終章

  白のカーネーションを君に。



「お師匠様はね、結香なんだよ。」

「え…?どういう、こと?」

色葉があまりにも唐突に突拍子もない事をいうから、私は困惑してしまった。

「きっと結香は佐野くんから世界の事を聞いたと思うの。同じ人がいるもう一つの世界の事を。」

「それは、聞いた。パラレルワールドの様なものがあってそこには私と莉斗だけが入り込めるっていう話。」

「うん。そしてきっとそこでは深月が事故で亡くなった話もおそらく聞いている筈。そこまではあっては一応いるの。でも、まだ少し佐野くんでも知らない事が残っている。」

知らない事。それはたかが一般人である私が知っても良いことなのか。世界のお偉いさんでも知らない話を今、私達はしている気がする。

「もう一つの世界、ここではパラレルワールドと仮定するね。それはきっと佐野くんと結香しか入り込めないって行ったけど本当は誰でも入れると言ってしまえば入れてしまうの。ただ、起きた記憶とかは全くの別物だからそこがパラレルワールドなのか私達の現在いる世界なのか区別がつかないの。でも、佐野くんはそのパラレルワールドに入っているという自覚が出来る。だから結香も入り込むことができると思ってしまった。実は結香はパラレルワールドに入っているという自覚はあってもそれをうまくコントロールできないから記憶が混同して長い間意識をおとしていたんだよ。」

ていうか普通自覚してそれをコントロールできる佐野くんの方がおかしいんだよ!って色葉は少し笑い混じりに言ったけれど、結局私も今はコントロールできる側にいてしまうから莉斗と同類なのではとも思う。

「そして、不思議なのが音羽ちゃんとけいとちゃん。現在の世界だと霧矢音羽、姫崎けいとという名でパラレルワールドだと新木音羽、七瀬けいとという名で同一人物でありながら名字が違い、現在の世界とパラレルワールドの二つの記憶を一つの記憶として存在しているの。だから、彼女達は結香が倒れた後パラレルワールドの方でも結香の事を心配していた。パラレルワールドでは結香は倒れていないから。というかそもそも学校に転入してきていないから学校に結香のことを知っている人はいないんだ。」

パラレルワールドの私は学校に行っていない…?
だとしたら、パラレルワールドの私は何をしているの?まだ、生きている?それとも深月が事故で亡くなったとしたら引っ越してそのままそこの学校に入ったって事なのかな。