「……次のニュースです。本日、深夜0時から始まったとされている不可解な現象について、オカルト業界を筆頭に積極的な討論が行われています。その討議の中で、この現象の事を『子夜の戯』と命名し話が進んでおり……」
今朝のニュースで流れていた。
(……昨日の出来事だぞ……早すぎる)
翌日から僕たちの身の回りで起きている現象が国内中に知れ渡り、報道局も取り上げるレベルでの騒ぎになっていた。時間の切削がいつ起きたのかわからないが、合わせて20分もの時間が削られてしまった今、気付かない人の方が少ないだろう。テレビでは超能力者や霊媒師などのいわゆるオカルト関係者がインタビューや議論を交わしているが、一向に話が進展していないという。
今それについて分かっていることは1つだけで、この『子夜の戯』には御園さんが関係しているのかもしれないということだけだ。でも、僕たちの中でもそこからの進展がない。
その日の学校はこの話で持ちきりだった。今まで特に興味を持っていなかった生徒同士も、これについて意見を出し合っている。
これ以上大きな騒ぎにはしたくなかったから、御園さんが関係しているかもしれないということはいつもの4人だけの秘密にしようということになった。
「……弓削くん、私……」
御園さんは深刻そうな表情で僕を見つめた。
「御園さんが悪いわけじゃないよ。 それに、まだ御園さんの力が原因でなったかなんて解らない……」
「それは……そうなのかもしれないけれど……」
「とりあえず、一刻も早く原因を解くことが先決だと思う」
「……ありがとう」
「え?」
「私なんかのために……たくさん迷惑かけちゃった……」
「そんなことないよ。……僕は、御園さんが悲しんでいるのを放って置けない」
「…………」
「だから、僕にできることがあるなら、全力でやる」
「弓削くん……本当にありがとう」
「うん。一緒に色々考えてみよう」
とは言ったものの、今ある材料だけでは解決までには程遠いのが現実だ。
ふと、2ヶ月前ほどに会った海岸線の少女の事を思い出した。御園さんが転入してから、御園さんに夢中だったから忘れていたというのが本音だろうか。
(……確か、あの少女は『もうすぐ始まってしまう』って言っていたっけ……でもこれと関係はないだろうか……いや、もしかしたら……)
不確かで僕の考え過ぎかもしれないけれど、この子夜の戯とそれとが繋がるかもしれないという考えが浮かんだ。ただその少女が誰なのか、いまどこに居るのか何もわからなかった。
(でも、もし可能性があるとするなら……)
僕は口火を切った。
「あのさ……御園さんって……妹とかいる?」
「……妹?……どうして?」
御園さんの表情が変わった。
「実は……」
それから僕は、海岸線沿いで会った少女について御園さんに話すことを決めた。その子と出会った場所、容姿の特徴、話の内容、全てを話した。僕が話している間、彼女はずっと下を向いていた気がする。話が終わると顔を上げ僕を見つめた。
「…………ごめんなさい」
そう言うと、廊下を駆けていってしまった。
それから御園さんは教室に戻ることもなく、その日は顔を合わせることができなかった。
「御園さん、ゆげっちの話で何か嫌だったのかなー?」
学校が終わり一緒に校門を出た茉弥との帰り道では、御園さんの話で持ちきりだった。
「わからないけど、俯いてたから何かあるのかもしれない」
「仮にね、ゆげっちが会った少女の子が御園さんの妹さんだったらどうするつもりなの?」
「その少女が言ってきた言葉も気になってて……それも含めて、この現象について尋ねてみようと思ったのさ」
「そっか……でも、あの言葉だとその子が何か知っている可能性はありそうだよね」
「うん。 だからこそ、あの子と接触することが出来れば良いんだけれど……何も情報がなくて。 ……似てるから、もしかしたらって思った、……違うかもしれないけどね」
「今日の今日に話すのはダメージが大きかったかもね。今日はそっとしておいてあげようよ! これからどんどん時間が無くなっていくって決まったわけでもないんだしさ!」
「……そうだな。明日また改めて、今度は2人の時に話してみるよ」
「うん! またなんかあったらゆげっちに教えるからね! またねー!」
「ありがとうね、また」
そうして茉弥と別れた後も、僕は御園さんに連絡することはしなかった。
夜のテレビ番組でも、『子夜の戯』を取り上げているものがあったが、朝に比べると騒ぎは収まっているように感じた。そこでは、短縮したとはいえ20分という少ない時間であって、それはすべてがマイナスではないと考える者が出てきているようだ。
(確かに、深夜でバイトとかしてる人たちにとっては、20分時間短くて済むもんな……そう考えたら、そんなに深刻に悩むことでもないのか?)
でも、そうプラスに考えようとしても御園さんにかかる重圧は変わることはない。今は、彼女の事を支えなければならないと思いながら今日という日を過ごした。
――翌日、切削された時間は合わせて40分になった――
今朝のニュースで流れていた。
(……昨日の出来事だぞ……早すぎる)
翌日から僕たちの身の回りで起きている現象が国内中に知れ渡り、報道局も取り上げるレベルでの騒ぎになっていた。時間の切削がいつ起きたのかわからないが、合わせて20分もの時間が削られてしまった今、気付かない人の方が少ないだろう。テレビでは超能力者や霊媒師などのいわゆるオカルト関係者がインタビューや議論を交わしているが、一向に話が進展していないという。
今それについて分かっていることは1つだけで、この『子夜の戯』には御園さんが関係しているのかもしれないということだけだ。でも、僕たちの中でもそこからの進展がない。
その日の学校はこの話で持ちきりだった。今まで特に興味を持っていなかった生徒同士も、これについて意見を出し合っている。
これ以上大きな騒ぎにはしたくなかったから、御園さんが関係しているかもしれないということはいつもの4人だけの秘密にしようということになった。
「……弓削くん、私……」
御園さんは深刻そうな表情で僕を見つめた。
「御園さんが悪いわけじゃないよ。 それに、まだ御園さんの力が原因でなったかなんて解らない……」
「それは……そうなのかもしれないけれど……」
「とりあえず、一刻も早く原因を解くことが先決だと思う」
「……ありがとう」
「え?」
「私なんかのために……たくさん迷惑かけちゃった……」
「そんなことないよ。……僕は、御園さんが悲しんでいるのを放って置けない」
「…………」
「だから、僕にできることがあるなら、全力でやる」
「弓削くん……本当にありがとう」
「うん。一緒に色々考えてみよう」
とは言ったものの、今ある材料だけでは解決までには程遠いのが現実だ。
ふと、2ヶ月前ほどに会った海岸線の少女の事を思い出した。御園さんが転入してから、御園さんに夢中だったから忘れていたというのが本音だろうか。
(……確か、あの少女は『もうすぐ始まってしまう』って言っていたっけ……でもこれと関係はないだろうか……いや、もしかしたら……)
不確かで僕の考え過ぎかもしれないけれど、この子夜の戯とそれとが繋がるかもしれないという考えが浮かんだ。ただその少女が誰なのか、いまどこに居るのか何もわからなかった。
(でも、もし可能性があるとするなら……)
僕は口火を切った。
「あのさ……御園さんって……妹とかいる?」
「……妹?……どうして?」
御園さんの表情が変わった。
「実は……」
それから僕は、海岸線沿いで会った少女について御園さんに話すことを決めた。その子と出会った場所、容姿の特徴、話の内容、全てを話した。僕が話している間、彼女はずっと下を向いていた気がする。話が終わると顔を上げ僕を見つめた。
「…………ごめんなさい」
そう言うと、廊下を駆けていってしまった。
それから御園さんは教室に戻ることもなく、その日は顔を合わせることができなかった。
「御園さん、ゆげっちの話で何か嫌だったのかなー?」
学校が終わり一緒に校門を出た茉弥との帰り道では、御園さんの話で持ちきりだった。
「わからないけど、俯いてたから何かあるのかもしれない」
「仮にね、ゆげっちが会った少女の子が御園さんの妹さんだったらどうするつもりなの?」
「その少女が言ってきた言葉も気になってて……それも含めて、この現象について尋ねてみようと思ったのさ」
「そっか……でも、あの言葉だとその子が何か知っている可能性はありそうだよね」
「うん。 だからこそ、あの子と接触することが出来れば良いんだけれど……何も情報がなくて。 ……似てるから、もしかしたらって思った、……違うかもしれないけどね」
「今日の今日に話すのはダメージが大きかったかもね。今日はそっとしておいてあげようよ! これからどんどん時間が無くなっていくって決まったわけでもないんだしさ!」
「……そうだな。明日また改めて、今度は2人の時に話してみるよ」
「うん! またなんかあったらゆげっちに教えるからね! またねー!」
「ありがとうね、また」
そうして茉弥と別れた後も、僕は御園さんに連絡することはしなかった。
夜のテレビ番組でも、『子夜の戯』を取り上げているものがあったが、朝に比べると騒ぎは収まっているように感じた。そこでは、短縮したとはいえ20分という少ない時間であって、それはすべてがマイナスではないと考える者が出てきているようだ。
(確かに、深夜でバイトとかしてる人たちにとっては、20分時間短くて済むもんな……そう考えたら、そんなに深刻に悩むことでもないのか?)
でも、そうプラスに考えようとしても御園さんにかかる重圧は変わることはない。今は、彼女の事を支えなければならないと思いながら今日という日を過ごした。
――翌日、切削された時間は合わせて40分になった――