何が真実か

「ちょっと、兄ちゃん。これ見てくれよ…… 」
 社務所の様子を見に行くと、蔵人が暗い眼で何かを訴えてきた。
「どうかしたのか? 」
「うちの蔵のこと、批判する奴がでてきたんだ…… 」
 そのSNSはこんな内容だった……
「私はこの蔵のことを良く知っています。
 恋愛復活とか、心願成就とか書いて高額なストラップを売っている悪質商法です。
 蔵にご利益があるなんて話は、事実無根です。
 この家に住む兄弟がデッチ上げて、商売のために作った話です。
 騙されないでください   Restore00001」
「なるほど。大胆な書き込みだが、否定はできないな…… 」
「兄ちゃん! 他人事みたいに言うなよ! ついさっき書き込まれたみたいだ。心当たりはないかい? 」
「うん…… しかし、悪質商法とまで言われたくないな。これが悪質だったら、父さんの仕事はすべて悪質商法だ。自分でいつも自嘲してるからな…… 」
「俺は悔しいよ! こんなことを書かれて。一生懸命にストラップを作って、こうして一日中社務所に詰めて仕事しているのに。このRestore00001って、どこの誰だよ! 」
「まあ、落ち着け。今のところ、復活の蔵のあり方を批判しただけで、誹謗中傷したわけじゃない」
「だけど…… 」
「そもそも、この蔵の人気が出たのは何でだったかな…… 」
「わかんないんだよ。突然たくさん人が押し掛けるようになったんだ」
「じゃあ、俺たちが客寄せをして始まったわけじゃないな。でも、最近は事実無根なことも書いている。でも釈然としないなぁ」
「でしょ。兄ちゃんも、もっと怒っていいんだよ」
「ちょっと待て。それなら、この書き込みをした人と直接話すべきじゃないのか? この書き込みからは、何を訴えたいのかはっきりしないし…… 」
「わかったよ…… 」
「それじゃ、兄ちゃんがこの人にダイレクトメッセージを送ってみるから。蔵人は何もするな」
 十蔵は、冷静に、さっきのつぶやきを分析してみた。

『この蔵のことを良く知っています』
 まずこの文。
 近所に住んでいるのかもしれない……
『高額なストラップ』
 ここも引っかかる。
 500円は観光のお土産として、適正な価格だ。
 普段使いのストラップとして考えると、キャラものでもないのに少し高い感じはする。
 だから、近所の人が文房具屋さんやファンシーショップのストラップと比べて、高いと言っている可能性がある……
『悪質商法です』
 値段が高くても、悪質商法に当たるほどではない。
 高いと思ったら、買わないで帰ればいいだけだ。
 売りつけてはいない。
『蔵にご利益があるなんて話は、事実無根です』
 ご利益があった神社があるのだろうか……
 神社仏閣で願掛けをするのは、何か具体的な見返りがあることを期待しているわけではない。
 気休めや、習慣、自分の決意表明などが入り混じった、曖昧な目的で拝むものだ。
『この家に住む兄弟』
 自分たち兄弟が交代で社務所にいるから、両方を知っている人物ということになる。
 1度や2度来たくらいでは、兄弟だけでやっていることを知ることはできないはずだ。
『デッチ上げて、商売のために作った話です』
 これはその通りだが、始めは自然発生的だった。
 それに、どこかの神社のご利益のようなものに真実があるのだろうか。
『騙されないでください』
 ストラップを買わないように啓発しようとしている。
 なぜ妨害したいのだろうか……

「やっぱり、何か変だね…… さすが兄ちゃんだ。こうして分析すると、近くの人が書いた気がする」
「遠くの、面識がない人が、いたずらしたとすると、不自