「それで……なんの用ですか?」
スティアート家の裏手にソフィアとミントの姿があった。
大きな冒険を終えて……
ようやく家に帰ることができた。
ゆっくりと疲れを癒やしたい。
そう思っていた矢先、ソフィアはミントに呼び出されたのだ。
正直なところ、ソフィアはミントの存在を忘れていた。
自分とは別の、フェイトの幼馴染。
とても気になる存在ではあるものの……
色々なことがありすぎて、その存在は頭の中からすっかり抜け落ちていた。
用があると言うが、いったいなんだろうか?
改めて、恋の宣戦布告でもされるのだろうか?
思わず身構えるソフィアだけど……
それを気にした様子はなく、ミントは優しく微笑む。
「まずは、ごめんなさい」
「え?」
ミントが頭を下げると、ソフィアはキョトンとした。
それもそうだ。
謝られるようなことをされた覚えはない。
不思議に思っていると、ミントは申しわけなさそうに言う。
「二人がスノウレイクにやってきて……私、からかうというか、少し張り合うような態度をとっちゃったよね?」
「……あぁ、アレですか」
ミントもフェイトに想いを寄せている。
そして、同じ幼馴染。
そう判断したソフィアは、ミントをかなり敵視したものだ。
敵視といっても、魔物に向けるようなものではない。
恋のライバル的な意味合いなので、苛烈なものではないが……
それでも剣聖の圧というものがある。
そんなものをぶつけられたミントは、さぞ苦労しただろう。
そのことを考えると、謝るのはソフィアの方なのだけど……
ミントは頭を下げるのをやめない。
「私はフェイトの幼馴染で、フェイトのことが大事」
「……」
「ただ、それは兄弟のような感情なの」
「え?」
予想外のことを聞かされて、ソフィアは、再び間の抜けた表情に。
「安心して、恋愛感情はないから」
「……それは本当ですか?」
「うん、本当だよ。気遣っているとか身を引こうとか、そういうことじゃなくて、本当にないの。フェイトのことは好きだけど、それは、家族に対する好きと同じなんだ」
「そう、だったのですか……」
だとしたら、ソフィアは一人で空回りしていたことになる。
いや、待て。
意味深な態度を取ってきたミントにも非があるのではないか?
ああ、なるほど。
だから、ごめんなさい、なのか。
色々と納得するソフィアだった。
「どうして、そのようなことを?」
「全部、私の身勝手なんだけど……フェイトのことが心配だったから」
フェイトは優しい。
相手が苦しい思いをするなら、自分が肩代わりしてしまうくらい優しい。
そんな幼馴染だから、いつもハラハラ、心配していた。
スノウレイクを出て冒険者についていった時は、とても心配したものだ。
十年くらいして帰ってきて、無事な姿を見て安心できたものの……
隣には見知らぬ美少女。
それに、獣人の女の子と妖精。白い狼に似た獣。
よくわからない、予想を越えた状態で帰ってきた。
心配して当然だろう。
なので、せめてソフィアの人隣を確かめるために、あれこれとちょっかいをかけてみた……と、ミントは語る。
「そういうことだったのですね……」
「挑発するようなことをして、ごめんなさい。でも、ソフィアさんが本当にフェイトのことを想っていることがわかって……でも、これはこれで私の身勝手なことですね。本当にごめんなさい」
三度、ミントは頭を下げた。
確かに、ミントがやったことは身勝手なことだ。
フェイトのことを気にしての行為とはいえ、ソフィアの許諾なしに場を荒らすようなことをした。
ソフィアには怒る権利がある。
あるのだけど……
「はい、わかりました。謝罪はしっかりと受け止めました」
ソフィアは怒ることなく、笑顔で応えた。
「えっと……怒らないんですか?」
「少し腹立たしいですが、まあ、気にしません」
「でも、ソフィアさんには私を糾弾したり、フェイトに事実を報告する権利が……」
「そのようなことはしませんよ」
ミントの言っていることは全て真実だ。
嘘なんてついていない。
同じ女だから、ソフィアはそのことがわかった。
だとしたら、彼女を責めることなんてできない。
感情のベクトルは違うものの、同じ男性を好きになった者同士。
共感は生まれても、敵意が出てくることはない。
「私達、良い友達になれると思うんです。どうですか?」
ソフィアはにっこりと笑い、手を差し出した。
ミントは、少しの間ぽかんとして……
「はい、よろしくお願いします」
ややあって、同じくにっこりと笑い、ソフィアの手を取った。
スティアート家の裏手にソフィアとミントの姿があった。
大きな冒険を終えて……
ようやく家に帰ることができた。
ゆっくりと疲れを癒やしたい。
そう思っていた矢先、ソフィアはミントに呼び出されたのだ。
正直なところ、ソフィアはミントの存在を忘れていた。
自分とは別の、フェイトの幼馴染。
とても気になる存在ではあるものの……
色々なことがありすぎて、その存在は頭の中からすっかり抜け落ちていた。
用があると言うが、いったいなんだろうか?
改めて、恋の宣戦布告でもされるのだろうか?
思わず身構えるソフィアだけど……
それを気にした様子はなく、ミントは優しく微笑む。
「まずは、ごめんなさい」
「え?」
ミントが頭を下げると、ソフィアはキョトンとした。
それもそうだ。
謝られるようなことをされた覚えはない。
不思議に思っていると、ミントは申しわけなさそうに言う。
「二人がスノウレイクにやってきて……私、からかうというか、少し張り合うような態度をとっちゃったよね?」
「……あぁ、アレですか」
ミントもフェイトに想いを寄せている。
そして、同じ幼馴染。
そう判断したソフィアは、ミントをかなり敵視したものだ。
敵視といっても、魔物に向けるようなものではない。
恋のライバル的な意味合いなので、苛烈なものではないが……
それでも剣聖の圧というものがある。
そんなものをぶつけられたミントは、さぞ苦労しただろう。
そのことを考えると、謝るのはソフィアの方なのだけど……
ミントは頭を下げるのをやめない。
「私はフェイトの幼馴染で、フェイトのことが大事」
「……」
「ただ、それは兄弟のような感情なの」
「え?」
予想外のことを聞かされて、ソフィアは、再び間の抜けた表情に。
「安心して、恋愛感情はないから」
「……それは本当ですか?」
「うん、本当だよ。気遣っているとか身を引こうとか、そういうことじゃなくて、本当にないの。フェイトのことは好きだけど、それは、家族に対する好きと同じなんだ」
「そう、だったのですか……」
だとしたら、ソフィアは一人で空回りしていたことになる。
いや、待て。
意味深な態度を取ってきたミントにも非があるのではないか?
ああ、なるほど。
だから、ごめんなさい、なのか。
色々と納得するソフィアだった。
「どうして、そのようなことを?」
「全部、私の身勝手なんだけど……フェイトのことが心配だったから」
フェイトは優しい。
相手が苦しい思いをするなら、自分が肩代わりしてしまうくらい優しい。
そんな幼馴染だから、いつもハラハラ、心配していた。
スノウレイクを出て冒険者についていった時は、とても心配したものだ。
十年くらいして帰ってきて、無事な姿を見て安心できたものの……
隣には見知らぬ美少女。
それに、獣人の女の子と妖精。白い狼に似た獣。
よくわからない、予想を越えた状態で帰ってきた。
心配して当然だろう。
なので、せめてソフィアの人隣を確かめるために、あれこれとちょっかいをかけてみた……と、ミントは語る。
「そういうことだったのですね……」
「挑発するようなことをして、ごめんなさい。でも、ソフィアさんが本当にフェイトのことを想っていることがわかって……でも、これはこれで私の身勝手なことですね。本当にごめんなさい」
三度、ミントは頭を下げた。
確かに、ミントがやったことは身勝手なことだ。
フェイトのことを気にしての行為とはいえ、ソフィアの許諾なしに場を荒らすようなことをした。
ソフィアには怒る権利がある。
あるのだけど……
「はい、わかりました。謝罪はしっかりと受け止めました」
ソフィアは怒ることなく、笑顔で応えた。
「えっと……怒らないんですか?」
「少し腹立たしいですが、まあ、気にしません」
「でも、ソフィアさんには私を糾弾したり、フェイトに事実を報告する権利が……」
「そのようなことはしませんよ」
ミントの言っていることは全て真実だ。
嘘なんてついていない。
同じ女だから、ソフィアはそのことがわかった。
だとしたら、彼女を責めることなんてできない。
感情のベクトルは違うものの、同じ男性を好きになった者同士。
共感は生まれても、敵意が出てくることはない。
「私達、良い友達になれると思うんです。どうですか?」
ソフィアはにっこりと笑い、手を差し出した。
ミントは、少しの間ぽかんとして……
「はい、よろしくお願いします」
ややあって、同じくにっこりと笑い、ソフィアの手を取った。