数日後。
再び獣人研究家の家を訪ねてみると、中から生活音が聞こえてきた。
「よかった、帰ってきているみたいだね」
「はい。また留守だったらどうしようと思っていましたが、一安心です」
アイシャについて、なにか新しい情報を得ることができるだろうか?
期待しつつ、扉をノックする。
「すみま……」
「おわぁあああああ!!!?」
ガラガラガラドガシャーン!!!
ノックをした直後、悲鳴が聞こえてきた。
ついでに、なにかが崩落するような音。
「え?」
「今、なにが……?」
僕とソフィアは、思わずぽかんとしてしまう。
アイシャはちょっと怯えていた。
「このあたしを待たせるなんて、なってないわねー」
リコリスはマイペース……
というか、ちょっと偉そうだった。
「今の、なんだろう……?」
「なにかが起きたことは間違いないと思いますが……もしかして事故が?」
だとしたら大変だ。
すぐに状況を確認した方がいいかもしれない。
でも、その場合は強引に立ち入らないといけないわけで……
どうしよう?
「はいはーい、今出るよー」
迷っていると、そんな呑気な声が聞こえてきた。
よかった。
なにか起きたことは間違いないだろうけど、怪我をしたとかそういうわけじゃなさそうだ。
「はい、こんにちはー」
扉が開いて、メガネをかけた女性が姿を見せた。
見た目は幼く、十二歳くらいに見える。
背も低く、体も細い。
そんな姿なのに、とても大きな白衣を身に着けていた。
ダボダボで引きずってしまっているのだけど、それを気にしている様子はない。
「どちらさまかな?」
「あ……僕は、冒険者のフェイト・スティア―ト」
「私も冒険者で、ソフィア・アスカルトと言います。この子はアイシャちゃん。それと、妖精のリコリスです」
「こんにちは」
「はい、どうも丁寧に。私は……おっ……おおおおおぉ!!!?」
突然、女性が大きな声をあげた。
ぐぐっと詰め寄るようにして、アイシャに強い視線を注ぐ。
その目は、ぴょこぴょこと揺れる耳と、ふりふりと動く尻尾に向けられている。
「あなたは獣人!? 獣人だよね!?」
「は、はい……」
「うひゃあああああ!!! まさか、ウチに獣人がやってくるなんて! すごい、すごすぎる! なんていう日なの、今日は! 女神さまに感謝よ!」
「あう……」
ものすごいテンションが高くなり、狂喜乱舞という言葉がぴったりといった様子で、女性がはしゃぐ。
正直、異様だ。
アイシャはちょっと怯えていた。
「あの……」
「はっ!?」
思わず呆れた視線を送ってしまうの。
それに気がついた女性は、ピタリと硬直した。
そして、たははと困り顔をして頭をかく。
「いやー……ごめんごめん。獣人研究家をやっているんだけど、本物の獣人を見たことは数えるほどしかなくて。ついつい興奮しちゃった」
「え? それじゃあ、あなたが……」
「名乗り遅れたね。私は、獣人研究家のライラ・イーグレットだ」
――――――――――
ライラ・イーグレット。
獣人研究家。
見た目は幼いのだけど……
驚くことに、今年で三十になるという。
獣人よりも彼女の方が謎だ。
とにかくも。
自己紹介を終えた後、僕達は彼女の家の中へ。
「うわぁ……」
ライラさんの家は、あちらこちらに書物が積み重ねられていた。
よくわからない道具もたくさん転がっている。
足の踏み場がないほどで、ちょっと片付けなければいけなかったほど。
「いやー、ごめんね。来客なんてぜんぜんなかったから、ちょっと散らかってて」
「ちょっと……ですか」
ソフィアの顔がちょっと引きつっていた。
「あ、お茶くらいはあるよ。コップがないから、このビーカーになるけど。はい、どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
ビーカーで飲むお茶……なんかシュールだ。
ただ、アイシャとリコリスは気にしていないらしく、さっそく口をつけていた。
そして、ほんわりと幸せそうな顔に。
なかなかどうして、味はおいしいらしい。
「それで、なにか私に用かな?」
「アイシャちゃん……というか、獣人について色々と知りたいと思いまして」
「ふむ? 獣人について教えてほしいというのなら、色々と語ろうじゃないか。講義は嫌いじゃないからね。ただ、どうして知りたいのか理由を教えてくれるかな?」
「それは……」
ソフィアが困った様子でこちらを見た。
僕達が獣人のことを知りたいと思ったのは、レナや魔剣の事件があったからだ。
果たして、それを話していいものか。
「……ソフィア、話してみよう」
「いいのですか?」
「うん。僕の勘だけど、ライラさんは信用できると思うんだ」
「わかりました。フェイトがそう言うのならば」
そうして、僕らは一連の事件について説明するのだった。
再び獣人研究家の家を訪ねてみると、中から生活音が聞こえてきた。
「よかった、帰ってきているみたいだね」
「はい。また留守だったらどうしようと思っていましたが、一安心です」
アイシャについて、なにか新しい情報を得ることができるだろうか?
期待しつつ、扉をノックする。
「すみま……」
「おわぁあああああ!!!?」
ガラガラガラドガシャーン!!!
ノックをした直後、悲鳴が聞こえてきた。
ついでに、なにかが崩落するような音。
「え?」
「今、なにが……?」
僕とソフィアは、思わずぽかんとしてしまう。
アイシャはちょっと怯えていた。
「このあたしを待たせるなんて、なってないわねー」
リコリスはマイペース……
というか、ちょっと偉そうだった。
「今の、なんだろう……?」
「なにかが起きたことは間違いないと思いますが……もしかして事故が?」
だとしたら大変だ。
すぐに状況を確認した方がいいかもしれない。
でも、その場合は強引に立ち入らないといけないわけで……
どうしよう?
「はいはーい、今出るよー」
迷っていると、そんな呑気な声が聞こえてきた。
よかった。
なにか起きたことは間違いないだろうけど、怪我をしたとかそういうわけじゃなさそうだ。
「はい、こんにちはー」
扉が開いて、メガネをかけた女性が姿を見せた。
見た目は幼く、十二歳くらいに見える。
背も低く、体も細い。
そんな姿なのに、とても大きな白衣を身に着けていた。
ダボダボで引きずってしまっているのだけど、それを気にしている様子はない。
「どちらさまかな?」
「あ……僕は、冒険者のフェイト・スティア―ト」
「私も冒険者で、ソフィア・アスカルトと言います。この子はアイシャちゃん。それと、妖精のリコリスです」
「こんにちは」
「はい、どうも丁寧に。私は……おっ……おおおおおぉ!!!?」
突然、女性が大きな声をあげた。
ぐぐっと詰め寄るようにして、アイシャに強い視線を注ぐ。
その目は、ぴょこぴょこと揺れる耳と、ふりふりと動く尻尾に向けられている。
「あなたは獣人!? 獣人だよね!?」
「は、はい……」
「うひゃあああああ!!! まさか、ウチに獣人がやってくるなんて! すごい、すごすぎる! なんていう日なの、今日は! 女神さまに感謝よ!」
「あう……」
ものすごいテンションが高くなり、狂喜乱舞という言葉がぴったりといった様子で、女性がはしゃぐ。
正直、異様だ。
アイシャはちょっと怯えていた。
「あの……」
「はっ!?」
思わず呆れた視線を送ってしまうの。
それに気がついた女性は、ピタリと硬直した。
そして、たははと困り顔をして頭をかく。
「いやー……ごめんごめん。獣人研究家をやっているんだけど、本物の獣人を見たことは数えるほどしかなくて。ついつい興奮しちゃった」
「え? それじゃあ、あなたが……」
「名乗り遅れたね。私は、獣人研究家のライラ・イーグレットだ」
――――――――――
ライラ・イーグレット。
獣人研究家。
見た目は幼いのだけど……
驚くことに、今年で三十になるという。
獣人よりも彼女の方が謎だ。
とにかくも。
自己紹介を終えた後、僕達は彼女の家の中へ。
「うわぁ……」
ライラさんの家は、あちらこちらに書物が積み重ねられていた。
よくわからない道具もたくさん転がっている。
足の踏み場がないほどで、ちょっと片付けなければいけなかったほど。
「いやー、ごめんね。来客なんてぜんぜんなかったから、ちょっと散らかってて」
「ちょっと……ですか」
ソフィアの顔がちょっと引きつっていた。
「あ、お茶くらいはあるよ。コップがないから、このビーカーになるけど。はい、どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
ビーカーで飲むお茶……なんかシュールだ。
ただ、アイシャとリコリスは気にしていないらしく、さっそく口をつけていた。
そして、ほんわりと幸せそうな顔に。
なかなかどうして、味はおいしいらしい。
「それで、なにか私に用かな?」
「アイシャちゃん……というか、獣人について色々と知りたいと思いまして」
「ふむ? 獣人について教えてほしいというのなら、色々と語ろうじゃないか。講義は嫌いじゃないからね。ただ、どうして知りたいのか理由を教えてくれるかな?」
「それは……」
ソフィアが困った様子でこちらを見た。
僕達が獣人のことを知りたいと思ったのは、レナや魔剣の事件があったからだ。
果たして、それを話していいものか。
「……ソフィア、話してみよう」
「いいのですか?」
「うん。僕の勘だけど、ライラさんは信用できると思うんだ」
「わかりました。フェイトがそう言うのならば」
そうして、僕らは一連の事件について説明するのだった。