「現実となったというのに、変な規則は残っているんだな」

「規則……ではないと思います。習慣みたいなものですね。本来必要ないにもかかわらず、食事という行為を行う先生も似たようなものかと」

「彼らに自我は?」

「先生の中にあります」


 今城先生は、ほんの少し残念そうな表情を見せた。

 所詮は作り物。

 作り物の現実。


「自我を与えたいのであれば、それを望めばいいですよ」

「作り物の自我を?」

「ええ。私と違って、本物ではない自我です」

「それじゃあ、意味ないな」


 彼はこう思っている。

 これでは睡眠時に見る夢の方がずっといい。


 夢は思い通りにならないから。頭の中で動くものだとしても、自分には相手の動きに想像がつかない。

 今も似たようなものなのに。


 少し違う。

 想像通りに動かなくても、自分の中の見えない理想通りに動いてしまう。

 迷惑だ。


 願いを叶えてくれた神様の、ほんの少しの嫌がらせなんて……。