月……太陽からの光を浴びて輝き、夜を知らせるもの。それは時に儚く見え、時に大きく見える。まるで人の心のように。
「……お月様、今日も綺麗だな」
私は雲一つない満天の星空に浮かぶ、満月を見上げていた。昔月には兎が居て、餅をついていると言う話を聞き、望遠鏡で兎を探していた事を思い出す。本当は月には酸素が極端に少なく、生物が住める環境では到底無いため、うさぎなど居るはずが無いのだけれど。
「……今日の満月、何だか悲しそう……」
「……それは、貴女の心が悲しんでいるからですよ」
「……ルナさん!」
独り言に言葉が返ってきた、驚いて後ろを振り返ると、さらさらの長い髪をたなびかせてこちらを見つめる女性の姿があった。
彼女の名前は『月』の正位置。カード番号は19で、主な意味は『問題解決・原因追求・回復の兆し』など。私は彼女をルナさんと呼んで慕っている。
「月は心の鏡、どんなに覆い隠していても雲が晴れれば自ずと見えてくる。今の貴女の心のように……」
「私の心が……悲しんでいるってこと……?」
私は彼女の言葉に首を傾げた。別にこれといって悲しいことがあった訳では無い。それにも関わらず、心が悲しんでいるとは、どういう事なのだろうか。
「そうです、貴女の心は今悲しみに満ちています。深い深い悲しみに……目を無意識に背けているのではありませんか?」
「深い悲しみ……なんだろう、今直ぐには思い付かないんだけどなぁ……」
「そう簡単に見当がつくのであれば、悩む事も無いでしょう。貴女の最も深い部分に沈められた悲しみが、月に反射して見えているのです」
彼女はふと、月を見上げて言った。同じように見上げると、先程見た時よりも月は悲しそうに見える……すごく不思議で、何処か懐かしさを感じた私は、思わず魅入ってしまった。
「……」
「……自身の心と向き合う事は、容易ではありません。心は偽る事を良く知っています。然し偽りは掴む事は出来ません。月を覆い隠す雲が、実際には触れない事と同じように……」
「……そう、だね。確かに人は心を偽りたがる、それは防衛本能でしている事なのかも知れないけど……それによって都合のいいように見ようとしているんだね」
「主様は、何時も月を悲しそうに見上げますね。それは何故ですか?」
「……見たくない醜いところが見えてしまうから……なんだと思う。自分ではそんなつもりは無いんだけど、きっと無意識に見えてしまっているんだろうね」
さっきまで、悲しそうに見えていた月は、いつの間にか色褪せ、どす黒いオーラを放っている。これが私の心の底にある闇なのかと思うとぞっとし、思わず目を背ける。
「……主様、月を良く見てください。月は何時も正直です、貴女の心の奥底にある光は確かにありますよ。ほら、もう一度……」
ルナさんの声に促され、もう一度月を見ると……確かに小さい光のようなものが見える。それは今にも消え入りそうで、それでいて綺麗だった。
「月は常に貴女と共にあります。どうか、ご自身の光を見失わないでください。月は反射して輝くのですから……」
そう言ったルナさんは満月よりも美しく、眩しかった。
「……お月様、今日も綺麗だな」
私は雲一つない満天の星空に浮かぶ、満月を見上げていた。昔月には兎が居て、餅をついていると言う話を聞き、望遠鏡で兎を探していた事を思い出す。本当は月には酸素が極端に少なく、生物が住める環境では到底無いため、うさぎなど居るはずが無いのだけれど。
「……今日の満月、何だか悲しそう……」
「……それは、貴女の心が悲しんでいるからですよ」
「……ルナさん!」
独り言に言葉が返ってきた、驚いて後ろを振り返ると、さらさらの長い髪をたなびかせてこちらを見つめる女性の姿があった。
彼女の名前は『月』の正位置。カード番号は19で、主な意味は『問題解決・原因追求・回復の兆し』など。私は彼女をルナさんと呼んで慕っている。
「月は心の鏡、どんなに覆い隠していても雲が晴れれば自ずと見えてくる。今の貴女の心のように……」
「私の心が……悲しんでいるってこと……?」
私は彼女の言葉に首を傾げた。別にこれといって悲しいことがあった訳では無い。それにも関わらず、心が悲しんでいるとは、どういう事なのだろうか。
「そうです、貴女の心は今悲しみに満ちています。深い深い悲しみに……目を無意識に背けているのではありませんか?」
「深い悲しみ……なんだろう、今直ぐには思い付かないんだけどなぁ……」
「そう簡単に見当がつくのであれば、悩む事も無いでしょう。貴女の最も深い部分に沈められた悲しみが、月に反射して見えているのです」
彼女はふと、月を見上げて言った。同じように見上げると、先程見た時よりも月は悲しそうに見える……すごく不思議で、何処か懐かしさを感じた私は、思わず魅入ってしまった。
「……」
「……自身の心と向き合う事は、容易ではありません。心は偽る事を良く知っています。然し偽りは掴む事は出来ません。月を覆い隠す雲が、実際には触れない事と同じように……」
「……そう、だね。確かに人は心を偽りたがる、それは防衛本能でしている事なのかも知れないけど……それによって都合のいいように見ようとしているんだね」
「主様は、何時も月を悲しそうに見上げますね。それは何故ですか?」
「……見たくない醜いところが見えてしまうから……なんだと思う。自分ではそんなつもりは無いんだけど、きっと無意識に見えてしまっているんだろうね」
さっきまで、悲しそうに見えていた月は、いつの間にか色褪せ、どす黒いオーラを放っている。これが私の心の底にある闇なのかと思うとぞっとし、思わず目を背ける。
「……主様、月を良く見てください。月は何時も正直です、貴女の心の奥底にある光は確かにありますよ。ほら、もう一度……」
ルナさんの声に促され、もう一度月を見ると……確かに小さい光のようなものが見える。それは今にも消え入りそうで、それでいて綺麗だった。
「月は常に貴女と共にあります。どうか、ご自身の光を見失わないでください。月は反射して輝くのですから……」
そう言ったルナさんは満月よりも美しく、眩しかった。