次の瞬間、ドローンの室内に赤ランプが点滅し非常警告音で満たされた。
「キンキュウジタイデス、デンジハコウゲキヲウケマシタ、キンキュウチャクリクシマス」
 けたたましい電子音声に後部シートの全員も飛び起きる。
「なにっ!」
「どうしたのっ!」
「なにがあったのっ!」
 富士の裾野には、法改正により自衛隊から正式な「軍」となった日本陸軍の基地兼、訓練場があった。広大な敷地には、ドローン攻撃に対処するための電磁波砲が張り巡らされているのである。
 近づいてくるドローンには容赦なく発射された。警察のパトドローンに搭載されている電磁波砲は、飛行中のドローンの全機能を停止させ、空中でホバリング状態にさせた。
 しかし、軍の所有する電磁波砲は、即時、怪しいドローンを強制着陸させる強力なもの。
 地上の状態が海や森林、住宅地であろうがなかろうが、問答無用。
 狩田たちの乗ったドローンは空中で急停止すると即座に高度を下げ始めた。
 こうなると、もう操縦者は手の打ちようがない。黙って捕まるよりない。
 下手するとテロリストとみなされ撃墜される。
 世界的に小規模なテロが頻発していた。日本でも、大昔に起こったオウム真理教事件の後、施行された、テロ対策特別法は年々強化され、厳罰化されていた。 
 自衛隊を強引に「軍」としたことによる左派系テロが多発しているのだ。
「ああっ! やべえッ、逮捕だぁ~、っていうかやべえっ! 墜落するっ!」
 バリッ、ベキベキベキッ、ボキッ、キュイーン、ガシャッ。
「キャーッ!!!」
 ドローンは樹海の森に着陸しようとして、プロペラが木の枝にからまりひっくり返りながら墜落していった。
 ガラガラ、ガッシャーン、ボン!
 真っ逆さまになって地面に落ちる瞬間、卵型のポッド内部が、瞬時に数千個のエアボールで満たされた。
 直径一ミリの粒が、緊急時にありとあらゆる隙間から噴射され、瞬時にテニスボール大に膨張する、衝突軽減のエアバックの進化版だ。
 レイワ、ヘドロ、韓、ポーラ、それと狩田は、びっしりと隙間なく埋め尽くされた、たこつぼの様な卵型ポッドのエアボールの中、全員、気を失った。
 少し間があり、逆さまになったガルウィングのドアが自動でゆっくりと開く。それはガルウィングというよりすべり台。開いた隙間からエアボールがこぼれ出る。