拡声器から、口調は丁寧だが怒声に近い声が、この場にいる者全員に、避難を促していた。“爆発”というキーワードに恐れをなしてか、ほとんどの人達は一気に後方へと逃げ出していく。僕と加藤をのぞいて。
「君達も、早く逃げないか! ここは危険だ!」
立ち尽くす僕達にもオレンジ色の防火服を着て、銀色のヘルメットを被った屈強な若い男が叱るような口調で言った。
「ここの家の者です! 叔母がいるかもしれません!」
加藤が負けじと、鋭い声で男に答えた。「君は親族か? 今は下がって、救急車に」彼がそこまで言った時、ベンツのボンネットが火を吐き出して、ガラスが割れる破砕音がした。「生きてるか?!」「分かりません!」「早く扉を開けろ!」緊迫した大人達の声が響き、彼らは燃えさかるベンツの扉を無理矢理こじ開け、車内から、ずるり、と大きな何かを引きずり出した。
「和さん!」
黄色のテープをくぐり抜け、加藤と僕は担架に載せられて、タオルケットのような布を全身にかけられて運ばれる女性へと駆け寄った。顔は見えない。焦げた黒髪と火傷を負い皮膚がケロイド状になった腕だけが、布からはみ出てだらりと下げられていた。
「近づくな! この人はこれから救急車で搬送する! 邪魔だ!」
担架に近づく加藤と僕を消防士が立ち塞がり、行く手を阻む。
「お前こそどけっ!」
加藤は今にもかみつかんばかりの野犬のように、涙声で叫びその消防士の胸に拳を入れた。非力な加藤のパンチなど、きっと彼には何ともなかったろう。だが、彼は加藤のすさまじい剣幕に気圧されたように、両目を見開いた。
「その子は、その女性の親族です! 一緒に救急車に載せてください!」
背後で、さっきの若い消防士の声がした。すると、目の前の消防士は加藤に「分かった。君も病院に来なさい」と加藤が和さんと同行することを許可した。そして、「そっちの君は?」と僕を見た。
「彼女のクラスメイトです」
「なら、君はすぐに学校に戻って、この子の担任にこのことを伝えなさい。これから行く病院は――……」
「君達も、早く逃げないか! ここは危険だ!」
立ち尽くす僕達にもオレンジ色の防火服を着て、銀色のヘルメットを被った屈強な若い男が叱るような口調で言った。
「ここの家の者です! 叔母がいるかもしれません!」
加藤が負けじと、鋭い声で男に答えた。「君は親族か? 今は下がって、救急車に」彼がそこまで言った時、ベンツのボンネットが火を吐き出して、ガラスが割れる破砕音がした。「生きてるか?!」「分かりません!」「早く扉を開けろ!」緊迫した大人達の声が響き、彼らは燃えさかるベンツの扉を無理矢理こじ開け、車内から、ずるり、と大きな何かを引きずり出した。
「和さん!」
黄色のテープをくぐり抜け、加藤と僕は担架に載せられて、タオルケットのような布を全身にかけられて運ばれる女性へと駆け寄った。顔は見えない。焦げた黒髪と火傷を負い皮膚がケロイド状になった腕だけが、布からはみ出てだらりと下げられていた。
「近づくな! この人はこれから救急車で搬送する! 邪魔だ!」
担架に近づく加藤と僕を消防士が立ち塞がり、行く手を阻む。
「お前こそどけっ!」
加藤は今にもかみつかんばかりの野犬のように、涙声で叫びその消防士の胸に拳を入れた。非力な加藤のパンチなど、きっと彼には何ともなかったろう。だが、彼は加藤のすさまじい剣幕に気圧されたように、両目を見開いた。
「その子は、その女性の親族です! 一緒に救急車に載せてください!」
背後で、さっきの若い消防士の声がした。すると、目の前の消防士は加藤に「分かった。君も病院に来なさい」と加藤が和さんと同行することを許可した。そして、「そっちの君は?」と僕を見た。
「彼女のクラスメイトです」
「なら、君はすぐに学校に戻って、この子の担任にこのことを伝えなさい。これから行く病院は――……」