長年一人で過ごしてきた僕に、“青春”がどんなものなのか検討もつかない。
「ふつうの青春なら、人を好きになったり、恋したり、好きな人と一緒に帰ったり、大人数でフードコートに行って話したりゲーセン行ってプリクラ撮ったり」
どうやら僕は、その“ふつうの青春”さえできていないことを知り、
「……へぇ」
途端に虚しくなった。
そんな僕に、でもね、とズイッと顔を向けると、私がやりたい青春は違うの、と前置きをして、
「放課後帰り道にアイス半分こしたり、河川敷で四つ葉のクローバー探したり、屋上で大の字で寝転んだり、星を一緒に見たり、海ではしゃいだり、それから……」
指を一つずつ折りながら数えていき、次から次へと溢れてくる言葉に。
「──ストップ!」
「なに?」
「いや、なにって……やりたいことって、そんなにたくさんあるんだ……」
呆気にとられていると、ここからが肝心なところなんだけど、と前置きをすると、
「その青春を写真に撮ってSNSにアップしたいと思ってるの」
いつのまにか自分のスマホを、かばんの中から取り出して画面を僕に向けてくる。
「……は? SNS?」
「うん」
けれど、それを聞いた僕は、
「──いや、無理むり!」
思わず、彼女の方を向いたまま後ずさった。