「ところで……」
ライラの視線がアイシャの後ろに向けられた。
「……」
スノウが礼儀正しくおすわりをして、じっと待機していた。
話の途中、鳴くこともない。
拾ったばかりとは思えないくらい、しっかりとした犬だった。
「その子は? この前は見ませんでしたけど……」
「アイシャちゃんが拾ってきて、そのまま飼うことになったんですよ」
「なるほど。それにしても、うーん」
ライラの興味がスノウに移ったらしく、前に移動して、じっと覗き込む。
「オフゥ……?」
目の前に接近されたせいで、さすがのスノウも戸惑い気味に鳴いた。
でも、暴れるということはない。
ライラを噛んで撃退する、ということもない。
あくまでも礼儀正しく、おとなしくしていた。
立派だ。
「よしよし」
スノウが誇らしいという様子で、アイシャがなでなでした。
スノウはおすわりを続けたままではあるが、とてもうれしそうに尻尾を横にぶんぶんと振る。
それに合わせるかのように、アイシャも尻尾を振る。
尻尾の二重奏だ。
「スノウがどうかしましたか?」
「スノウちゃんっていうんですか、この子……うーん」
ライラはスノウの顔を触ったり、体に触れたり、あちらこちらを調べる。
スノウは迷惑そうにしていたものの、それでもじっとしていた。
主の知人で……
それと、悪意がないと判断したため、されるがままになっているようだ。
「この瞳、この毛……見たことがない犬種だね」
「ライラさんも知らないのですか?」
「知らないなー。獣人研究家なんてものをやってるから、犬とかにもそこそこ詳しいんだけど、でも、見たことがないかも」
「そうですか……謎ですね」
ソフィアは困ったような顔に。
今更、スノウのアイシャに対する親愛を疑うつもりはない。
ただ、どんな犬種でどんな性質を持つのか?
それを知ることができれば、今後、なにかあった時に対応しやすくなる。
なので、ライラがスノウに興味を持った時、犬種を知ることができるのでは? と期待したのだけど……
そうそううまくいかないらしい。
「なんだろ? ホントに謎だなあ……この子、一週間くらい借りてもいい?」
「だ、だめ!」
ソフィアではなくて、アイシャがダメ出しをした。
スノウをぎゅうっと両手で抱きしめて、涙目でライラを睨む。
「うー……!」
「あ、あはは。ごめんごめん、冗談だから。そんなことはしないわ」
「……ホント?」
「ほんとほんと。ごめんね、変なこと言って」
「あんたが言うと、本気にしか聞こえないのよねー。まったく、人騒がせね。迷惑をかけたらダメなのよ?」
「それ、リコリスが言いますか……?」
そんな軽い騒動があり……
それぞれが席について、話を仕切り直す。
「そのワンちゃん、もしかしたら神獣様の末裔かもしれないわね」
「神獣?」
「使徒や巫女と同じようなもの。女神さまの従僕で、その動物バージョン」
「そのような存在がいたのですか?」
「裏付けはとれてなくて、仮説なんだけどね。でも、私はいると確信しているわ。確かな証拠はないんだけど、でも、それに近いものはたくさん発見しているもの」
「……その神獣について、教えてくれませんか?」
もしもスノウが神獣だとしたら?
その末裔だとしたら?
正体を知るきっかけになるかもしれない。
スノウのことは信頼しているが、ただ、なにか起きた時のために色々と知っておいた方がいいことは事実。
なので、ソフィアは質問を追加してみることにした。
ただ、ライラは渋い顔になる。
「んー、教えたいのはやまやまなんだけど、私もよく知らないんだよねー」
「そうなんですか?」
「巫女に関する資料は残ってても、なんでか、神獣に関する資料はほとんどないんだ。まったく別の他の資料をたくさんつなぎ合わせて、神獣という存在がいた、という推論を立てているの」
「妙な話ですね……」
もしも神獣が存在したのなら、隠蔽することは難しいだろう。
大きな力を持つ者は、なにかしらの形で後世に伝えられるものだ。
それが一切なされていないということ、どういうことか?
神獣は存在していないか……
あるいは、思いつかないような理由が隠されているのか。
「私の推理で、裏付けはないんだけど……神獣は、人を守ることを使命としていたんじゃないかな? 女神さまと同じようにね。そして、人は何度も神獣に救われたことがあると思う。色々な文献を見て、情報をつなぎ合わせると、そういう結論に至るんだ」
「ということは……スノウは、いい子なのでしょうか?」
「スノウ、いい子」
ソフィアの言葉を肯定して、アイシャがスノウを撫でる。
スノウはうれしそうに鳴いて、アイシャに顔を寄せた。
「ま、わからないことはたくさんだけど……でも、問題ないんじゃないかな?」
「そうですね」
楽しそうに嬉しそうに、アイシャとスノウがじゃれ合う。
そんな二人を見て、自然と笑みをこぼすソフィアだった。
ライラの視線がアイシャの後ろに向けられた。
「……」
スノウが礼儀正しくおすわりをして、じっと待機していた。
話の途中、鳴くこともない。
拾ったばかりとは思えないくらい、しっかりとした犬だった。
「その子は? この前は見ませんでしたけど……」
「アイシャちゃんが拾ってきて、そのまま飼うことになったんですよ」
「なるほど。それにしても、うーん」
ライラの興味がスノウに移ったらしく、前に移動して、じっと覗き込む。
「オフゥ……?」
目の前に接近されたせいで、さすがのスノウも戸惑い気味に鳴いた。
でも、暴れるということはない。
ライラを噛んで撃退する、ということもない。
あくまでも礼儀正しく、おとなしくしていた。
立派だ。
「よしよし」
スノウが誇らしいという様子で、アイシャがなでなでした。
スノウはおすわりを続けたままではあるが、とてもうれしそうに尻尾を横にぶんぶんと振る。
それに合わせるかのように、アイシャも尻尾を振る。
尻尾の二重奏だ。
「スノウがどうかしましたか?」
「スノウちゃんっていうんですか、この子……うーん」
ライラはスノウの顔を触ったり、体に触れたり、あちらこちらを調べる。
スノウは迷惑そうにしていたものの、それでもじっとしていた。
主の知人で……
それと、悪意がないと判断したため、されるがままになっているようだ。
「この瞳、この毛……見たことがない犬種だね」
「ライラさんも知らないのですか?」
「知らないなー。獣人研究家なんてものをやってるから、犬とかにもそこそこ詳しいんだけど、でも、見たことがないかも」
「そうですか……謎ですね」
ソフィアは困ったような顔に。
今更、スノウのアイシャに対する親愛を疑うつもりはない。
ただ、どんな犬種でどんな性質を持つのか?
それを知ることができれば、今後、なにかあった時に対応しやすくなる。
なので、ライラがスノウに興味を持った時、犬種を知ることができるのでは? と期待したのだけど……
そうそううまくいかないらしい。
「なんだろ? ホントに謎だなあ……この子、一週間くらい借りてもいい?」
「だ、だめ!」
ソフィアではなくて、アイシャがダメ出しをした。
スノウをぎゅうっと両手で抱きしめて、涙目でライラを睨む。
「うー……!」
「あ、あはは。ごめんごめん、冗談だから。そんなことはしないわ」
「……ホント?」
「ほんとほんと。ごめんね、変なこと言って」
「あんたが言うと、本気にしか聞こえないのよねー。まったく、人騒がせね。迷惑をかけたらダメなのよ?」
「それ、リコリスが言いますか……?」
そんな軽い騒動があり……
それぞれが席について、話を仕切り直す。
「そのワンちゃん、もしかしたら神獣様の末裔かもしれないわね」
「神獣?」
「使徒や巫女と同じようなもの。女神さまの従僕で、その動物バージョン」
「そのような存在がいたのですか?」
「裏付けはとれてなくて、仮説なんだけどね。でも、私はいると確信しているわ。確かな証拠はないんだけど、でも、それに近いものはたくさん発見しているもの」
「……その神獣について、教えてくれませんか?」
もしもスノウが神獣だとしたら?
その末裔だとしたら?
正体を知るきっかけになるかもしれない。
スノウのことは信頼しているが、ただ、なにか起きた時のために色々と知っておいた方がいいことは事実。
なので、ソフィアは質問を追加してみることにした。
ただ、ライラは渋い顔になる。
「んー、教えたいのはやまやまなんだけど、私もよく知らないんだよねー」
「そうなんですか?」
「巫女に関する資料は残ってても、なんでか、神獣に関する資料はほとんどないんだ。まったく別の他の資料をたくさんつなぎ合わせて、神獣という存在がいた、という推論を立てているの」
「妙な話ですね……」
もしも神獣が存在したのなら、隠蔽することは難しいだろう。
大きな力を持つ者は、なにかしらの形で後世に伝えられるものだ。
それが一切なされていないということ、どういうことか?
神獣は存在していないか……
あるいは、思いつかないような理由が隠されているのか。
「私の推理で、裏付けはないんだけど……神獣は、人を守ることを使命としていたんじゃないかな? 女神さまと同じようにね。そして、人は何度も神獣に救われたことがあると思う。色々な文献を見て、情報をつなぎ合わせると、そういう結論に至るんだ」
「ということは……スノウは、いい子なのでしょうか?」
「スノウ、いい子」
ソフィアの言葉を肯定して、アイシャがスノウを撫でる。
スノウはうれしそうに鳴いて、アイシャに顔を寄せた。
「ま、わからないことはたくさんだけど……でも、問題ないんじゃないかな?」
「そうですね」
楽しそうに嬉しそうに、アイシャとスノウがじゃれ合う。
そんな二人を見て、自然と笑みをこぼすソフィアだった。