「ぅわあっ…!」


思わず声をあげて尻餅をついた。


……うわ、最悪。
僕ってなんでこんなに失態ばっかり晒してしまうんだよ。

恥ずかしくてしばらく顔を上げられずにいると、プッ、と笑い声がもれた。


「……な、なんだよ」

「いや〜、いきなりどうしたのかなぁと思って」


絶対僕のことからかってる。

楽しんでる雰囲気が伝わってくる。


「べつにどうもしてない。ただ今のは足が滑っただけだ」


強がるように告げた言葉だけれど、思いのほか小さくて弱々しく聞こえた。

どうせ僕のことなど信用しないんだろうな、思いながらこれからどうしようかと考えていると、


「確かにここ、少しだけ滑るもんねぇ」


言いながら、僕に向かって手を伸ばしてくる。


その手に視線を合わせると、その向こうに見えた瞳がぼんやりと見えた。
それは、少しだけ笑っているように見えて、絶対信じてない、そう思った。


「……どうも」


けれど僕はそれに気づかないフリをして、手を掴むと、立ち上がる。

瞬間、自然にパッと手は離れた。


「次は滑らないように気をつけてね」


笑いを堪えながら言っているのが見え見えで、


「……ほっとけ」