そして、駅の前に小さなカフェがあって、俺たちはそこに入ることにしたんだよ。そこはね、二階にある小さなカフェで、それなりに混雑していたよ。
「私、初めて入った。でもね、一度は行ってみたいと思ってたの」
「俺も初めてだよ。こんなカフェがあったのすら知らなかった」
「よかったね、一つお店を知れたじゃん」
「あぁ、そうかもな」
「じゃ、座ろっか」
 店内は混雑していたが、座れないほどではなかった。俺たちは奥まったテーブル席に案内され、メニュー表を見る。一般的な喫茶店の相場がわからないけれど、コーヒーは一杯五百円、結構高い気がするよ。後は、サンドイッチとかパフェとか軽食もあるようだった。
 俺はコーヒー、優奈は紅茶を頼んだ。注文を済ませると、ウエイトレスが消えて、俺たちの間に、しんみりとした空気が流れた。店内は、ジャズらしき音楽が流れている。俺は、全くジャズ何で知らないから、興味ないけれど、軽妙な音楽であると感じたよ。
「健一は、瑞希といつから付き合ってるの?」
 唐突に、優奈が囁いた。
 さて、どう答えるべきなんだろう。色々面倒なんだよ。俺たちの関係を話すのは、何かこう、ふにゃふにゃとした柔らかい部分を刺激されるようで、嫌になってしまう。
 だってさ、俺たちの高校時代は、暗黒だったよね。それで、あまり思い出したくないっていうか……。もちろん、瑞希と一緒に居た時間はかけがえない。でも学校内は特に憂鬱だったよ。
「高校二年からかな」
 俺は正直に答えたよ。だってさ偽る意味ってあまりないよね。
「へぇ。高校も一緒で、大学も一緒にしたなんてすごいよね。あのさ、瑞希から聞いたんだけど、幼稚園から一緒なんでしょ?」
「うん、そうだけど」
「ふ~ん、少女漫画みたいな恋愛だねぇ、いいなぁ、私もそんな男の子がいたらいいのに」
「サークルの中で誰か探せばいいじゃん」
「えぇぇ、ダメダメ、あのサークルの男子、みんな変なんだもん」
「それって俺も含まれてるの?」
「テヘ、嘘。健一は別だよ。でも他の男子はねぇ。何かアニメとかの話してるしさ。まぁそう言うのは別にいいんだけど、私よくわからないし」
 確かに俺たちのサークルの男子は、よくアニメを見ている。深夜アニメというヤツだ。俺は全く見ないから、話しに付いて行けないけれど、それなりに面白い世界のようだった。
「俺もアニメとか詳しくないよ」