ゼノアスが剣を振り下ろして……
 しかし、僕はその前に割り込み、受け止めた。

「む?」
「……ふぇい、ト……?」

 相変わらずの剛剣だ。
 手が痺れるものの、なんとか受け止めることができた。

 ゼノアスが後ろへ。
 警戒しつつ、倒れているソフィアを背中にかばう。

「……ごめんね、ソフィア。遅くなっちゃった」
「そんなことは……それよりも、フェイトは大丈夫なのですか? 怪我は……ごほっ」
「それ、僕のセリフだよ」

 ソフィアはボロボロだった。
 あちらこちらが傷ついていて、流れた血で服が赤に染まっていた。
 内蔵が傷ついているのか、唇から血があふれている。
 見ただけじゃわからないけど、骨折の一つや二つ、しているだろう。

 そんな彼女を見て、僕は怒りを覚えた。
 ゼノアスに対してじゃない。
 自分自身に対してだ。

 ソフィアはこんなにボロボロになるまで戦っていた。
 それなのに僕はなにをしていた?
 逃げて、逃げて、逃げて……
 怖いと丸くなっていただけ。

 そんな情けない自分に、どうしようもなく腹が立つ。

 でも、致命的なミスは犯していない。
 こうして間に合った。

 ごめんね、ソフィア。
 僕がどうしようもないせいで、君の力になることができず、一緒に戦うことができなくて、こうして傷ついてしまった。

 でも、それはここまで。
 これ以上はさせない。
 ここからは……僕が戦う。

「お前か」

 ゼノアスが冷たい目で僕を見る。
 その瞳に僕に対する興味はない。
 道端の石ころを見るのと同じだ。

 逃げた僕に失望しているのだろう。
 斬る価値もないと思っているのだろう。

 敵にさえ哀れまれてしまう。
 無価値に思われてしまう。
 なんて情けない。

 でも……うん。
 どう思われようが関係ない。
 僕は僕のやることをやるだけ。
 大事な人を守るために剣を握る。

「これ以上はやらせないよ」
「ふむ」

 ゼノアスは少し驚いたような顔をして、

「……いい顔だ」

 小さく笑い、巨大な剣を構えた。
 どういう心境の変化があったのかわからないけど、再び僕のことを敵として認識してくれたらしい。

 彼ほどの剣士に認められるのは嬉しいのだけど……
 でも、厄介でもある。
 どうせなら敵ではないと油断しててほしかった。

「すぅ……はぁ……」

 こうして対峙すると、ゼノアスの圧倒的な力が伝わってくる。
 素直に怖い。
 死にかけた恐怖を思い出して、体が震えてしまいそうだ。

 でも。

 それ以上に、ソフィアを失うことの方が怖い。
 アイシャやスノウ、リコリスが傷ついてしまうことの方が怖い。
 それだけはダメだ、絶対にダメだ。

 今度は絶対に退かない。
 絶対に守ってみせる。
 この命に賭けて!

「いくよ」
「来い」

 そして……リベンジマッチが始まる。