ドクトルの事件について、あれこれと事後処理があって……
一週間後、ようやく落ち着きを取り戻すことができた。
ドクトルを始めとした、冒険者協会の幹部の数人が逮捕。
代わりに、クリフとその他数人が幹部へ。
これからどうなるか?
まだ不明なところはあるけど……
でも、クリフなら、今まで以上に組織を良くしてくれると思う。
そう思わせてくれるだけの力と熱意を感じられた。
そして、久しぶりの平穏を取り戻した僕達は……
――――――――――
「うぅ……」
街へ出ると、アイシャが僕の後ろにぴたりとくっついた。
落ち着きなく尻尾を揺らして、あちらこちらに視線を飛ばしている。
「どうしたの、アイシャ?」
「……」
「ピタリとくっつかれると、ちょっと歩きづらいというか……」
「……」
「うーん?」
アイシャの犬耳は垂れ下がり、尻尾も落ち着きがない。
「フェイトってば、ちょっと女心がわかってないわねー」
「女心は、少し違うと思いますが」
ソフィアと、その頭の上にいるリコリスがそんなことを言う。
察しが悪い、ということだろうか?
うーん?
そんなことを言われても……
あ、もしかして。
「人混みが怖いのかな?」
アイシャはひどい目に遭ってきた。
人間不信に陥っていていてもおかしくはないし……
だから、外が怖いのかもしれない。
でも、こういう時はどうすれば?
えっと……
「アイシャ、手を出してごらん」
「?」
「ほら」
ちょっと強引だけど、アイシャの手を握る。
「どうかな? こうして、誰かと手を繋いでいると安心できると思うんだけど」
「あ……」
「じゃあ、私は反対側の手をいただきますね」
そう言って、ソフィアもアイシャと手を繋ぐ。
さらに、リコリスはアイシャの肩に移動する。
「あたしは、さすがに手を繋ぐとか無理だから、こうして近くにいてあげる」
「どうかな?」
「……ん」
ぎゅっと、繋いだ手に力が込められる。
それから、
「あり……がとう」
アイシャは、にっこりと天使のように笑った。
――――――――――
今日、街へ出たのは、アイシャの服を買うためだ。
今はソフィアの服を着せているものの、サイズが合っていないからぶかぶかだ。
それに、アイシャは獣人だから、スカートなどに尻尾用の穴を開けてもらわないといけない。
そんなわけで街の服屋にやってきたのだけど……
「どう……かな?」
「はぁあああ、か、かわいいです! すごくかわいいです! ものすごくかわいいです!」
「あり……がと」
「アイシャちゃん、アイシャちゃん。次は、こちらの服を着てみてくれませんか? こちらは、このアクセサリーとセットで。その後は、このリボンとセットにした服を……」
ソフィアが目をハートマークにして、暴走していた。
そう……アイシャはかわいい。
庇護欲をそそられるというか、天使が降臨したというか……
とにかく、人の心を捉えて離さない。
剣聖であろうと、ソフィアに対抗する術はない。
一瞬でアイシャの虜になったらしく、あれこれと服を着せている。
「えっと……ソフィア? あれこれと選んでも、後で大変になると思うんだけど」
「問題ありません! 全部、買えばいいんです」
「え、全部買うの?」
「もちろんです!」
「……まあ、いいか」
先の事件を解決したことで、それなりにお金に余裕はある。
それに……
アイシャは、今までおしゃれをすることができなかった。
その分、今、たくさん楽しんでもいいと思う。
「じゃあ、僕もアイシャに似合いそうな服を探そうかな?」
「はい、そうしましょう」
「え、と……」
アイシャが困ったような感じでリコリスを見るのだけど、
「諦めなさい。この二人、似た者同士だから、こうなったら止まらないわ」
リコリスは、どこか呆れたような感じで、そう言うのだった。
「それにしても……」
アイシャのための服をソフィアと一緒に選んでいると、ふと、リコリスの声が聞こえてきた。
「こうしていると、まるで家族みたいね」
「家族?」
「ええ。フェイトが父親で、ソフィアが母親。で、アイシャが娘」
「それは……」
アイシャには本当の家族がどこかにいるはずだ。
リコリスの感想は悪いものなのかもしれない。
……でも。
「そう見えたのなら、うれしいな」
僕とソフィアとアイシャ。
その三人が家族に見えると言われて、僕は、素直にうれしいと感じていた。
一週間後、ようやく落ち着きを取り戻すことができた。
ドクトルを始めとした、冒険者協会の幹部の数人が逮捕。
代わりに、クリフとその他数人が幹部へ。
これからどうなるか?
まだ不明なところはあるけど……
でも、クリフなら、今まで以上に組織を良くしてくれると思う。
そう思わせてくれるだけの力と熱意を感じられた。
そして、久しぶりの平穏を取り戻した僕達は……
――――――――――
「うぅ……」
街へ出ると、アイシャが僕の後ろにぴたりとくっついた。
落ち着きなく尻尾を揺らして、あちらこちらに視線を飛ばしている。
「どうしたの、アイシャ?」
「……」
「ピタリとくっつかれると、ちょっと歩きづらいというか……」
「……」
「うーん?」
アイシャの犬耳は垂れ下がり、尻尾も落ち着きがない。
「フェイトってば、ちょっと女心がわかってないわねー」
「女心は、少し違うと思いますが」
ソフィアと、その頭の上にいるリコリスがそんなことを言う。
察しが悪い、ということだろうか?
うーん?
そんなことを言われても……
あ、もしかして。
「人混みが怖いのかな?」
アイシャはひどい目に遭ってきた。
人間不信に陥っていていてもおかしくはないし……
だから、外が怖いのかもしれない。
でも、こういう時はどうすれば?
えっと……
「アイシャ、手を出してごらん」
「?」
「ほら」
ちょっと強引だけど、アイシャの手を握る。
「どうかな? こうして、誰かと手を繋いでいると安心できると思うんだけど」
「あ……」
「じゃあ、私は反対側の手をいただきますね」
そう言って、ソフィアもアイシャと手を繋ぐ。
さらに、リコリスはアイシャの肩に移動する。
「あたしは、さすがに手を繋ぐとか無理だから、こうして近くにいてあげる」
「どうかな?」
「……ん」
ぎゅっと、繋いだ手に力が込められる。
それから、
「あり……がとう」
アイシャは、にっこりと天使のように笑った。
――――――――――
今日、街へ出たのは、アイシャの服を買うためだ。
今はソフィアの服を着せているものの、サイズが合っていないからぶかぶかだ。
それに、アイシャは獣人だから、スカートなどに尻尾用の穴を開けてもらわないといけない。
そんなわけで街の服屋にやってきたのだけど……
「どう……かな?」
「はぁあああ、か、かわいいです! すごくかわいいです! ものすごくかわいいです!」
「あり……がと」
「アイシャちゃん、アイシャちゃん。次は、こちらの服を着てみてくれませんか? こちらは、このアクセサリーとセットで。その後は、このリボンとセットにした服を……」
ソフィアが目をハートマークにして、暴走していた。
そう……アイシャはかわいい。
庇護欲をそそられるというか、天使が降臨したというか……
とにかく、人の心を捉えて離さない。
剣聖であろうと、ソフィアに対抗する術はない。
一瞬でアイシャの虜になったらしく、あれこれと服を着せている。
「えっと……ソフィア? あれこれと選んでも、後で大変になると思うんだけど」
「問題ありません! 全部、買えばいいんです」
「え、全部買うの?」
「もちろんです!」
「……まあ、いいか」
先の事件を解決したことで、それなりにお金に余裕はある。
それに……
アイシャは、今までおしゃれをすることができなかった。
その分、今、たくさん楽しんでもいいと思う。
「じゃあ、僕もアイシャに似合いそうな服を探そうかな?」
「はい、そうしましょう」
「え、と……」
アイシャが困ったような感じでリコリスを見るのだけど、
「諦めなさい。この二人、似た者同士だから、こうなったら止まらないわ」
リコリスは、どこか呆れたような感じで、そう言うのだった。
「それにしても……」
アイシャのための服をソフィアと一緒に選んでいると、ふと、リコリスの声が聞こえてきた。
「こうしていると、まるで家族みたいね」
「家族?」
「ええ。フェイトが父親で、ソフィアが母親。で、アイシャが娘」
「それは……」
アイシャには本当の家族がどこかにいるはずだ。
リコリスの感想は悪いものなのかもしれない。
……でも。
「そう見えたのなら、うれしいな」
僕とソフィアとアイシャ。
その三人が家族に見えると言われて、僕は、素直にうれしいと感じていた。