戦車だよぉ…………!!

 ───だよぉ♪
「じゃねーーーーーーーー!!」

 ナナミぃ!!

「お前、なんつーもんをRPGの世界に持ち込むんだよ?! ファンタジーに戦車とか、浮きすぎだろうが?!」
「え~……RPGなんだし、合ってるじゃん~。たしかにT-34はちょっと古いけどぉ」

 いやいやいやいやいや。
 古いとか新しいの問題じゃないから!

 そんで、お前はまだ「RPG」勘違いしてるだろ?!

「ぶー。だってぇ残念だけど、アンロックされたのがこれしかなくてさー」

 ナナミは一瞬だけ唇を尖らせて言う。

「これしかって……おまっ!」
「う~ん。せめてT-54くらいはあってもいいと思うんだけど、ステージ序盤だからしょうがないのかなー」

 ティリン!!

 『SHOP』ボタンぽちー。


 ずぅぅん…………!



 そうしてナナミが呼び出したのは、1940年代から1950年年代にかけてソ連軍の主力戦車を担った中戦車……!


 その名は────……。


 重量32t。
 正面装甲45~90mm。
 高性能アルミ合金製ディーゼルエンジン500馬力。
 武装は、
 7.62mmDT機銃×2丁を副武装に。
 主砲、54.6口径85mm戦車砲を持つ。



 ソ連軍、傑作戦車────。




 T-34/85であった!!

「さ、乗って乗って! 猛はそっち、メイベルさんはこっちね! 取っ手があるから掴んでね~。しっかりつかんでないと落とされても知らないよ?」

「お、おう」

 ……もうどうにでもなれ。

「こ、これに乗るのか?!」

 よじよじと戦車の登場する猛。
 まごまごしているメイベルに手を貸すと一気に戦車に引き上げた。

「よーし! 全員搭乗完了! 発進用意ッ」
「…………へ? 誰と話してんの?」

「ん?」

 いつの間にかナナミはヘルメットを背中にうっちゃり、革製の黒いヘッドギアを装備していた。
 そこにはヘッドホンのようなマイクとスピーカーが一体化しており、戦車の誰かと話している。

「あ、紹介するね」

 ガコン!
 ガコン、ガコン、ガコン!

砲手です(フォニガチィク)
装填手です(パグロシィカ)
操縦手です(バィディッチ)
前方(ピニガトゥ)機銃手(プリガチィトゥ)(ニィ)無線手です(ビィスカルゥトニィキ)

 それぞれがハッチから顔を出して、ニコニコと手を振る──────……って、誰だよ!!

「え? 乗員だよぉ?」

 いや、そりゃ見りゃわかる!!
 わかるけどぉぉお!!

「え? 人も召喚できるの? ナナミの職業って……」
「ん~? 変かな? ゲームじゃ支援部隊も呼べたよぉ」

 って、


 ゲーーーーーームじゃねぇぇえ!!


 あ、……ゲームみたいなもんか?

 え?
 え?

 えええ??

「あ、ありなのか?」
「ん~? あんまし難しく考えちゃだめだよ、猛ぅ」

(えー。俺難しいこと考えてる?)

 しかし、猛の悩みなどなんのその。
 ナナミは戦車の方法によじ登ると意気揚々と叫ぶ。

「いっくよ~!! 目標、魔王軍1万!!」

 すぅぅ、

戦車(タァンク)前へ(ヴェアヴァンズ)!!」

『『『『了解ッ(ウラズミェートナ)』』』』

 ナナミの威勢の良い声とロシア戦車兵の歓声が一体になる。
 そして、

「お、おー!」
「おーー!!」

 微妙な顔をした猛と、神妙な顔をしたメイベルの小さな声援がそこに続いた。