「……今、なんて?」
僕の聞き間違いじゃなければ、レナは……
「ボクと付き合ってよ」
聞き間違いじゃなかった。
「えっと、いや、えっと……えぇ!?」
「あはは、驚きすぎだよー」
「そ、そう言われても……」
女の子から告白されるなんて、十数年ぶり。
というか、ソフィア以来だ。
驚いて、慌ててしまうのも仕方ない。
「うわ……フェイトってば、ソフィアがいるのに、他の子にモーションかけていたわけ? サイテー」
「おとーさん、サイテー?」
「そうよ。あんたのパパは、やっちゃいけないことをしたの」
「待って待って待って!」
お願いだから、誤解をしないでほしい。
あと、アイシャにとんでもないことを吹き込まないでほしい。
「僕はなにもしていないよ! そもそも、レナとは会ったばかりなんだから」
「本当に? 実は以前に、っていう展開はない?」
「ないよ!」
「即答ね……ま、信じてあげますか」
「ほ……」
リコリスが信じてくれて、安堵の吐息がこぼれた。
彼女のことだから、おもしろおかしく囃し立てるかと思ったのだけど……
アイシャのことを考えてくれているらしく、それはしないみたいだ。
助かる。
「というか……君は」
「レナ、って呼んで♪」
「……サマーフィールドさんは」
「レナ♪」
「……レナさんは」
「呼び捨てで♪ でないと、あることないこと言いふらすぞ」
この子は、悪魔だろうか?
「レナは、本気なの?」
「もちろん、本気だよ。ボク、フェイトのことを気に入っちゃった」
「だからって、いきなり告白なんて……普通は、もっとこう、色々と段階を踏んでいくものじゃないかな?」
「フェイトってば、価値観が古いなー。でも、そういうところもいいね」
にっこりとレナが笑う。
無邪気な笑顔で、ウソを吐くような子には見えない。
だから、告白も本当なのだろう。
でも、なんで僕?
物語に出てくるような英雄ではないし、二枚目でもない。
どこにでもいるような、普通の男なんだけど……
「一目惚れ、に近い感じかな? フェイトと一緒にいたら、すごく楽しそうだからね! だから、ボクと付き合おう?」
「そんなことを言われても……」
「ボク、こう見えて、けっこう尽くすタイプだよ? フェイトのためなら、毎日、おいしいごはんを作るし、お掃除もするし、ペットを飼うなら世話もするよ。あと……夜も、いっぱいご奉仕してあ・げ・る」
レナは、艷やかな顔をして妖しく微笑む。
悪魔じゃなくて、サキュバスかな?
普通の男なら、レナの魅力に一瞬で虜になっていたのかもしれない。
ただ、あいにくだけど、僕にはソフィアがいる。
レナも魅力的だけど……
でも、それ以上に、ソフィアの方が魅力的だ。
「悪いけど、僕にはもう……」
「……フェイト、なにをしているのですか?」
「っ!?」
ゾクリと背中が震えた。
極寒地帯に放り込まれたかのように、とんでもない寒気がする。
恐る恐る振り返ると……にっこりと、すごく良い笑顔を浮かべるソフィアの姿が。
「そ、ソフィア!? どうして、ここに……」
「お父さまへのお仕置きが終わったので、私も合流しようと。そうしたら……あらあらあら。そこの泥棒猫は誰なのでしょうか? 私にも紹介していただけませんか?」
ものすごいプレッシャーだ。
怒気と殺気が撒き散らされている。
アイシャとリコリスにはぶつけないという、器用な真似をしているものの……
他の客や店員はまともに浴びてしまい、ガクガクと震えている。
レナも、当然、そのオーラを浴びているのだけど……
しかし、彼女は平然としていた。
「ねえねえ、フェイト。この女、誰?」
「え?」
「それは私の台詞ですよ、フェイト。この女は、誰ですか?」
「え?」
なんで、二人共、僕に聞くの?
相手に尋ねるということはしないの?
「ボク、フェイトと楽しくおしゃべりしているんだけど、邪魔しないでくれる?」
「あなたこそ、私とフェイトの間に割り込もうとしないでくれませんか?」
「なにさ。キミ、誰? フェイトのなんなの?」
「私は、ソフィア・アスカルトです。フェイトの幼馴染であり、将来を誓い合った仲ですよ」
そう言うソフィアは、ちょっと得意げだ。
あなたなんか敵じゃない。
そんな声が聞こえてきそう。
でも、レナはまったくへこたれない。
むしろ、不敵な笑みを浮かべる。
「っていうことは、まだ結婚はしていないんだ? なら、ボクにも十分チャンスはあるよね」
「なっ……」
「ボク、ここまで興味を持った男の人って、フェイトが初めてなんだよね。だから、絶対に逃さない。ボクのものにするよ。フェイトも、ボクのこと、全部好きにしていいからね?」
「え? いや、それは……」
「フェイト! なにをデレデレしているのですか!?」
「してないよ!?」
「そ、そんなにえっちなことがしたいのなら、その……わ、私がいるではありませんか! 私なら、なんでもしてあげますし、どのような性癖も受け止めてみせますし、どこまでも尽くしてみせます!」
「こんなところでなにを言っているの!?」
「リコリス、せーへき、ってなに?」
「アイシャにはまだ早いわ」
ほら、アイシャが興味を持っちゃったじゃないか。
「まあ……あまり目立ちたくないし、今は退いてあげようかな」
いつの間にか、レナは自分の料理を食べ終えていた。
テーブルの上に代金を置いて、席を立つ。
「じゃあ、またね。フェイト、今度会ったら、デートしようね。約束だよ?」
「すぐに消えなさい!」
「怖い怖い。じゃあねー!」
レナは手を振り、元気よく立ち去った。
嵐のような女の子だったな……
僕のことが気になると言うのだけど、あれは、本当なのだろうか?
「フェイト」
氷点下のように冷たいソフィアの声。
「詳しく、詳しく、詳しくぅううう話を聞かせてもらいますよ?」
「ハイ」
詳細は省くのだけど……
とにかく、ソフィアが恐ろしかった。
僕の聞き間違いじゃなければ、レナは……
「ボクと付き合ってよ」
聞き間違いじゃなかった。
「えっと、いや、えっと……えぇ!?」
「あはは、驚きすぎだよー」
「そ、そう言われても……」
女の子から告白されるなんて、十数年ぶり。
というか、ソフィア以来だ。
驚いて、慌ててしまうのも仕方ない。
「うわ……フェイトってば、ソフィアがいるのに、他の子にモーションかけていたわけ? サイテー」
「おとーさん、サイテー?」
「そうよ。あんたのパパは、やっちゃいけないことをしたの」
「待って待って待って!」
お願いだから、誤解をしないでほしい。
あと、アイシャにとんでもないことを吹き込まないでほしい。
「僕はなにもしていないよ! そもそも、レナとは会ったばかりなんだから」
「本当に? 実は以前に、っていう展開はない?」
「ないよ!」
「即答ね……ま、信じてあげますか」
「ほ……」
リコリスが信じてくれて、安堵の吐息がこぼれた。
彼女のことだから、おもしろおかしく囃し立てるかと思ったのだけど……
アイシャのことを考えてくれているらしく、それはしないみたいだ。
助かる。
「というか……君は」
「レナ、って呼んで♪」
「……サマーフィールドさんは」
「レナ♪」
「……レナさんは」
「呼び捨てで♪ でないと、あることないこと言いふらすぞ」
この子は、悪魔だろうか?
「レナは、本気なの?」
「もちろん、本気だよ。ボク、フェイトのことを気に入っちゃった」
「だからって、いきなり告白なんて……普通は、もっとこう、色々と段階を踏んでいくものじゃないかな?」
「フェイトってば、価値観が古いなー。でも、そういうところもいいね」
にっこりとレナが笑う。
無邪気な笑顔で、ウソを吐くような子には見えない。
だから、告白も本当なのだろう。
でも、なんで僕?
物語に出てくるような英雄ではないし、二枚目でもない。
どこにでもいるような、普通の男なんだけど……
「一目惚れ、に近い感じかな? フェイトと一緒にいたら、すごく楽しそうだからね! だから、ボクと付き合おう?」
「そんなことを言われても……」
「ボク、こう見えて、けっこう尽くすタイプだよ? フェイトのためなら、毎日、おいしいごはんを作るし、お掃除もするし、ペットを飼うなら世話もするよ。あと……夜も、いっぱいご奉仕してあ・げ・る」
レナは、艷やかな顔をして妖しく微笑む。
悪魔じゃなくて、サキュバスかな?
普通の男なら、レナの魅力に一瞬で虜になっていたのかもしれない。
ただ、あいにくだけど、僕にはソフィアがいる。
レナも魅力的だけど……
でも、それ以上に、ソフィアの方が魅力的だ。
「悪いけど、僕にはもう……」
「……フェイト、なにをしているのですか?」
「っ!?」
ゾクリと背中が震えた。
極寒地帯に放り込まれたかのように、とんでもない寒気がする。
恐る恐る振り返ると……にっこりと、すごく良い笑顔を浮かべるソフィアの姿が。
「そ、ソフィア!? どうして、ここに……」
「お父さまへのお仕置きが終わったので、私も合流しようと。そうしたら……あらあらあら。そこの泥棒猫は誰なのでしょうか? 私にも紹介していただけませんか?」
ものすごいプレッシャーだ。
怒気と殺気が撒き散らされている。
アイシャとリコリスにはぶつけないという、器用な真似をしているものの……
他の客や店員はまともに浴びてしまい、ガクガクと震えている。
レナも、当然、そのオーラを浴びているのだけど……
しかし、彼女は平然としていた。
「ねえねえ、フェイト。この女、誰?」
「え?」
「それは私の台詞ですよ、フェイト。この女は、誰ですか?」
「え?」
なんで、二人共、僕に聞くの?
相手に尋ねるということはしないの?
「ボク、フェイトと楽しくおしゃべりしているんだけど、邪魔しないでくれる?」
「あなたこそ、私とフェイトの間に割り込もうとしないでくれませんか?」
「なにさ。キミ、誰? フェイトのなんなの?」
「私は、ソフィア・アスカルトです。フェイトの幼馴染であり、将来を誓い合った仲ですよ」
そう言うソフィアは、ちょっと得意げだ。
あなたなんか敵じゃない。
そんな声が聞こえてきそう。
でも、レナはまったくへこたれない。
むしろ、不敵な笑みを浮かべる。
「っていうことは、まだ結婚はしていないんだ? なら、ボクにも十分チャンスはあるよね」
「なっ……」
「ボク、ここまで興味を持った男の人って、フェイトが初めてなんだよね。だから、絶対に逃さない。ボクのものにするよ。フェイトも、ボクのこと、全部好きにしていいからね?」
「え? いや、それは……」
「フェイト! なにをデレデレしているのですか!?」
「してないよ!?」
「そ、そんなにえっちなことがしたいのなら、その……わ、私がいるではありませんか! 私なら、なんでもしてあげますし、どのような性癖も受け止めてみせますし、どこまでも尽くしてみせます!」
「こんなところでなにを言っているの!?」
「リコリス、せーへき、ってなに?」
「アイシャにはまだ早いわ」
ほら、アイシャが興味を持っちゃったじゃないか。
「まあ……あまり目立ちたくないし、今は退いてあげようかな」
いつの間にか、レナは自分の料理を食べ終えていた。
テーブルの上に代金を置いて、席を立つ。
「じゃあ、またね。フェイト、今度会ったら、デートしようね。約束だよ?」
「すぐに消えなさい!」
「怖い怖い。じゃあねー!」
レナは手を振り、元気よく立ち去った。
嵐のような女の子だったな……
僕のことが気になると言うのだけど、あれは、本当なのだろうか?
「フェイト」
氷点下のように冷たいソフィアの声。
「詳しく、詳しく、詳しくぅううう話を聞かせてもらいますよ?」
「ハイ」
詳細は省くのだけど……
とにかく、ソフィアが恐ろしかった。