「美結、何かあればいつでも俺に言え。遠慮はするな」

 高根沢さんは最後に私に、そう言葉をかけてくれた。

「……お、おはよう、ございます」

「おう、美結。よく眠れたか?」
 
 次の日の朝、目が覚めると、高根沢さんはタバコを吸いながら私にそう問いかけた。

「……はい」

 高根沢さんに言われた通り、私は高根沢さんのベッドで寝た。
 だけどなかなか眠れなかった。 眼を閉じると猛のことを思い出してしまって、寝付くことが出来なかった。 

「大丈夫か?美結」

 そんな私を心配そうに見つめる、高根沢さん。

「……あの、高根沢さん」

「なんだ?」

「……私、高根沢さんには感謝してます」

 ここまで優しくてくれて、ここまで色々と助けてくれて。

「ありがとうございます、高根沢さん」

「……なあ、美結」

 そんな私に高根沢さんは、一言こう言った。

「これは提案なんだけど、まずは髪を切ってみたらどうだ?」

「……え?」

 髪の毛を、切る……?

「髪を切ったら、少しは楽になるだろ。……女は髪を切ると、別人みたいになれるんだろ?」

「……そう、ですかね」

 私はずっとこの長さだから、そうなのかは分からない。
 猛が長い方が好きだと言っていたから、そうしていた部分もあったから。

「俺は短いのも、似合うと思うけど」

「……そう、ですかね」

 高根沢さんは優しいから、そう言ってくれているだけなんだと思う。