「0-15」
俺はそう言って地面にボールをつく。

二ポイント目、絶対に続けて取られてはいけない。サーブを打つ。相手のバック側。上手いこと入った。だが、サーブが緩くて相手を苦しめることはできない。

並木先輩は、俺のサーブを難なくバックでストレートに返してきた。

足を動かしてボールがベストに当たる位置までやってくる。並木先輩は、バックも苦手じゃなさそうだ。だとしたら……。俺はクラスのかなり前の方にボールを落とした。

短いボール、これはどうだ!

並木先輩は、あっとした顔をした。反応が遅い! 足は遅くないが、ボールが落ちてから反応するスピードが遅く間に合わない。ボールが地面についてから、もう一度地面に落ちた。ツーバウンド! こっちのポイントだ。

よっし! 気づくと声を出して喜んでいた。

パチパチパチ、音をする方を見ると町田と本堂が並んで拍手してくれていた。

よし、このまま。

その後も俺は並木先輩の前にボールを落とし続け、最初の一ゲームをとることができた。

「よっしゃあああ!」
俺よりも喜んでいるのは町田だ。三年の先輩相手に試合をしているのに、恐れ知らずなのかあいつは。でも、町田の笑顔は見ているだけで元気が出てくる。今まで、頑張ってきてよかった。そう思えるほどに。

だが、ニゲーム目は並木先輩のサーブだ。団体メンバーのサーブなんて、とれるのだろうか。とりあえず、食らいつくしかない。

一ポイント目、俺は少し余裕を持って後ろの方に構える。サーブが早くても届くようにだ。

並木先輩がトスを上げる。サーブは……、かなり前の方に落ちた。何とか追いついた途端、方向を変えて身体の方へ飛んでくる。

気がつくと、ボールに身体が当たっていた。ダサいじゃないかこんなの……。顔を赤らめるもすぐに、並木先輩の並外れたテクニックに思いを馳せた。

俺が速いサーブを警戒して後ろに下がっているのをわかっていて、前の方に落としたんだ。しかも、手前に切れてくるボールで。

いや、並木先輩のサーブがもともとああいうサーブだという説も考えられる。その場合、次は前の方の位置でレシーブを構えた方が良い。

次は、どうくるか。さっきよりもポジションを少し前にとる。

サポーン!!

次は外に逃げていく深いボールが来た。フォアよりもあまり得意ではないバック側だ。さっきとあまりにも違うボールに追いつけず、またもや点を取られてしまった。

そのまま三ポイント目、四ポイント目も同じように取られてしまう。

これでニゲーム目は、並木先輩にとられてしまった。