私は嫌なことがあっても、辛いことがあってもあっても全部乗り越えてきた。
それでも、耐えきれない出来事が起きてしまった。



私と夏美は、放課後の誰もいない教室、二人だけの静かな時間が好きだった。
部活のない日は、いつもここで色々な話をする。
今日は雲一つない晴天で、気分も晴れやかだったから、つい聞いてしまった。

「夏美は、なんでそんなに嫌がるの?」
「何の話?」
夏美は私を見て首を傾げた。
「私が他の人と関わるのめっちゃ嫌がるじゃん。
なんでかな?と思って。
言いたくなかったら、言わなくていいんだけど、、、。」
「、、、、、、、、、、、、」
「怖いの。
梅雨が私から離れていくんじゃないかって。
誰かに取られるんじゃないかって。」
夏美は私の反応を窺うように静かに言った。
「どこにもいかないよ」
私は夏美を安心させようと思った。
あわよくば、他の人と話しても許してもらえるかな、なんて。
でも、それは単なる勘違いで、お節介だった。
「だったら、なんで他の人と話すの?
どこにもいかないなんて、適当な事言わないで‼︎」
夏美は目を赫くして叫んだ。
「て、適当じゃないよ」
「なら何?同情?」
夏美は鼻で笑うように私を見下ろした。
「梅雨はそんな風に思っていたんだ。
私といるのがしんどいなら、もう一緒にいてくれなくていいよ。
私知ってるよ。
英語のテストほんとは42点だったんでしょ。なんで嘘つくの?
私より低いじゃん!
自分を棚に上げて、そうやって私を見下してたんだ。
もう、いいよ。」
夏美はそう言って帰って言った。
確かに夏美が言っていることは正しい。
同情だったのも事実だ。
テストの点数を偽っていたのも。
だけど、なぜ私はこんなにも悲しい気持ちなんだろう。
夏美とずっと一緒にいる事が辛かったはずなのに。
そこで私は気がついてしまった。
私の悲しさの理由も。
私は夏美が好きだ。大好きだ。
あんなに大好きで大切な人に、私はなんて事をしてしまったのだろう。
私夏美と一緒にいる時間は辛い時間より、楽しい時間のほうが多かった。
「人は、悪いところを見がちだけれど、良いところを探して生きた方が断然楽しいし、幸せよ」と何かの映画で言っていた。
私は、ずっと辛いばっかりで、夏美と一緒に居て楽しかった時間を忘れていた。
そして、私は夏美と友達になってから初めて声を上げて泣いた。