『ねぇ、あんな事言って大丈夫なの?』
「大丈夫って何が?」
『お父様にあんな大口叩いて』
「とりあえず診て見ないとわからん。それより情報をくれ、お前らの種族は何だ?」
『フェンリルよ』
「……予想はしてたがヤッパ伝説の魔獣かよ」
神喰狼《フェンリル》、現代においてもはや伝説の中でしか知られてない魔獣。
伝説に書かれている内容にはその爪で全てを切り裂き、その牙で命を喰い殺すと書かれている。
まさかそのフェンリルが一種族として繁栄してるとは思ってもみなかった。
『知ってるの、私達の生態を?』
「まさか、知ってると言ってもおとぎ話や伝説がいいところだよ。たった100年も生きられない人間が、伝説になるような存在をどうやったら調べられると思うんだよ」
『自信があるように見えたからよ。だからてっきり私達の生態でも知ってるのかと思って』
「自信あるように見えたんなら、それは調教師としての自信だろ。生態を知ってるからじゃない。それよりその爺さんの症状といつからそうなったのか教えろ」
まずは情報だ、全部そっからだ。
『原因は皆分かってるわよ………』
分かってる?なのに治せない?
「どういうこった」
『簡単よ、お祖父様の不調の原因は魔力不足。しかも私のせいでね』
あぁ、何となく判ったわ。
となると治療法は……
『着いたぞ』
ん?あ、この狼か。
確かにすんげぇ年期が入ってるな。
全身白髪だけど目力は強い、がその肢体はガリガリに痩せ細っている。
ただ色々と言わせてくれ、何で病人を地べたに寝させてる。いや何も無いからこうしてんだろうが。
『……何者だ?』
よろよろと起きようとする爺さんを慌てて隣にいた白髪の狼が支えた。
「初めまして爺さん。俺はあんたの孫娘に連れて来られた調教師だ。あんたの病気を治しにきた」
『これは治せん。分かるじゃろ』
「治せるよ爺さん。と言ってもあんたがそこまで死にたいのなら治さない。俺は患者の意思に流されやすい性格でね、よくやぶ医者扱いされるクズだよ」
この言葉にぎょっとしたのは狼だった。
この爺さんを助けたくて連れて来たのに治さないと、言った様なものだと感じたのだろう。
『ほら見ろ。所詮下等な人間の言う事だ、我々を騙す気なのだろう。娘よこれを元の場所に返してこい』
『待って下さいお父様‼この人間は死にたいのなら、と言いました。つまりお祖父様が生きたいと言えば治すのですよ‼』
隣でまた親子喧嘩が勃発したようだが俺には関係ない。
どうする爺さん。YES or NO?
『…………本当に治せるのか?』
「治せる」
俺は自信満々に言った。治さないものを治せる、と言うほど愚か者じゃないさ。
『何が望みじゃ。人間は欲深い』
お、話が早くていいね。
もちろん望みはあるし、欲も深い。
「望みは簡単だ。しばらくこの群れに居座らせてもらう。それが望みだ」
『理由は』
「生態調査さ。伝説の魔獣を近くで観察しながら生きるならこれ以上ない環境だ。もちろん他の人間達に公表する気はない」
最後のはこいつらへの配慮って訳じゃなくただの独占欲だがな。
『本当じゃな?』
「くどい」
『では頼んでみようかの』
『お義父様!?』
『お祖父様‼』
親父さんと狼が真逆の反応で面白いな、これ。
でもま、とりあえず治療に入りますか‼
「あ、ところで爺さんの牙は健在か?」
『当たり前じゃ。身体は弱ろうと牙は死後も生きる』
「大丈夫なら良いんだ」
てか死後も生きるってどういう意味だよ?ま、何かの比喩かもしんないけど。
とりあえず準備だ準備、ズボンに入れてたろくに切れないナイフで左腕の毛を剃る。次に消毒したいんだが……酒もないし水できれいに洗うか。簡単な魔法なら使えるし、自分で水を出して洗う。
これ結構野蛮な治療法だがこいつらは気にしないだろう。
なんたって野良だし、野生だし。
あと、外野の狼どもはジッと俺見るな。
「そんじゃ治療始めんぞ爺さん」
『儂は何をすればいい?』
「簡単簡単、俺の腕を噛んで血を流させろ。そしてその血を飲め」
『それだけか?』
「それだけ」
『ふん、嘘臭い』
『お父様‼』
まぁそりゃそういう反応は当然だよな。
でもな親父さん俺が血を流せたらこれがどれだけ手っ取り早い治療かすぐに分かる。
「早く噛めよ爺さん」
『うむ』
「あ、骨は砕くなよ」
『わかっている』
そして爺さんは俺の腕に噛み付いた。
『こっこれは!?』
あぁ痛って。マジ痛ってぇ。
けど解ったろ。俺の血肉には大量の魔力がある。
しかもその量だけなら伝説の魔獣の魔力不足を補えるほどの魔力が。
『ちょっと、どういう事!これほどの魔力が有るのに『調教師』だなんて、これの量だけなら!』
「勇者以上だよ、まぁ訳有りだけど」
『訳有り?』
「そう、訳有り」
簡単に言うと魔力量が多すぎて体の方が付いてこれない。全力で力を使えば俺の体が爆散する。
『つまり魔力量が多すぎて逆に力が出せないって事?』
「そうそう。普通は訓練やら修行やらで魔力が上がっていくはずなんだが、俺は生まれつきこんな魔力量でな。しかも歳を重ねるごとにまた魔力が上がる。おかげでガキの時はよく体調を崩してた」
溜めきれない魔力は熱になって散らされるが、おかげで親に心配ばかりかけてた。
「だからこの機会にここで体でも鍛えようかと思って」
『だからここに住む事を条件に?生態調査の事を言った時は嘘の臭いはしなかったけれど、そっちが本命かしら』
「まぁねぇ。でもお前らに興味が有るのも本当」
『食えない人間』
「大丈夫って何が?」
『お父様にあんな大口叩いて』
「とりあえず診て見ないとわからん。それより情報をくれ、お前らの種族は何だ?」
『フェンリルよ』
「……予想はしてたがヤッパ伝説の魔獣かよ」
神喰狼《フェンリル》、現代においてもはや伝説の中でしか知られてない魔獣。
伝説に書かれている内容にはその爪で全てを切り裂き、その牙で命を喰い殺すと書かれている。
まさかそのフェンリルが一種族として繁栄してるとは思ってもみなかった。
『知ってるの、私達の生態を?』
「まさか、知ってると言ってもおとぎ話や伝説がいいところだよ。たった100年も生きられない人間が、伝説になるような存在をどうやったら調べられると思うんだよ」
『自信があるように見えたからよ。だからてっきり私達の生態でも知ってるのかと思って』
「自信あるように見えたんなら、それは調教師としての自信だろ。生態を知ってるからじゃない。それよりその爺さんの症状といつからそうなったのか教えろ」
まずは情報だ、全部そっからだ。
『原因は皆分かってるわよ………』
分かってる?なのに治せない?
「どういうこった」
『簡単よ、お祖父様の不調の原因は魔力不足。しかも私のせいでね』
あぁ、何となく判ったわ。
となると治療法は……
『着いたぞ』
ん?あ、この狼か。
確かにすんげぇ年期が入ってるな。
全身白髪だけど目力は強い、がその肢体はガリガリに痩せ細っている。
ただ色々と言わせてくれ、何で病人を地べたに寝させてる。いや何も無いからこうしてんだろうが。
『……何者だ?』
よろよろと起きようとする爺さんを慌てて隣にいた白髪の狼が支えた。
「初めまして爺さん。俺はあんたの孫娘に連れて来られた調教師だ。あんたの病気を治しにきた」
『これは治せん。分かるじゃろ』
「治せるよ爺さん。と言ってもあんたがそこまで死にたいのなら治さない。俺は患者の意思に流されやすい性格でね、よくやぶ医者扱いされるクズだよ」
この言葉にぎょっとしたのは狼だった。
この爺さんを助けたくて連れて来たのに治さないと、言った様なものだと感じたのだろう。
『ほら見ろ。所詮下等な人間の言う事だ、我々を騙す気なのだろう。娘よこれを元の場所に返してこい』
『待って下さいお父様‼この人間は死にたいのなら、と言いました。つまりお祖父様が生きたいと言えば治すのですよ‼』
隣でまた親子喧嘩が勃発したようだが俺には関係ない。
どうする爺さん。YES or NO?
『…………本当に治せるのか?』
「治せる」
俺は自信満々に言った。治さないものを治せる、と言うほど愚か者じゃないさ。
『何が望みじゃ。人間は欲深い』
お、話が早くていいね。
もちろん望みはあるし、欲も深い。
「望みは簡単だ。しばらくこの群れに居座らせてもらう。それが望みだ」
『理由は』
「生態調査さ。伝説の魔獣を近くで観察しながら生きるならこれ以上ない環境だ。もちろん他の人間達に公表する気はない」
最後のはこいつらへの配慮って訳じゃなくただの独占欲だがな。
『本当じゃな?』
「くどい」
『では頼んでみようかの』
『お義父様!?』
『お祖父様‼』
親父さんと狼が真逆の反応で面白いな、これ。
でもま、とりあえず治療に入りますか‼
「あ、ところで爺さんの牙は健在か?」
『当たり前じゃ。身体は弱ろうと牙は死後も生きる』
「大丈夫なら良いんだ」
てか死後も生きるってどういう意味だよ?ま、何かの比喩かもしんないけど。
とりあえず準備だ準備、ズボンに入れてたろくに切れないナイフで左腕の毛を剃る。次に消毒したいんだが……酒もないし水できれいに洗うか。簡単な魔法なら使えるし、自分で水を出して洗う。
これ結構野蛮な治療法だがこいつらは気にしないだろう。
なんたって野良だし、野生だし。
あと、外野の狼どもはジッと俺見るな。
「そんじゃ治療始めんぞ爺さん」
『儂は何をすればいい?』
「簡単簡単、俺の腕を噛んで血を流させろ。そしてその血を飲め」
『それだけか?』
「それだけ」
『ふん、嘘臭い』
『お父様‼』
まぁそりゃそういう反応は当然だよな。
でもな親父さん俺が血を流せたらこれがどれだけ手っ取り早い治療かすぐに分かる。
「早く噛めよ爺さん」
『うむ』
「あ、骨は砕くなよ」
『わかっている』
そして爺さんは俺の腕に噛み付いた。
『こっこれは!?』
あぁ痛って。マジ痛ってぇ。
けど解ったろ。俺の血肉には大量の魔力がある。
しかもその量だけなら伝説の魔獣の魔力不足を補えるほどの魔力が。
『ちょっと、どういう事!これほどの魔力が有るのに『調教師』だなんて、これの量だけなら!』
「勇者以上だよ、まぁ訳有りだけど」
『訳有り?』
「そう、訳有り」
簡単に言うと魔力量が多すぎて体の方が付いてこれない。全力で力を使えば俺の体が爆散する。
『つまり魔力量が多すぎて逆に力が出せないって事?』
「そうそう。普通は訓練やら修行やらで魔力が上がっていくはずなんだが、俺は生まれつきこんな魔力量でな。しかも歳を重ねるごとにまた魔力が上がる。おかげでガキの時はよく体調を崩してた」
溜めきれない魔力は熱になって散らされるが、おかげで親に心配ばかりかけてた。
「だからこの機会にここで体でも鍛えようかと思って」
『だからここに住む事を条件に?生態調査の事を言った時は嘘の臭いはしなかったけれど、そっちが本命かしら』
「まぁねぇ。でもお前らに興味が有るのも本当」
『食えない人間』