「オスとメスがまぐわうことで、その現象が起きるわけですわよね。しかし魔物を観察していても、まぐわっているのは同種族だけであって、他種族との間に行為を見ることはできない……となると」
俺の目をじーっと見つめながら、考えている。
「お兄さまは、人間のメスと繁殖するご予定ですの?」
素晴らしい質問だ。
いいパンチをレバーに一発喰らった感じだ。
「いまのところご予定はありません! 俺の生活見ててわかるでしょう!?」
フウカはふむふむと頷いた。
「しかし植物などを見ると、交配は見られるのですわ。マカパカメグサとミドリバラが生えている場所には、その中間の品種のようなものが発生していまして、わたくし、名前をつけるのに大変頭を捻りましたのよ。花言葉は先にできましたわ、太陽のような花を咲かせることから“輝かしい知性”に決めましたの。それはともかく、種として近い者同士でことが行われるかどうかが重要……となれば」
話が危険な方向に向かっている。
俺がなんとか軌道修正をしようと考えていると――。
「ではお兄さま、わたくしたちで、まぐわってみてはいかがでしょう?」
思わず水を吹きだしそうになる。
「それはその……直接的すぎるので……」
「人間と魔物との間に子供はできるのか……ふむ、興味深いテーマですわお兄さま! となるとわたくしは卵を産むのかしら? 人間の卵? ううーん……」
「深く考えるのはよそう」
「そうですわ!」
フウカはポンと手を叩いた。
「お兄さまから子種を頂ければ、検証できますわね! 子種はどこから出ますの?」
俺は今度こそ、水を吹きだした。
「その話、人がいるところでするんじゃないぞ」
「ではふたりきりで、ひっそりといたしましょう」
「そういう問題じゃない」
そんなことを話しながら村に戻ると、薪を背負った老人が、腰を押さえていた。
「いつつつつ……」
「大丈夫ですか?」
「これはソラどの。問題はございません、いつものことですじゃ……若い者はみな労役に取られてしまいましたからな。年は取りとうないもんじゃ……」
「ちょっとそれ、貸してもらえますか?」
俺は老人から、背負子を借りた。
「何本か、薪を使わせてもらっていいでしょうか?」
「おお、またソラどのの錬金術じゃな!」
老人はわくわくした目で俺の手元を見つめている。
俺は薪の繊維を《分解》して《構築》、タイヤをふたつ作った。背負子の下にシャフトを通してタイヤを付ける。そして取っ手を伸ばせば、キャリーカートの完成だ。
「道を整備しましたから、これの方が運びやすいと思います」