最後の修行を開始してから半年が経過したある日。ヒカリはいつも通り河原で修行をしていた。
「はっ! …………。はっ! …………。ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぅーー! …………。はぁー、ダメだ! 動かない!」
ヒカリは未だに小石を動かせないでいた。
「もう半年か…………。あー! 悔しい! でも絶対諦めない!」
ヒカリは少しぼやいた後、半年も経っていることに悔しさが溢れ出してきたが、その悔しさを力に変換しようと力強く発言した。
「よし! もう一回やるぞ! …………。はっ! ……っぐぐぐ!」
ヒカリは気合いを入れるために、自分の頬を軽く叩いた後、再び修行を始めた。だけど、小石は動かない。
「何してるの?」
「うわっ!」
ヒカリは驚いた。急に耳元で声が聞こえてきたからだ。
「こんにちは」
シェリーが何事もなかったかのように笑顔で挨拶してきた。
「シェリーさん! 驚かさないでくださいよ!」
ヒカリは動揺しながら言う。
「ふふ。ごめんなさい。こんなところで何してるのかなーって気になって」
シェリーは笑みを浮かべながら言った。
「修行ですよ!」
ヒカリは元気よく言う。
「修行?」
シェリーは首を傾げた。
「石を動かす魔法の修行です!」
ヒカリはシェリーに修行の内容を説明した。
「石を『動かす』ね……」
シェリーは落ち着いた口調で言う。
「でも、なかなか動かなくて……。なんとなく魔力が伝わる感じは、わかるような気がしてきているんですけど……」
ヒカリは腕を組んで片手を口に当て、考えている仕草をしながら言った。
「そう……。その石……」
シェリーは静かにそう言った。
「え?」
ヒカリはシェリーが何か発言したことに反応して聞き返した。
「その石は、ヒカリちゃんのことをどう思っているのかな?」
シェリーはヒカリの顔を見ながら言った。
「……え? どうって。……なんとも思ってないんじゃないんですか? 石だし……」
ヒカリは素直に思っていることを言った。
「ふふふ。……動いてほしい物の気持ちがわからないなら、動いてくれないんじゃない?」
シェリーは笑顔で言った。
「動いてほしい物の気持ち……」
ヒカリは小石を見つめながら言う。
「どんな物にも意思はある。その石だって動きたくない気持ちなら、動いてくれないのは当然。動いてほしい物が、ヒカリちゃんに協力したくなるような呼びかけが大事なの。……ただの物で、命が宿っていないと考えているのなら、その物はあなたを信じたりはしない。故に動かない」
シェリーは真剣な表情でそう言った。ヒカリはシェリーの言っていることが、なんとなく理解できた気がした。
「それじゃ、今日はこの辺で。またね」
シェリーはそう言うと去っていった。
「動かしたい物の気持ちか……」
ヒカリはいつも修行で使っている小石を手に取った。
「この石にも気持ちがあって、命が宿っている。…………。あ、よく見たらこの石、結構汚れてるな。…………ずっと、私の修行に付き合ってくれた大事な石だもんね」
ヒカリは小石が汚れていることに気づいた。そして、ヒカリは立ち上がり川の方へ行き、小石を川の水で綺麗に洗ってあげた。
「よし! 綺麗になったな! ……え?」
ヒカリは綺麗になった小石を眺めた。
するとその時、ヒカリは驚いた。
「今、この石、笑った……」
ヒカリはなんとなくだが小石が笑ったように感じた。
それからヒカリは、小石をいつも置いている岩の上に戻して修行を再開する。ヒカリは目を閉じ、両手を小石にかざして魔力を放つ。
「……ずっと私の修行に付き合ってくれた。それなのに、私はこの石の気持ちすら考えてこなかった。……そっか。私に足りなかったものが分かったよ」
ヒカリは目を開けた。
「ほら」
ヒカリはそう言って、笑みを浮かべながら宙に浮いている小石を眺めた。そして、五秒ほど宙に浮かせた小石を両手で優しくすくう。
「ふふ。ありがとう」
ヒカリは小石に顔を寄せて話しかけた。
「そうだよね。無理矢理に動かそうとするのは嫌だよね。今までごめんね。………………。うん。許してくれてありがとう」
ヒカリは小石から『いいよ、気にしないで』と返事して貰えたのがわかったので、和解できてよかったと安心した。
「ヒカリ! 今、石浮いてなかったか?」
エドが慌てた様子で、ヒカリに駆け寄りながら問いかけた。
「うん。動いてもらえた」
ヒカリは優しい口調でそう言った。
「動いてもらえた? ……はは! 優しいなヒカリは!」
エドは少し笑いながら言った。
「そう?」
ヒカリは首を傾げた。
「とにかく、よく頑張った!」
エドは嬉しそうに笑っていた。
「うん。エドもありがとう」
ヒカリはエドを見ながら笑顔でそう言った。
こうして、魔女修行は無事に小石を動かす段階までクリアできた。どんな物にも意思はあり、命が宿っている。だから、どんな物でも分かり合えるはずだ。この小石と会話できた途端、急にいろいろな声が聞こえるようになってきた。それは、ずっと目を背けて耳を塞いでいたから認識できなかった声だ。すると、目の前の世界が今までよりもっと美しく見え始めたのだった。
「はっ! …………。はっ! …………。ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぅーー! …………。はぁー、ダメだ! 動かない!」
ヒカリは未だに小石を動かせないでいた。
「もう半年か…………。あー! 悔しい! でも絶対諦めない!」
ヒカリは少しぼやいた後、半年も経っていることに悔しさが溢れ出してきたが、その悔しさを力に変換しようと力強く発言した。
「よし! もう一回やるぞ! …………。はっ! ……っぐぐぐ!」
ヒカリは気合いを入れるために、自分の頬を軽く叩いた後、再び修行を始めた。だけど、小石は動かない。
「何してるの?」
「うわっ!」
ヒカリは驚いた。急に耳元で声が聞こえてきたからだ。
「こんにちは」
シェリーが何事もなかったかのように笑顔で挨拶してきた。
「シェリーさん! 驚かさないでくださいよ!」
ヒカリは動揺しながら言う。
「ふふ。ごめんなさい。こんなところで何してるのかなーって気になって」
シェリーは笑みを浮かべながら言った。
「修行ですよ!」
ヒカリは元気よく言う。
「修行?」
シェリーは首を傾げた。
「石を動かす魔法の修行です!」
ヒカリはシェリーに修行の内容を説明した。
「石を『動かす』ね……」
シェリーは落ち着いた口調で言う。
「でも、なかなか動かなくて……。なんとなく魔力が伝わる感じは、わかるような気がしてきているんですけど……」
ヒカリは腕を組んで片手を口に当て、考えている仕草をしながら言った。
「そう……。その石……」
シェリーは静かにそう言った。
「え?」
ヒカリはシェリーが何か発言したことに反応して聞き返した。
「その石は、ヒカリちゃんのことをどう思っているのかな?」
シェリーはヒカリの顔を見ながら言った。
「……え? どうって。……なんとも思ってないんじゃないんですか? 石だし……」
ヒカリは素直に思っていることを言った。
「ふふふ。……動いてほしい物の気持ちがわからないなら、動いてくれないんじゃない?」
シェリーは笑顔で言った。
「動いてほしい物の気持ち……」
ヒカリは小石を見つめながら言う。
「どんな物にも意思はある。その石だって動きたくない気持ちなら、動いてくれないのは当然。動いてほしい物が、ヒカリちゃんに協力したくなるような呼びかけが大事なの。……ただの物で、命が宿っていないと考えているのなら、その物はあなたを信じたりはしない。故に動かない」
シェリーは真剣な表情でそう言った。ヒカリはシェリーの言っていることが、なんとなく理解できた気がした。
「それじゃ、今日はこの辺で。またね」
シェリーはそう言うと去っていった。
「動かしたい物の気持ちか……」
ヒカリはいつも修行で使っている小石を手に取った。
「この石にも気持ちがあって、命が宿っている。…………。あ、よく見たらこの石、結構汚れてるな。…………ずっと、私の修行に付き合ってくれた大事な石だもんね」
ヒカリは小石が汚れていることに気づいた。そして、ヒカリは立ち上がり川の方へ行き、小石を川の水で綺麗に洗ってあげた。
「よし! 綺麗になったな! ……え?」
ヒカリは綺麗になった小石を眺めた。
するとその時、ヒカリは驚いた。
「今、この石、笑った……」
ヒカリはなんとなくだが小石が笑ったように感じた。
それからヒカリは、小石をいつも置いている岩の上に戻して修行を再開する。ヒカリは目を閉じ、両手を小石にかざして魔力を放つ。
「……ずっと私の修行に付き合ってくれた。それなのに、私はこの石の気持ちすら考えてこなかった。……そっか。私に足りなかったものが分かったよ」
ヒカリは目を開けた。
「ほら」
ヒカリはそう言って、笑みを浮かべながら宙に浮いている小石を眺めた。そして、五秒ほど宙に浮かせた小石を両手で優しくすくう。
「ふふ。ありがとう」
ヒカリは小石に顔を寄せて話しかけた。
「そうだよね。無理矢理に動かそうとするのは嫌だよね。今までごめんね。………………。うん。許してくれてありがとう」
ヒカリは小石から『いいよ、気にしないで』と返事して貰えたのがわかったので、和解できてよかったと安心した。
「ヒカリ! 今、石浮いてなかったか?」
エドが慌てた様子で、ヒカリに駆け寄りながら問いかけた。
「うん。動いてもらえた」
ヒカリは優しい口調でそう言った。
「動いてもらえた? ……はは! 優しいなヒカリは!」
エドは少し笑いながら言った。
「そう?」
ヒカリは首を傾げた。
「とにかく、よく頑張った!」
エドは嬉しそうに笑っていた。
「うん。エドもありがとう」
ヒカリはエドを見ながら笑顔でそう言った。
こうして、魔女修行は無事に小石を動かす段階までクリアできた。どんな物にも意思はあり、命が宿っている。だから、どんな物でも分かり合えるはずだ。この小石と会話できた途端、急にいろいろな声が聞こえるようになってきた。それは、ずっと目を背けて耳を塞いでいたから認識できなかった声だ。すると、目の前の世界が今までよりもっと美しく見え始めたのだった。