告白を決意したものの、時間はずるずると通りすぎ、カレンダーは七月に。こころ食堂での二度目の夏を迎えた。

 夏は恋の季節と言うけれど、食堂にはあまり関係ない気がする。お客さまの麦茶のおかわりが増えるので動く量は増えるし、そうすると汗をかくので匂いが気になるしで、むしろ恋の季節からは遠ざかっている気が……。

 それならいつならいいんだ、と自問自答したくなる。私はただ単に、『まだ告白しなくていい』という言い訳を探しているだけなんだ。

 毎朝、決意して出勤しても、一心さんの顔を見たとたん、『この居心地のいい場所をなくしたくない』と思ってしまう。このままじゃ、なにか大きなきっかけがなければ告白なんてできっこない。

 私の気持ちなんて知らないまま、一心さんは新しい夏限定メニューの開発にいそしんでいる。とうとう完成したようで、今日のまかないはその限定メニューの試食をすることになったのだ。

「うわあ、かわいい!」

 カウンターの上に置かれた定食を見て、私は歓声をあげた。

「去年の夏バテ定食が好評だったから、それを改良してみたんだ。今回は七夕をイメージしてみた」

 去年の夏バテ定食は、薬味たっぷりのそうめんと夏野菜の揚げ浸し、肉巻きおにぎり。夏バテのときに足りなくなりがちなお米と肉を摂るためのメニューだ。薬味で食欲を増進させたあと、肉巻きおにぎりを食べ、揚げ浸しで口の中をさっぱりさせる、という作戦だった。

 今回は薬味たっぷりのそうめんと肉巻きおにぎりのセットで、去年より一品少ないのだが、そうめんの見た目が素敵すぎた。

 天の川をイメージして、お皿にななめに盛り付けられたそうめん。その周囲には、星に見立てたトッピングたち。輪切りにされたオクラは星形でかわいいし、パプリカやアスパラガス、輪切りにされたとうもろこしといった色鮮やかな夏野菜たちもそうめんをにぎやかに彩っている。これを、薬味をたっぷり入れたつゆにつけていただくのだ。