冴えないおっさん、竜王のうっかりミスでレベル1000になり、冒険者学校を成り上がり無双

 上級冒険者――。

 それは、冒険者の中でも特に実力を認められた精鋭たちだ。

 そんな人たちだけが集められた選抜チームに、俺たち五人も参入することになった。

「うう、緊張するぅ」

 マナが両手で体を抱くようにして言った。
 小柄な体が震えている。

「ふん、そんな弱気でどうするのよ」

 クーデリアが鼻を鳴らした。

「私たちは学園のトップクラスなのよ。上級冒険者と比べたって引けは取らないわ」
「そ、そうでしょうか……?」
「あんたは私に勝ったんだから! シャンとしなさい!」
「そうだな、マナは強いよ」

 俺は彼女に言った。

「それに今回は一人じゃない。みんながいる。上級冒険者の人たちだっているだろ。大丈夫大丈夫」
「そ、そうだね……ありがと、レオンさん」

 マナがにっこり笑った。

「じゃあ、行こうか。先方をあまり待たせるのもよくないし」

 と、ランディ。

「おい、なんでお前が仕切ってるんだ」

 ヴァーミリオンが不満げに言った。

「やだなぁ、別に仕切るつもりはないよ、ヴァーミリオンさん」

 ランディが微笑む。

「言っておくが、この中でナンバーワンは俺だ」

 ヴァーミリオンが俺たちを見回した。

「先方にはそう紹介するからな」
「でも、レオンさんに負けたじゃないですか」
「ぐっ……! そ、それは、その……いや、でもまだランキング上では俺が一位だし……ぐぬぬ」

 痛いところを突かれたらしく、ヴァーミリオンがたじろいだ。

 意外と強いな、マナ……。

「もう、そういう面子とかどうでもいいわよ。とにかく行きましょ」

 クーデリアが鼻を鳴らした。

 ――というわけで、俺たちは上級冒険者たちの元へと向かった。



 冒険者ギルド『猛虎の爪牙』。

 そこに所属する上級冒険者九名のチームに、俺たちは組み入れられることになっている。

 で、彼らが待機している町の中心部――時計台のモニュメントのところまでやって来た。

「ふん、学生まで駆り出すとはな」

 隊長さんが鼻を鳴らす。

 三十代前半くらいの渋い外見の男だ。
 顔や体にある無数の傷はいかにも歴戦の猛者という感じだった。

 がっしりした体格で、装備は大剣に重装鎧――典型的なパワーファイターのようだ。

「俺たちの足を引っ張るんじゃねーぞ。というか、お前も学生か? 俺と大して変わらない年齢に見えるが……」
「アラサーです」
「三つしか違わないのか」
「まあ、その、再就職のために」
「不景気だしな。けど、冒険者業界も楽じゃねーぞ」
「ですか」
「ああ。ま、お互い三十代同士、がんばろう」

 ぽんと肩を叩かれた。

「ありがとうございます」

 学園だと十代の若者ばっかりだから、こうやって同年代と話すとちょっとホッとする。

「あ、俺はレオンです。よろしくお願いします」
「よろしくな。俺はガイウス」

 ニッと笑うガイウス隊長。

「――隊長、来ました!」

 冒険者の一人が叫ぶ。

 ぐおおおおんっ。

 雄たけびとともに上空から五体のドラゴンが下りてくる。

「よし、陣形を組め! 学生チームは後方支援だ! 学生といっても、ここにいる以上は戦力とみなすから働いてくれよ!」

 隊長さんが発破をかけた。

「上級冒険者チームの一員として――実力と矜持を示せ!」
「了解」

 俺はまっさきに飛び出した。

 向かってくるドラゴンは、全部で五体。
 まとめて吹き飛ばす――。

「お、おい、待て! まず魔法使いチームが先制を――」

 ガイウス隊長が制止の声を上げるが、もう俺は攻撃態勢に入っていた。

「【ドラゴンブレス】!」

 とっておきのスキルをいきなりぶっ放してやった。

 ごうっ!

 放たれた青いブレスが五体を飲みこみ、消滅させる。

「……へっ?」

 ガイウス隊長はポカンとした顔で俺を見ていた。

「い、一撃でドラゴンを全滅……?」
「さあ、次々と行きましょう」



 俺たちは町の中を移動する。

 ドラゴンは数体の編隊を組み、各区域を襲っていた。
 それらを見つけ次第攻撃する俺。

「【ドラゴンブレス】!」

 ドラゴンを七体撃墜。

「【トルネードギガ】!」

 さらに四体を撃墜。

「【フレイムストリーム】!」

 さらに六体を撃墜。

 俺は片っ端からドラゴンを撃ち落としていた。
 手持ちの中で火力が高いスキルをとにかく惜しみなく使う。

「……お、お前、なんなんだ、その攻撃力……」

 ガイウス隊長が、そして上級冒険者たちが全員ポカンとしていた。
 ただただ、呆然としていた。

「もうレオン一人でいいんじゃないかな……」

 そんな声が聞こえてくる。

 まあ、確かにここまでは俺一人でドラゴンを全部倒している。



 ほどなくして――町の上空に集まっていたドラゴンの群れは、すべて掃討できた。

 ……その九割以上を倒したのは、俺である。

「この町を襲ってきたドラゴンを――大半をお前一人で倒すとはな」

 ガイウス隊長はまだ呆然としているようだ。

「レオン・ブルーマリン、だったな。お前、もう所属予定のギルドは決まってるのか?」
「所属予定? いえ……」

 そもそも入学してそんなに時間が経ってないし。

「よかったら、俺たちのギルドに来ないか。お前なら即戦力だ」

 ガイウス隊長がニッと笑う。

「というか、即エースだろう。俺たちとしても強い仲間が入るのは大歓迎だ」
「俺がガイウス隊長たちのギルドに……」
「それに同年代の奴が入るのは嬉しいしな。お前とは気が合いそうだ」
「はは、そうですね」

 それは俺も思う。

 就職先か……。
 もともと再就職のために冒険者学校に入ったんだもんな。

 思わぬ形でアピールできてしまったわけか……。