なんの力を願うかって?
そんなもん、決まってる!!
猛の選択。
それは……、
「───RPG最強の『勇者』の力に決まってんだろうがぁぁあああ!!」
うりゃぁぁぁああああああ!!
気合の声も高らかに、猛が全力でダッシュ───いや、跳躍した!!
ドン!!!
小さなクレーターを穿ちながらの急加速!
ドン、ドンッ!!
────体が軽い! 速い! 熱いッ!!
そして、
「「「は、はやいッ! なんだあの少年は?!」」」
驚愕する騎士団の目前で猛は跳躍し、二手に構えた剣をドラゴンの鼻っ面に叩きつけてやった!
「───おーーーーーーーらぁぁああ!!」
パッカーーーーーーーン!!
と、確かな手ごたえ。
《ギィィイィエェェェエエエエンッッ?!》
よろめくドラゴン…………いけるッ!
「よっしゃぁぁぁあ、追撃だぁぁぁぁぁああ!!」
いける!
ダンッ! と、ドラゴンの背に乗ると猛はゲームの主人公のように華麗に舞い飛び、さらには二刀流で猛烈な連撃を加えていく。
「まだまだぁぁあ!!」
ドガガガガガガガガッ! と、駒のように廻りながらドラゴンに息つく暇も与えずダメージを与える。
これなら……。
───いけるッ!
《ギィィエエエエエエン!! ギュガァァァアアアアアア!!》
その衝撃はドラゴンにも有効らしく、奴が激しくのたうちまわる。
いける!!
いけるぞ───!!
「よぉし! いけるぞぉぉお! 俺は、」
……そうだ、俺は、
「──────俺は強いッ!!」
強いぞッ!
勝てる、倒せるッ!!
この俺がドラゴンすら圧倒しているんだ!
「うぉぉぉぉおお! トドメぇぇぇええ!」
猛は勝利を確信し、ドラゴンを追い詰めていく……。
いくのだが───。
「ば、ばかな?!」
「な、なんて少年だよ! すげーぞ?!」
「あの容姿───あの動き、そしてあの強さ、」
ま、
「「「──まさか、伝説の勇者ッ?!」」」
勇者!!
勇者だ!!
勇者が来てくれたッ!!
勇者の降臨だ!!
「「うおぉぉ! 勇者だ!」」
「「勇者だ! 勇者だぁぁ!」」
「馬鹿者、油断するな! 敵はいまだ健在なんだぞ! 隊列を崩すな───」
隊長格の叱責もなんのその。
騎士団は驚愕し、いまや防御の態勢すら忘れて見とれている。
だが、
「まずいな……」
騎士団の隊長格がポツリと漏らす。
一見して猛はドラゴンを圧倒している。
しているのだが───……!
「…………勝てないッ! 彼では───。あの剣では勝てない!」
そうとも。絶対に勝てない!!
なぜなら、ドラゴンの硬皮は鉄をも弾く、鋼のごとき強度。
そして、あの剣はタダの鉄!!
鉄にドラゴンの硬皮は貫けぬッ!
ゆえに騎士団の持つミスリル製の槍の穂先しか、ドラゴンには通じないのだ。
そう───通じない……だから、絶対に勝てない!!
「───少年! 鉄ではドラゴンに勝てんぞッ!」
ミスリルは希少鉱物ゆえ、最小限の材料で事足りる槍の穂先にしか使用していない。
それがゆえに、予備の武器である剣は所詮はタダの鉄の剣なのだ!
鉄では、ドラゴンを貫くには役不足──!
「くっ、聞こえていないか。あのドラゴンを仕留める絶好の機会だというのに……」
マズイ……!
せっかくの好機をみすみす───!
格なる上は……。
「だ、誰か少年に、ミスリルの槍を!!」
「た、」
「隊長?! 正気ですか! い、いくら勇者かもしれないとはいえ、どこの馬の骨ともつかぬ奴に───」
騎士達は至極まともだ。
突然現れた正体不明の少年に、必殺の武器を貸すなど良しとするわけがない。
「構わん! 全責任は私が───」
あ!!
ギィン!?
しかし、時遅し。
猛の剣はドラゴンの皮膚に阻まれ、あろうことか彼の化け物の眼前でポッキリと折れてしまった。
「───う、嘘ぉ~ん!?」
猛は愕然とする。
チートと思しき力を手にいれ、まるでゲームのように動いて、このドラゴンを圧倒していたはず。
───はずなのに!!!
「あの、クソ自称神様やろー!」
そうとも、確かにRPG世界のような勇者の力を力を願ったはずなのに───!
け、
「剣が折れるとか───?!」
───そんなのありえるのかよぉぉおお!
《ギィィイイエエエエエエエン!》
ズシン、ズシン!!
ゴォォォオオアアアアアアアア!!
猛り狂うドラゴンッ!
それはまるで、手こずらせてくれた人間を一撃で仕留めてくれるとばかりに吼える。
そして、ドラゴンが口腔に炎をたたえていく。
…………あれぞ、ドラゴンブレス。
騎士団の魔法結界をも、時には焼き溶かす世界最強の炎だ。
───いくら勇者とはいえ、防具もなしに食らえば……!?
……………………死ぬッ!!
「く、くそ! こ、こんな所で……」
(……そんな! そんな!?)
猛はガクリと膝をつく。
今さらながら訪れた恐怖に────……。
(し、死にたくない。死にたくない! に、二回も死んでたまるかぁ!!)
そして、
……もう会えないかもしれない幼馴染の面影を想って───!
い、いやだ……!
もう会えないなんて、いやだ!!
……な、
(な、ナナミぃ……!)
死を前にして、猛は幼馴染を想う。
ナナミっ!!
さっき、手を離したばかりに見失ってしまった掛け替えのない存在のことを!
大好きな、
大好きなナナミのことをッ!!
な、
「……ナナミ!」
《ギィィイイイエエエエエエエエエン!!》
猛の叫びを嘲笑うように、ドラゴンブレスが彼を焼きつくそうとする。
奴の口に湛えられた炎が今まさに噴き出さんとし……───。
「───ナナミぃぃぃぃぃいいい!!」
あぁ……。
これで、死んでしまうのか。
ゴメン、ナナ───
「後方ヨシ。安全ピンを抜いてっと!……よーし、照準良好ッ」
へ?
「セーフティ解除ぉ────ん、行けるかなぁ?」
な、ナナミ……?
「あ、猛ぅ。そこ、危ないよぉ~?」
割と近くから聞こえたのは、あの可愛い幼馴染の声。
ポヤーっとして、温かみのある子で、
ショートカットの良く似合う可愛い女の子───。
そんな彼女が場違いに明るい、ホワホワとした緊張感のない声で猛に告げた。
危ないから、「退け」と……。
そう言ったのだ。
───……って!
(ちょ……!)
な、ナナミ──────!?
何やってんだよ!
ドラゴンだぞ!!??
最悪の化け物なんだ、ぞ?
「早く逃げ」
ろ
「発射ぁ♪」
バシュン──────!!
草原に伏せていたナナミが白煙を吹き出す。
いや、正確にはナナミが抱えていた筒の先端から白煙が───……さらに、背後からは燃えさかる黒煙がバックブラストとなって、草原を焦がしていく───。
そして─────────。
シュパァァァァァァ────………!
ナナミの抱える筒から、真っ赤な炎の矢のようなものが─────────ァァァ。
…………ァァァ────ズンッッッ!
「………………え?」
猛は声をあげた。
「「「……ええ?」」」
騎士団も声をあげた。
《……ぎ、ギョェ?》
ドラゴンも声をあげた────────と思ったら。
刹那、
ッッッ!
───チュドォォォォオオオオオン!!
大爆発ッッ!!
《ギュェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!》
そう、大爆発だ!!
そして、爆炎のあとにはドラゴンの頭部が爆裂して──────……ボトンと落ちた。
う、うそ……?
「嘘ぉォぉおお?!」
…………ど、ドラゴン?
《ギョ…………ブ、ギ!》
そのまま、頭部を失ったドラゴンが二、三歩たたらを踏んだかと思うと……。
ズゥゥゥウウウウウン…………!
地響きとともに倒れてしまった。
「ま、マジ……?」
あ、
あのドラゴンが───。
「し、」
「「「死んだ……」」」
猛と騎士団は茫然と呟いた。
それはそうだろう。
だって、
あの地上最強種たるドラゴンが、
たったの………………。
い、
「「「……一撃で?!」」」
ザッ!
───清々しく立ち上がるナナミ。
「あはッ♪ ヘッドショット命中ぅぅう」
にひひ、ヴィ!
と、陽気に笑いながらVサインとともに草原から立ち上がったのは、たった今ドラゴンを伏せ射ちでブッ飛ばした猛の馴染みの少女───ナナミだった。
彼女は学校の制服の上に硬そうなベストを纏い、頭には灰色のヘルメット───顔には大型のゴーグル。
そして、片手で保持しつつ、肩に担いでいるのは、
………………………バ、
「猛ちゃんに言われたから願ったよ、RPGの力♪」
───バズーカぁぁあ?
いや……違う。
あれは───。
あ、あれは…………。
あれは!!!
ナナミの手に握られた細長い円形の筒は……。
そう、あれは……。
あれはバズーカではないッ。
断じて、バズーカ砲ではない!!
バズーカ砲なものかッ!!
それは全体的に緑色と木製の混合で、金属と簡易スコープで構成されており……。
無骨で武骨な───。
「お、おまッ……そ、それ───」
よく映画なんかで敵兵が持ってる武器で、たま~に主人公側も使っている兵器───。
そして、撃たれた瞬間!
こう───皆が叫ぶんだ。
…………こんな風に。
「あ……、」
───R・P・Gぃぃぃいい!!
…………それは、
旧ソビエト連邦が開発した傑作対戦車ロケット砲───通称、
「『RPG-7』じゃねーーーーーか!!」
────そう、RPG-7がそこに。
「うん♪」
うん、じゃねぇ!!
実にいい笑顔でナナミが笑う。
可愛いなこん畜生ぉ……!
「───『RPG』だよ♪ 猛ちゃんの助言通り、願ってみたんだよ!」
あ、
あ……?
あ……───。
「…………あ、RPG違いだッつの!!」
この、
アホぉぉぉぉおお!!
そう。
彼女の想像したRPGは、RPGではなく……。
R
P
G
RPG-7だったらしい。
そんなもん、決まってる!!
猛の選択。
それは……、
「───RPG最強の『勇者』の力に決まってんだろうがぁぁあああ!!」
うりゃぁぁぁああああああ!!
気合の声も高らかに、猛が全力でダッシュ───いや、跳躍した!!
ドン!!!
小さなクレーターを穿ちながらの急加速!
ドン、ドンッ!!
────体が軽い! 速い! 熱いッ!!
そして、
「「「は、はやいッ! なんだあの少年は?!」」」
驚愕する騎士団の目前で猛は跳躍し、二手に構えた剣をドラゴンの鼻っ面に叩きつけてやった!
「───おーーーーーーーらぁぁああ!!」
パッカーーーーーーーン!!
と、確かな手ごたえ。
《ギィィイィエェェェエエエエンッッ?!》
よろめくドラゴン…………いけるッ!
「よっしゃぁぁぁあ、追撃だぁぁぁぁぁああ!!」
いける!
ダンッ! と、ドラゴンの背に乗ると猛はゲームの主人公のように華麗に舞い飛び、さらには二刀流で猛烈な連撃を加えていく。
「まだまだぁぁあ!!」
ドガガガガガガガガッ! と、駒のように廻りながらドラゴンに息つく暇も与えずダメージを与える。
これなら……。
───いけるッ!
《ギィィエエエエエエン!! ギュガァァァアアアアアア!!》
その衝撃はドラゴンにも有効らしく、奴が激しくのたうちまわる。
いける!!
いけるぞ───!!
「よぉし! いけるぞぉぉお! 俺は、」
……そうだ、俺は、
「──────俺は強いッ!!」
強いぞッ!
勝てる、倒せるッ!!
この俺がドラゴンすら圧倒しているんだ!
「うぉぉぉぉおお! トドメぇぇぇええ!」
猛は勝利を確信し、ドラゴンを追い詰めていく……。
いくのだが───。
「ば、ばかな?!」
「な、なんて少年だよ! すげーぞ?!」
「あの容姿───あの動き、そしてあの強さ、」
ま、
「「「──まさか、伝説の勇者ッ?!」」」
勇者!!
勇者だ!!
勇者が来てくれたッ!!
勇者の降臨だ!!
「「うおぉぉ! 勇者だ!」」
「「勇者だ! 勇者だぁぁ!」」
「馬鹿者、油断するな! 敵はいまだ健在なんだぞ! 隊列を崩すな───」
隊長格の叱責もなんのその。
騎士団は驚愕し、いまや防御の態勢すら忘れて見とれている。
だが、
「まずいな……」
騎士団の隊長格がポツリと漏らす。
一見して猛はドラゴンを圧倒している。
しているのだが───……!
「…………勝てないッ! 彼では───。あの剣では勝てない!」
そうとも。絶対に勝てない!!
なぜなら、ドラゴンの硬皮は鉄をも弾く、鋼のごとき強度。
そして、あの剣はタダの鉄!!
鉄にドラゴンの硬皮は貫けぬッ!
ゆえに騎士団の持つミスリル製の槍の穂先しか、ドラゴンには通じないのだ。
そう───通じない……だから、絶対に勝てない!!
「───少年! 鉄ではドラゴンに勝てんぞッ!」
ミスリルは希少鉱物ゆえ、最小限の材料で事足りる槍の穂先にしか使用していない。
それがゆえに、予備の武器である剣は所詮はタダの鉄の剣なのだ!
鉄では、ドラゴンを貫くには役不足──!
「くっ、聞こえていないか。あのドラゴンを仕留める絶好の機会だというのに……」
マズイ……!
せっかくの好機をみすみす───!
格なる上は……。
「だ、誰か少年に、ミスリルの槍を!!」
「た、」
「隊長?! 正気ですか! い、いくら勇者かもしれないとはいえ、どこの馬の骨ともつかぬ奴に───」
騎士達は至極まともだ。
突然現れた正体不明の少年に、必殺の武器を貸すなど良しとするわけがない。
「構わん! 全責任は私が───」
あ!!
ギィン!?
しかし、時遅し。
猛の剣はドラゴンの皮膚に阻まれ、あろうことか彼の化け物の眼前でポッキリと折れてしまった。
「───う、嘘ぉ~ん!?」
猛は愕然とする。
チートと思しき力を手にいれ、まるでゲームのように動いて、このドラゴンを圧倒していたはず。
───はずなのに!!!
「あの、クソ自称神様やろー!」
そうとも、確かにRPG世界のような勇者の力を力を願ったはずなのに───!
け、
「剣が折れるとか───?!」
───そんなのありえるのかよぉぉおお!
《ギィィイイエエエエエエエン!》
ズシン、ズシン!!
ゴォォォオオアアアアアアアア!!
猛り狂うドラゴンッ!
それはまるで、手こずらせてくれた人間を一撃で仕留めてくれるとばかりに吼える。
そして、ドラゴンが口腔に炎をたたえていく。
…………あれぞ、ドラゴンブレス。
騎士団の魔法結界をも、時には焼き溶かす世界最強の炎だ。
───いくら勇者とはいえ、防具もなしに食らえば……!?
……………………死ぬッ!!
「く、くそ! こ、こんな所で……」
(……そんな! そんな!?)
猛はガクリと膝をつく。
今さらながら訪れた恐怖に────……。
(し、死にたくない。死にたくない! に、二回も死んでたまるかぁ!!)
そして、
……もう会えないかもしれない幼馴染の面影を想って───!
い、いやだ……!
もう会えないなんて、いやだ!!
……な、
(な、ナナミぃ……!)
死を前にして、猛は幼馴染を想う。
ナナミっ!!
さっき、手を離したばかりに見失ってしまった掛け替えのない存在のことを!
大好きな、
大好きなナナミのことをッ!!
な、
「……ナナミ!」
《ギィィイイイエエエエエエエエエン!!》
猛の叫びを嘲笑うように、ドラゴンブレスが彼を焼きつくそうとする。
奴の口に湛えられた炎が今まさに噴き出さんとし……───。
「───ナナミぃぃぃぃぃいいい!!」
あぁ……。
これで、死んでしまうのか。
ゴメン、ナナ───
「後方ヨシ。安全ピンを抜いてっと!……よーし、照準良好ッ」
へ?
「セーフティ解除ぉ────ん、行けるかなぁ?」
な、ナナミ……?
「あ、猛ぅ。そこ、危ないよぉ~?」
割と近くから聞こえたのは、あの可愛い幼馴染の声。
ポヤーっとして、温かみのある子で、
ショートカットの良く似合う可愛い女の子───。
そんな彼女が場違いに明るい、ホワホワとした緊張感のない声で猛に告げた。
危ないから、「退け」と……。
そう言ったのだ。
───……って!
(ちょ……!)
な、ナナミ──────!?
何やってんだよ!
ドラゴンだぞ!!??
最悪の化け物なんだ、ぞ?
「早く逃げ」
ろ
「発射ぁ♪」
バシュン──────!!
草原に伏せていたナナミが白煙を吹き出す。
いや、正確にはナナミが抱えていた筒の先端から白煙が───……さらに、背後からは燃えさかる黒煙がバックブラストとなって、草原を焦がしていく───。
そして─────────。
シュパァァァァァァ────………!
ナナミの抱える筒から、真っ赤な炎の矢のようなものが─────────ァァァ。
…………ァァァ────ズンッッッ!
「………………え?」
猛は声をあげた。
「「「……ええ?」」」
騎士団も声をあげた。
《……ぎ、ギョェ?》
ドラゴンも声をあげた────────と思ったら。
刹那、
ッッッ!
───チュドォォォォオオオオオン!!
大爆発ッッ!!
《ギュェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!》
そう、大爆発だ!!
そして、爆炎のあとにはドラゴンの頭部が爆裂して──────……ボトンと落ちた。
う、うそ……?
「嘘ぉォぉおお?!」
…………ど、ドラゴン?
《ギョ…………ブ、ギ!》
そのまま、頭部を失ったドラゴンが二、三歩たたらを踏んだかと思うと……。
ズゥゥゥウウウウウン…………!
地響きとともに倒れてしまった。
「ま、マジ……?」
あ、
あのドラゴンが───。
「し、」
「「「死んだ……」」」
猛と騎士団は茫然と呟いた。
それはそうだろう。
だって、
あの地上最強種たるドラゴンが、
たったの………………。
い、
「「「……一撃で?!」」」
ザッ!
───清々しく立ち上がるナナミ。
「あはッ♪ ヘッドショット命中ぅぅう」
にひひ、ヴィ!
と、陽気に笑いながらVサインとともに草原から立ち上がったのは、たった今ドラゴンを伏せ射ちでブッ飛ばした猛の馴染みの少女───ナナミだった。
彼女は学校の制服の上に硬そうなベストを纏い、頭には灰色のヘルメット───顔には大型のゴーグル。
そして、片手で保持しつつ、肩に担いでいるのは、
………………………バ、
「猛ちゃんに言われたから願ったよ、RPGの力♪」
───バズーカぁぁあ?
いや……違う。
あれは───。
あ、あれは…………。
あれは!!!
ナナミの手に握られた細長い円形の筒は……。
そう、あれは……。
あれはバズーカではないッ。
断じて、バズーカ砲ではない!!
バズーカ砲なものかッ!!
それは全体的に緑色と木製の混合で、金属と簡易スコープで構成されており……。
無骨で武骨な───。
「お、おまッ……そ、それ───」
よく映画なんかで敵兵が持ってる武器で、たま~に主人公側も使っている兵器───。
そして、撃たれた瞬間!
こう───皆が叫ぶんだ。
…………こんな風に。
「あ……、」
───R・P・Gぃぃぃいい!!
…………それは、
旧ソビエト連邦が開発した傑作対戦車ロケット砲───通称、
「『RPG-7』じゃねーーーーーか!!」
────そう、RPG-7がそこに。
「うん♪」
うん、じゃねぇ!!
実にいい笑顔でナナミが笑う。
可愛いなこん畜生ぉ……!
「───『RPG』だよ♪ 猛ちゃんの助言通り、願ってみたんだよ!」
あ、
あ……?
あ……───。
「…………あ、RPG違いだッつの!!」
この、
アホぉぉぉぉおお!!
そう。
彼女の想像したRPGは、RPGではなく……。
R
P
G
RPG-7だったらしい。