逃げられないように。

恥ずかしいとか、そんなのもう関係なくて。


「お願い…」


ふいに、僕の手に触れる。

その手はわずかに震えている気がして、僕は「三日月さん?」声をかける。

冷たくて、真っ白な色をしていて。


「早く、離して…」


途切れる声に、さすがの僕も違和感を覚えて彼女の顔を横から覗き込むと、蒼白な顔が見える。

わずかに顔を歪めて、早く、と言葉にならない声を呟いて。

僕の視界でグラついた彼女は、僕の方へ寄り添うように倒れてくる。


「みっ、三日月さん?!」


しゃがみ込むように抱きしめると、目を閉じたまま眉間にしわを寄せて、唇を噛みしめて。何かに耐えるような表情を浮かべる。

僕は何度も何度も声をかけるけれど、返事がなくて、怖くなった僕はあたりをキョロキョロ見渡す。


けれど、タイミング悪く誰も人が歩いて来ない。助けを呼ぶことができない。

どうしよう。三日月さんが苦しそう。僕はどうすれば……

でも、このままじゃダメだ。


「三日月さん、ちょっとごめんね」


彼女の膝の裏と背中に手を添えて、一気に持ち上げる。
非力な僕でもなんとか持ち上がる。

つらいとか、苦しいとか、そんなの全部どうでもよくて。とにかく彼女を救いたいと思った。

だから僕は、他のものには目も暮れず病気へと走ったんだ。