4、どうやら今日が最期のようです。
私はスマホのアラームを聞き、目が覚めた。
また無事に朝が来た。しかし、違和感がある。言葉では表すことの出来ない違和感がある。多分、今日で私は死んでしまうんだろう。何となくそんな気がした。
そう思うと悲しく、涙が出てくる。だけど私は涙を拭い考える。このことを周りの人に言ったら方がいいのか。それとも誰にも言わない方がいいのか。
言うと周りの人に気を使わせてしまうかもしれない。言わないと明日私が死んでいた時に周りが驚き、悲しむかもしれない。
そう悩んでいる間にお母さんが私の部屋をノックしてきた。
「沙奈恵ー、そろそろ起きなー」
どうやら考えている間にかなり時間が経っていたようだ。
私は結論を出せないまま部屋を出てリビングに向かった。
「……はぁ」
私は支度を終え家を出ると、自然とため息がついてしまう。
結局私は、親に今日死んでしまうかもしれないことを言わずに家を出た。
すると隣にいた花音は聞いてきた。
「沙奈恵?どうかした?」
私がため息をついたからだろう。私はまた悩んだ。正直言った方が私的には楽だ。それでも花音に心配をかけたくない。そう思い、少し明るく言う。
「何でもないよ」
「そっかー」
それから花音と学校へ向かいながら実のない話をした。それでも私はその時間がとても嬉しかった。ずっとこの時間が続けばいいのに。そう私は思った。
教室に入るといつも通り騒がしかった。私はあまり騒がしい場所は好きではない。それでも今日で最期かと思うととても悲しい。
私は授業が進む度に悲しく、泣いてしまいそうになる。しかし、それを我慢して授業を受ける。残り少ない時間を悲しさで終わらせるより、少しでも多く楽しさや嬉しさなどで過ごしていきたいからだ。
私にとって最後の学校が終わった。楽しいことも嬉しいことも、悲しいことも色々この学校で経験した。
みんなが教室から出るなか、私は教室を出るのをためらう。すると、花音が私の肩を優しく叩く。
「沙奈恵、朝から少し変だけど大丈夫?」
花音の顔を見ずに答える。
「……大丈夫だよ」
「…そんなことないでしょ。朝からずっと変だったし、授業を受ける度に悲しそうな顔をしてたし……」
それから数秒の沈黙が訪れた。
そして私は決意して花音に言った。
「……花音、大事な話があるからあの公園行こう…」
花音は頷く。その顔は何かを察したように悲しそうだった。
私たちが公園に着くと、誰もいなかった。私がブランコに座り、その隣に花音も座る。
私は深呼吸をして言う。
「……この前病院で私の余命はもう1週間もないって言われたじゃん」
すると花音は横から見ても分かるくらい悲しそうな表情をする。これまで花音とはあまり余命の話をしてこなかった。花音の悲しい顔を見たくないという自分勝手な理由だ。
それでも今日はちゃんと聞いて欲しい。そして受け入れて欲しい。それがどんなに悲しいことでも。
「今日で余命を言われてから3日目なんだけど、私にもいつ死ぬか分からない。今日死ぬかもしれないし、明日かもしれない」
花音の表情はより悲しそうになる。そんな顔をされるととても話しづらい。
私はもう一度深呼吸をして言う。
「…私が言いたいことは、いつか私はいなくなる。それでも悲しまずに前に進んで欲しいってこと。難しいかもしれないけど……」
花音が呟く。
「……そんなこと…出来ない」
まぁ、そうだろう。人が居なくなるのに悲しまずにいられる人なんてなかなかいない。
だから私は花音に提案する。
「じゃあ花音、このペン持っててよ」
私は筆箱の中から黄色のペンを取りだした。
花音はこっちを向いて聞いてきた。
「……なんで?」
私な少し考えて言う。
「んー、言葉にするのは難しいんだけど…これを買ったのは『逆のペンを持つことによっていつでも相手のことを思い出せる』って感じだったよね」
花音は頷く。
「でも私が死んじゃったら、私は花音の事を思い出せないと思う。だったら花音に両方持ってもらって『私たちはいつでも一緒にいる』って思ってほしい……」
私が言い終わると花音は私の目を真剣に見て言う。
「……分かった。でも、一つだけ訂正させて。私たちは死んでも相手のことを思い出せる。別に根拠はないけど……」
そう言うと花音は少し笑った。確かに私たちは死んでも相手のことを思い出せる。理由なんてない。しいて言えば友達だからだ。
そして私は花音にペンを渡そうとして、少し止まる。
「花音、ペンを渡すのまた今度でいい?」
「いいけど、どうしたの?」
「私が死ぬギリギリまでペンを持っていたいなって……」
私の自分勝手な理由だ。それでも花音は優しく微笑んでくれた。
家に帰ると私はすぐに自分の部屋に入り、机を少し片付けた。そしてその机の上に手紙の入った封筒を2つ置いた。
1つは両親へ。これまでお世話になったこと、私が病院にいる時も私を楽しませてくれたことが、本当に嬉しかった。その事を手紙にまとめたらとても1枚じゃ収まりきらなかった。
そしてもう1つの封筒にはペンを入れた。とても明るい色で私には似合わなそうなペンだ。
それから私は最期の数時間を楽しんだ。いつも通りの変わらない出来事のひとつひとつが、とても嬉しくて楽しい。
だけど時間は進んでいき、日付が変わるまで1時間をきった。私は次に寝てしまったらもう目が覚めない。
私はベッドに座り、息を吐く。私にはもう明日が来ない。そう思うととても悲しく涙が出てくる。今日は泣くのを何回も我慢したんだ。今くらいは我慢せずに泣いてもいい。
「……死ぬの、怖いなぁ……」
自然と呟いてしまう。
それから私の意識は朦朧としてきた。人は眠りたくなくても自然と寝てしまう生き物だ。なんて不便なんだろう。
そう思いながら私は眠りについた。
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私はスマホのアラームを聞き、目が覚めた。
また無事に朝が来た。しかし、違和感がある。言葉では表すことの出来ない違和感がある。多分、今日で私は死んでしまうんだろう。何となくそんな気がした。
そう思うと悲しく、涙が出てくる。だけど私は涙を拭い考える。このことを周りの人に言ったら方がいいのか。それとも誰にも言わない方がいいのか。
言うと周りの人に気を使わせてしまうかもしれない。言わないと明日私が死んでいた時に周りが驚き、悲しむかもしれない。
そう悩んでいる間にお母さんが私の部屋をノックしてきた。
「沙奈恵ー、そろそろ起きなー」
どうやら考えている間にかなり時間が経っていたようだ。
私は結論を出せないまま部屋を出てリビングに向かった。
「……はぁ」
私は支度を終え家を出ると、自然とため息がついてしまう。
結局私は、親に今日死んでしまうかもしれないことを言わずに家を出た。
すると隣にいた花音は聞いてきた。
「沙奈恵?どうかした?」
私がため息をついたからだろう。私はまた悩んだ。正直言った方が私的には楽だ。それでも花音に心配をかけたくない。そう思い、少し明るく言う。
「何でもないよ」
「そっかー」
それから花音と学校へ向かいながら実のない話をした。それでも私はその時間がとても嬉しかった。ずっとこの時間が続けばいいのに。そう私は思った。
教室に入るといつも通り騒がしかった。私はあまり騒がしい場所は好きではない。それでも今日で最期かと思うととても悲しい。
私は授業が進む度に悲しく、泣いてしまいそうになる。しかし、それを我慢して授業を受ける。残り少ない時間を悲しさで終わらせるより、少しでも多く楽しさや嬉しさなどで過ごしていきたいからだ。
私にとって最後の学校が終わった。楽しいことも嬉しいことも、悲しいことも色々この学校で経験した。
みんなが教室から出るなか、私は教室を出るのをためらう。すると、花音が私の肩を優しく叩く。
「沙奈恵、朝から少し変だけど大丈夫?」
花音の顔を見ずに答える。
「……大丈夫だよ」
「…そんなことないでしょ。朝からずっと変だったし、授業を受ける度に悲しそうな顔をしてたし……」
それから数秒の沈黙が訪れた。
そして私は決意して花音に言った。
「……花音、大事な話があるからあの公園行こう…」
花音は頷く。その顔は何かを察したように悲しそうだった。
私たちが公園に着くと、誰もいなかった。私がブランコに座り、その隣に花音も座る。
私は深呼吸をして言う。
「……この前病院で私の余命はもう1週間もないって言われたじゃん」
すると花音は横から見ても分かるくらい悲しそうな表情をする。これまで花音とはあまり余命の話をしてこなかった。花音の悲しい顔を見たくないという自分勝手な理由だ。
それでも今日はちゃんと聞いて欲しい。そして受け入れて欲しい。それがどんなに悲しいことでも。
「今日で余命を言われてから3日目なんだけど、私にもいつ死ぬか分からない。今日死ぬかもしれないし、明日かもしれない」
花音の表情はより悲しそうになる。そんな顔をされるととても話しづらい。
私はもう一度深呼吸をして言う。
「…私が言いたいことは、いつか私はいなくなる。それでも悲しまずに前に進んで欲しいってこと。難しいかもしれないけど……」
花音が呟く。
「……そんなこと…出来ない」
まぁ、そうだろう。人が居なくなるのに悲しまずにいられる人なんてなかなかいない。
だから私は花音に提案する。
「じゃあ花音、このペン持っててよ」
私は筆箱の中から黄色のペンを取りだした。
花音はこっちを向いて聞いてきた。
「……なんで?」
私な少し考えて言う。
「んー、言葉にするのは難しいんだけど…これを買ったのは『逆のペンを持つことによっていつでも相手のことを思い出せる』って感じだったよね」
花音は頷く。
「でも私が死んじゃったら、私は花音の事を思い出せないと思う。だったら花音に両方持ってもらって『私たちはいつでも一緒にいる』って思ってほしい……」
私が言い終わると花音は私の目を真剣に見て言う。
「……分かった。でも、一つだけ訂正させて。私たちは死んでも相手のことを思い出せる。別に根拠はないけど……」
そう言うと花音は少し笑った。確かに私たちは死んでも相手のことを思い出せる。理由なんてない。しいて言えば友達だからだ。
そして私は花音にペンを渡そうとして、少し止まる。
「花音、ペンを渡すのまた今度でいい?」
「いいけど、どうしたの?」
「私が死ぬギリギリまでペンを持っていたいなって……」
私の自分勝手な理由だ。それでも花音は優しく微笑んでくれた。
家に帰ると私はすぐに自分の部屋に入り、机を少し片付けた。そしてその机の上に手紙の入った封筒を2つ置いた。
1つは両親へ。これまでお世話になったこと、私が病院にいる時も私を楽しませてくれたことが、本当に嬉しかった。その事を手紙にまとめたらとても1枚じゃ収まりきらなかった。
そしてもう1つの封筒にはペンを入れた。とても明るい色で私には似合わなそうなペンだ。
それから私は最期の数時間を楽しんだ。いつも通りの変わらない出来事のひとつひとつが、とても嬉しくて楽しい。
だけど時間は進んでいき、日付が変わるまで1時間をきった。私は次に寝てしまったらもう目が覚めない。
私はベッドに座り、息を吐く。私にはもう明日が来ない。そう思うととても悲しく涙が出てくる。今日は泣くのを何回も我慢したんだ。今くらいは我慢せずに泣いてもいい。
「……死ぬの、怖いなぁ……」
自然と呟いてしまう。
それから私の意識は朦朧としてきた。人は眠りたくなくても自然と寝てしまう生き物だ。なんて不便なんだろう。
そう思いながら私は眠りについた。
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