「前来た時も気になったんだけどさぁ、靴が多い理由ってやっぱり仕事?」
また小泉明菜の純粋な疑問だ。これは答えないと何をされるか分からない恐怖があった。だから頭が答える前に口が勝手に答えていた。
「そうだよ」
「へぇー!私、喉乾いた。お茶ちょうだい?」
部屋の床に座るなり僕に命令してきた。でも、からだが勝手に動いていた。まさに操り人形みたいに。
「……………」
僕は無言でお茶を出した。特に話す理由もないからだ。
「仕事道具は?」
「………」
「ねぇ?仕事道具は?」
正直答えたくなかった。あの道具は人を殺すための道具だ。こんなやつに場所を教えて殺されでもしたらたまったもんじゃない。
「それは……言えない」
「えー。つまんな!じゃあパソコンいじらせて?ほら、早くつけてよ」
小泉明菜は床から立ち上がりパソコンのキーボードをバンバン叩き始めた。すぐにそれを辞めさせる。
「やめろよ。壊れたらどうするんだよ」
「じゃあほら、早くつけて?」
暗殺者の僕でさえ恐怖を感じた。抗えない生存本能。初めて殺されるかもしれない側にたった気がした。
「パソコンで何するんだ」
「君の仕事ぶりを見てみたいだけ」
こちらに振り返りあの不気味な笑みを浮かべていた。でも目は笑っていなかった。
そしてこれもこいつの純粋な疑問と言うやつなのだろうか。僕は指示通りパソコンをつけた。