決まれば行動は急げだ。急遽個室を用意してもらうためには佐藤先生ではなく私が動く必要がある。そしてショップに行って衣服をチェンジ。目標時間は十分。
「私は着替えてきますので、もし八時を過ぎてしまったら先生は私の分もエビチリを確保しておいてください」
「よし、まかせろ。ところで……」
早足で席を離れようとして、聞こえてきた先生の言葉の続きが気になり振り返った。
「兄と信じていない割には、俺と密室で二人きりになるのは平気なんだな」
個室といってもウェイターさんは出入りしますし、それに……。
「なにかあれば、佐藤先生一人を社会的に抹消することくらい簡単なので。先生も私の兄なら、佐藤の家のことくらい存じておりますよね?」
母が私を任せた相手なのだから、大丈夫だと思っている。
納得したからなのか、予想していた答えだったからなのか、理由は分からないけれど先生は面白そうに意味深な笑みを浮かべて見送った。
八時前、戻ってきてテーブルの上に新たに料理を持ってきた様子がなかったのは、どうせ移動するから取りに行かなかった、もしくは一人バイキングが駄目、そう思うことにする。