘れていたのだろうか?
哀れ、アラム。
父さんは、アラムが吹き飛ばされた方に歩いて……
そして母さんは、家の中から魔法人形を持ち出してきた。
魔法人形というのは、魔法の訓練に使う的だ。
魔法に対する高い耐性を持っているため、的として最適。
さらに魔法の威力を数値化してくれるという機能付き。
一度、使ってみたかったんだけど、俺にはまだ早いと断られていたんだよな。
今にして思うと、俺が男だということが関係していたのだろう。
「お兄ちゃん、がんばってください!」
エリゼは、引き続き俺の訓練を見るつもりらしい。
訓練なんて見ても退屈だと思うが……まあいいか。
エリゼに見られていると、不思議とやる気が出てくる。
「もう一度、確認しておきますが……レンは魔法を使えるんですよね?」
「はい、使えますよ」
「そうなのですか……改めて聞くと驚きね。しかし、どこで魔法を覚えたのかしら? 魔法書の類は与えていませんよね?」
「それは……」
転生したからです。
……なんて言っても、普通、信じてくれないだろう。
最悪、大人をからかうんじゃない、と怒られてしまうかもしれない。
それと、男である俺が魔法を使える理由はわからない。
謎だ。
答えようがないんだよな。
ここは、適当にごまかしておこう。
「姉さんが魔法を使っているところを、たまたま見て……それで覚えました。それまでは、男が魔法を使えないなんて知らなかったので。普通に、誰でも使えるものだと思っていました」
「なるほど、そういうことなのね。でも、見るだけで覚えることができるなんて……やっぱり、レンは魔法の才能があるのかもしれませんね。男の子だからと諦めていましたけど……どうやら、それは間違った判断だったみたいね」
間違いというが、母さんの判断は仕方ないと思う。
俺が魔法を使える方が異常なのだろう。
この辺り、いずれ原因を突き止めた方がいいかもしれないな。
「そうなると、レンは基礎を知らないことになりますね。それはいけませんね。いいですか、レン? 直感で魔法を使うなんて、それはすごいことです。しかし、基礎を疎かにしてはいけません。自分が使っている魔法がどんなものなのかきっちり理解しないと、いつか成長が止まってしまいます。逆に言うと、ちゃんと基礎を学んでおけば、さらなる成長が期待できます」
「はい!」
「退屈かもしれませんが、まずは魔法の基礎理論について話しますね」
「退屈なんてことはありません。楽しみにしています」
本心だ。
あれから500年。
女性しか魔法が使えない、という予想外の事態はあったものの……
それは別にして、どのように魔法が進化しているのか、とても興味がある。
ものすごく期待していた。
期待していたのだけど……
「いいですか? レン。そもそも魔法というものは……」
母さんが基礎の魔法理論を語る。
その話を聞いて……俺は、軽く混乱した。
なんだ、これは……?
これが基礎の魔法理論だというのか?
ありえない。
こんなものが魔法理論だなんて……
だって、子供でも知っているような、ママゴトみたいなレベルじゃないか。
基礎中の基礎の、さらにその中でもレベルが低い基礎の、さらにさらに誰でも理解できるようなレベルに落とし込んだ内容で……
要するに、母さんが話している魔法理論は、赤ちゃんレベルのものだった。
驚くほどに低レベルだ。
母さんは、なぜこんな低レベルな魔法理論をドヤ顔で語っているのだろうか?
もしかして、男ということで舐められているのか?
お前にはこのレベルがお似合いだぞ……とか?
……いや。
母さんはそんなことをするような人じゃない。
何か意味があるはずだ。
「……そうか!」
話をする前に、母さんは基礎が大事だと言った。
その通りだ。
魔法に限らず、どんな物事でも基礎を疎かにしてはいけない。
しかし、俺はどうだ?
前世では賢者ともてはやされて……
基礎なんて……と、疎かにしていたところがあった。
きっと、母さんはそのことを見抜いたに違いない。
だから、あえて基礎の中の基礎から始めることにしたんだ。
これは、『慢心してはいけない』という教えなのだろう。
「どうしました、レン? ぼーっとしているみたいだけど……ちゃんと聞いていますか?」
「はい、大丈夫です!」
心を入れ替えないといけないな。
俺は、低レベルすぎる魔法理論に耳を傾けた。
低レベルすぎて眠くなってきたが、それでも耐えて、最後まで聞いた。
「よし、魔法の基礎理論についてはこのようなところですね。いきなりでわからないことも多いかもしれませんが……どうですか?」
「はい。問題なく覚えました」
「一度聞いただけで? 本当ですか?」
「本当ですよ。なんなら復唱しましょうか?」
「いえ……疑って悪かったわ。そうよね、レンは嘘をつくような子じゃないし……だとしたら、すごいわ。調子に乗って中級の魔法理論まで踏み入ってしまったのですが、きちんと理解しているなんて」
うん?
今、中級の魔法理論と聞こえたような気がするが……まあ、聞き間違いだろう。
あんな低レベルの魔法理論が中級であるわけがないからな。
「では、今の魔法理論を元に、改めて魔法を使ってみましょう。まずは、私が見本を見せますね」
「はい!」
「いきますよ」
母さんは手の平を魔法人形に向けて、魔力を集中させる。
そして、
「火炎槍<ファイアランス>!」
炎の槍が放たれた。
炎の槍はまっすぐに飛び、魔法人形を直撃した。
ゴゥッ! という音と共に炎が荒れ狂う。
それから、魔法人形の上に『75』という数字が表示された。
75という数字は魔法の威力を表している。
普通の魔法使いなら100に達するらしいから、現役を引退したことを考えると、母さんの魔法はなかなかの威力だ。
「ふう……こんなところでしょうか。どうですか?」
「はい、すごいです!」
「お母さん、かっこいいです」
俺とエリゼに褒められて、母さんは嬉しそうな照れくさそうな、そんな笑みを浮かべた。
子供に褒められるというのは、親にとってすごく嬉しいらしい。
「それでは、次はレンの番ですよ。今のようにやってみなさい」
「わかりました」
手の平に魔力を収束させる。
光の粒子が集まり、キラキラと輝いた。
そして……それを一気に解き放つ!
「火炎槍<ファイアランス>!」
ゴッ……ガァアアアアア!!!!!
母さんの魔法の何倍もの巨大な炎の槍が形成されて、高速で射出された。
魔法人形を飲み込み、紅蓮の炎を撒き散らす。
魔法人形の上に『999』という数字が表示されるが……
そこが限界だったらしく、次の瞬間、表示がバグって壊れてしまう。
「……」
魔法人形が壊れるという予想外の結果を目の当たりにして、母さんは唖然とした。
「母さん、どうですか? とりあえず、今のが俺の全力なんですけど……でも、これじゃあまだまだですよね。もっともっと強くなりたいんですけど、どうすればいいと思います?」
「え? これでまだまだなんですか? もっと上を?」
「もちろんです。これくらいで満足していたらダメになってしまいますからね。俺が目指すところは、もっともっと上です」
「……あ、うん。ソウデスカ」
「母さん?」
「……レン、あなたは免許皆伝よ。私が教えられることはもう何もないわ」
「えぇ!?」
「お兄ちゃん、すごいです!」
俺は戸惑い……
エリゼは無邪気に俺の活躍を喜ぶのだった。