城が見えなくなるくらいまで飛んで来たら、ちょっと喉が乾いてきた。
森の中に小川が見えたので降り立つことにした俺。
「魔法解除!」
その瞬間、俺は落下した。
そう!
俺の魔法は細かいコントロールが一切できないのである!
敵と戦うために必要なのは、威力だけだったからな。
あと、独学だし。
俺はズドーンッと音を立てて地面と激突した。
そこに、俺の形をした穴ができる。
「ふう……レベルが高くなかったら即死だったぜ」
穴から這い上がると、俺は小川の水を掬った。
おお、きれいな水だ。
いただきます。
飲む。
しばらくして。
「ウグワーッ!!」
俺のお腹がポンポンペインになった。
な、なんだーっ!!
川の水に毒が含まれていたのか!!
「くそう、毒消し魔法、ドクトール(俺命名)!!」
毒消しの魔法は、もっと効率がいいのを僧侶のヒロイナが使える。
だが、いつの間にか戦士のパワースとくっついた女から回復魔法を受ける気はしないのだ!!
ということで根性で身につけた魔法だ。
お腹の痛みは消えた。
「ふう……。まさか、川の水に毒があったとはな」
俺は立ち上がる。
すると、これを見ていたらしい何者かが姿を現した。
「おいおいお前さん、まさか川の水をのそのまま飲んだのか? そりゃあ腹を壊すぞ」
「誰だ?」
振り返ると、そこには体の大きな男がいた。
額には角があるから、オーガ族だろう。
敵意は無さそうだ。
まあ、敵意があっても怖くはない。
俺はレベルが高いからな。
「おれは、木こりのブルストだ。こっちは娘のカトリナ」
オーガの木こりの影から、小柄な少女が顔を出し、ちらりを俺を見た。
赤毛に緑の瞳をした女の子だ。
可愛い。
「川べりでのたうち回っている奴がいたからよ、こりゃあ毒キノコか川の水に当たったなと思ってな」
「へえ、川の水って当たるのか……!!」
「そうだぞ。何が溶け込んでるか分からねえ。煮沸したり、濾過したりして飲むもんだ」
「そうだったのか……。水は今まで、買って飲んでたからな。全然知らなかったぞ」
俺は一つ賢くなった。
「……お腹、だいじょうぶなの?」
おずおず、という感じでカトリナが聞いてきた。
「ああ。俺は解毒の魔法が使えるからな。毒にあたってもすぐ回復できるんだ」
「すごい」
「そりゃあすげえな! お前さん、魔法使いか何かか?」
「魔法使いどころではない。俺は勇し……いや、なんでもない。なんか魔法が使える男なのだ」
勇者ということがバレると、王国から追手がかかりそうだ。
ここは身の上を黙っておくことにした。
「お前さん、どこかに行くのか?」
「急にそんなことを聞いてきてどうした。天下無敵の行き先なしだぞ」
俺が胸を張ると、カトリナがくすっと笑った。
おっ、女子が俺の話で笑ったのは嬉しい。
「そうかあ。お前さん、このまま放っておくと毒キノコを食って死にそうだな。うちに来いよ。ちょうど人手が欲しかったところだ。俺の手伝いをしながら、そのへんの知識や生き方を身に着けたらどうだ」
「見ず知らずの男を家に誘うとは不用心な」
「油断ならねえ奴は生水飲んでウグワーッて言いながらのたうち回らねえよ」
「確かに」
俺は納得した。
「お父さんは自給自足のプロなの」
「ほんとか」
カトリナが凄いことを言うので、俺は目を見張った。
自給自足。
それはこれからの俺に必要になりそうなスキルではないか。
俺が今持っているスキルと言うと、攻撃魔法を超強化するものや、聖なる武具を装備できるものや、他人の魔法を模倣できるものや、弱いモンスターを寄せ付けないもの、そして罠を解除するスキルくらいのものだ。
ああ、レベル上限突破があったな。
だが!
自給自足をするために!
レベル上限を突破してどうする!!
「さらば勇者のスキル。俺は実生活に役立つスキルを身に着けるよ」
「勇者のスキルって?」
「なんでもないよ!」
カトリナの疑問をごまかして、ブルストの家に向かった。
そこは、ログハウスだった。
「おっ、本格的だな」
俺が褒めると、ブルストが笑った。
「だろう? 俺の腕も大したもんだろ。魔王が暴れだす前はな、町で大工をやってたんだ」
「えっ!?」
俺は驚いた。
「そうなの。私たちはオーガだから、魔物の仲間だと思われて町から追い出され……」
「自分で家を作ったのか!? このログハウスを!? すごいな!? プロみたいじゃないか……!! ……あ、カトリナすまん。なんか言った? ちゃんと聞くからもう一回言って」
「ううん、なんでもないよ」
カトリナがくすくす笑う。
なんだなんだ。
「器がでかいのか変なやつなのか。両方だろうなあ、お前は! おれの目に間違いはなかったぜ。よし、入りな! おれとカトリナの二人じゃ、開拓もあんまり進まなくてよ……。手伝いが欲しかったところなんだ」
「おう。俺としても願ってもないぜ。このままじゃ、野宿だったからな……! あと、森の中で食べ物を見つける方法とか知らないからかなり危なかった」
「お前さん、本当にあれだなあ……。森に一人で入っちゃいけねえぞ……」
「うん。君、すぐ死んじゃいそう……。そういえば。君はなんていう名前なの?」
おっと、まだ名乗ってなかったな。
「俺は勇し……じゃない、山歩き初心者の男、ショートだ。よろしくな」
森の中に小川が見えたので降り立つことにした俺。
「魔法解除!」
その瞬間、俺は落下した。
そう!
俺の魔法は細かいコントロールが一切できないのである!
敵と戦うために必要なのは、威力だけだったからな。
あと、独学だし。
俺はズドーンッと音を立てて地面と激突した。
そこに、俺の形をした穴ができる。
「ふう……レベルが高くなかったら即死だったぜ」
穴から這い上がると、俺は小川の水を掬った。
おお、きれいな水だ。
いただきます。
飲む。
しばらくして。
「ウグワーッ!!」
俺のお腹がポンポンペインになった。
な、なんだーっ!!
川の水に毒が含まれていたのか!!
「くそう、毒消し魔法、ドクトール(俺命名)!!」
毒消しの魔法は、もっと効率がいいのを僧侶のヒロイナが使える。
だが、いつの間にか戦士のパワースとくっついた女から回復魔法を受ける気はしないのだ!!
ということで根性で身につけた魔法だ。
お腹の痛みは消えた。
「ふう……。まさか、川の水に毒があったとはな」
俺は立ち上がる。
すると、これを見ていたらしい何者かが姿を現した。
「おいおいお前さん、まさか川の水をのそのまま飲んだのか? そりゃあ腹を壊すぞ」
「誰だ?」
振り返ると、そこには体の大きな男がいた。
額には角があるから、オーガ族だろう。
敵意は無さそうだ。
まあ、敵意があっても怖くはない。
俺はレベルが高いからな。
「おれは、木こりのブルストだ。こっちは娘のカトリナ」
オーガの木こりの影から、小柄な少女が顔を出し、ちらりを俺を見た。
赤毛に緑の瞳をした女の子だ。
可愛い。
「川べりでのたうち回っている奴がいたからよ、こりゃあ毒キノコか川の水に当たったなと思ってな」
「へえ、川の水って当たるのか……!!」
「そうだぞ。何が溶け込んでるか分からねえ。煮沸したり、濾過したりして飲むもんだ」
「そうだったのか……。水は今まで、買って飲んでたからな。全然知らなかったぞ」
俺は一つ賢くなった。
「……お腹、だいじょうぶなの?」
おずおず、という感じでカトリナが聞いてきた。
「ああ。俺は解毒の魔法が使えるからな。毒にあたってもすぐ回復できるんだ」
「すごい」
「そりゃあすげえな! お前さん、魔法使いか何かか?」
「魔法使いどころではない。俺は勇し……いや、なんでもない。なんか魔法が使える男なのだ」
勇者ということがバレると、王国から追手がかかりそうだ。
ここは身の上を黙っておくことにした。
「お前さん、どこかに行くのか?」
「急にそんなことを聞いてきてどうした。天下無敵の行き先なしだぞ」
俺が胸を張ると、カトリナがくすっと笑った。
おっ、女子が俺の話で笑ったのは嬉しい。
「そうかあ。お前さん、このまま放っておくと毒キノコを食って死にそうだな。うちに来いよ。ちょうど人手が欲しかったところだ。俺の手伝いをしながら、そのへんの知識や生き方を身に着けたらどうだ」
「見ず知らずの男を家に誘うとは不用心な」
「油断ならねえ奴は生水飲んでウグワーッて言いながらのたうち回らねえよ」
「確かに」
俺は納得した。
「お父さんは自給自足のプロなの」
「ほんとか」
カトリナが凄いことを言うので、俺は目を見張った。
自給自足。
それはこれからの俺に必要になりそうなスキルではないか。
俺が今持っているスキルと言うと、攻撃魔法を超強化するものや、聖なる武具を装備できるものや、他人の魔法を模倣できるものや、弱いモンスターを寄せ付けないもの、そして罠を解除するスキルくらいのものだ。
ああ、レベル上限突破があったな。
だが!
自給自足をするために!
レベル上限を突破してどうする!!
「さらば勇者のスキル。俺は実生活に役立つスキルを身に着けるよ」
「勇者のスキルって?」
「なんでもないよ!」
カトリナの疑問をごまかして、ブルストの家に向かった。
そこは、ログハウスだった。
「おっ、本格的だな」
俺が褒めると、ブルストが笑った。
「だろう? 俺の腕も大したもんだろ。魔王が暴れだす前はな、町で大工をやってたんだ」
「えっ!?」
俺は驚いた。
「そうなの。私たちはオーガだから、魔物の仲間だと思われて町から追い出され……」
「自分で家を作ったのか!? このログハウスを!? すごいな!? プロみたいじゃないか……!! ……あ、カトリナすまん。なんか言った? ちゃんと聞くからもう一回言って」
「ううん、なんでもないよ」
カトリナがくすくす笑う。
なんだなんだ。
「器がでかいのか変なやつなのか。両方だろうなあ、お前は! おれの目に間違いはなかったぜ。よし、入りな! おれとカトリナの二人じゃ、開拓もあんまり進まなくてよ……。手伝いが欲しかったところなんだ」
「おう。俺としても願ってもないぜ。このままじゃ、野宿だったからな……! あと、森の中で食べ物を見つける方法とか知らないからかなり危なかった」
「お前さん、本当にあれだなあ……。森に一人で入っちゃいけねえぞ……」
「うん。君、すぐ死んじゃいそう……。そういえば。君はなんていう名前なの?」
おっと、まだ名乗ってなかったな。
「俺は勇し……じゃない、山歩き初心者の男、ショートだ。よろしくな」