無論そのつもりだが、佐藤旭という人間のことをもう少し知りたくて、どういう考えからその答えにたどり着いたのか聞かせて欲しく、向こうにとっては無駄な回答をさせてしまう。
「利用されたくないからです。あと、面倒だから。佐藤先生が私の兄と知って、更に一緒に暮らしてると知られれば、テスト問題教えてとか絶対に数人からは言われますよ。私が良い点数を取っても、努力じゃなくて元から答えを知っていたんでしょう? って。根拠のないことを言ってくる人もいるかもしれません。面倒くさい人間関係は、必要最低限に留めたいんです」
――先程のことといい、予想外の会話から、あの日……彼女の母親があの提案をした理由が少し分かった気がする……。
「佐藤先生だって、私が妹だと知られて根堀り葉堀り職員室で質問レースに遭うの、嫌でしょう?」
知られることは、別に構わない。むしろ知られるべきであり、知られた方が好都合でもある。