ワイングラスやお手拭きの数を見れば、誰であっても気付くと思う。


「当然でしょ」

「実はパパが仕事から帰ってきたのよー! 旭ちゃんを驚かせようと思って――」

「嘘。お父さんだったらお母さんは私の隣には座らない。四人席に案内されたとき、親は隣同士に並んで座って、向かいに子供一人を座らせる。昔からウチはいつもそうだったじゃない」

「もうっ! 旭ちゃんってばつまんない! 変なところで観察力と記憶力があるんだから! そういうところも好き! 流石は私の娘だわ」


 上品さはどこへやったのか、グラスに入っているワインを母は一気に飲み干した。他のテーブルの食器を下げているウエイターを呼び止めて、追加のワインを注文する。

 その最中に、私が頼んだノンアルコールカクテルがやってきた。誰とも乾杯せずに一口喉に通すと、苺の微炭酸にほんの少し、パイン風味の味が口の中に広がった。


「覚悟は出来てるよ」


 ウェイターのお兄さんが下がったのを確認して、グラスを置くと共に母に問いかける。



「お父さんが私の結婚相手を見つけてきたんでしょ?」