日陰が無く、生徒達は常に日差しの下か雨の下。エレベーターが使えず階段で自分の椅子を運動場に下ろし、終わった後に土で椅子の足を拭かなきゃいけないのを承知上でそこに腰を降ろす。昼食時は皆がにぎわって家族と行動を共にする。家族が来れなかった家は友達の家族に混ぜて貰う。


 私は今城先生と二人きりで過ごした。先生は寂しさを紛らわすために、私に沢山話しかけてくれた。彼にとっては最も嫌な体育行事だけれど、それが私にとっては最も楽しかった体育行事だ。

 私は先生にとって思い出したくない思い出を掘り返してしまった。先生は私を怒らない。何も言わない。でもその話を続けられたくないようで、逸らした。


「合唱コンクールは嫌がる生徒が多い。大きな声が出せない者や、音程が取れない者は勿論、人前に立つのが苦手な背の低い生徒は、最前列になったとき当日の世界が地獄に変わる。消去法で映画鑑賞会だな」


 何を上映するのか。興味の無い映画だと眠りの世界に入るだけ、学習系の内容は却下された。今城先生は生徒全員が知っているであろう、猫型ロボットアニメを選択した。


 映画鑑賞会なため、正しくはそのアニメの映画をだ。