彼女は自分の買った包みを僕にくれた。

これって意味があることなのだろうか?・・・・。
あるんだろうな、きっと。

「ねえねえ、下の岩場のほうに行ってみようよ」

彼女はそう言うと同時に僕の手を引っ張って歩き出した。

島を下って海岸に出ると、そこにはゴツゴツとした岩場が広がっていた。
小さいカニや小魚、あとはタニシのような貝がたくさん見えた。

「きゃーカニさんかわいいー!」

無邪気にはしゃぐ彼女が一層眩しく見えた。
彼女にフラれてしまったという事実が余計にそう感じさせたのかもしれない。

「なあに?」

僕はまたボーっとしてたようだ。

「いや、ごめんね。別に・・・・」

意表をつかれた格好になり言葉に詰まった。
彼女はクスっと笑いながらまたカニを追っかけていた。

岩場をちょっと奥に行くと、平らな大きい岩が連なっており、僕らはその岩の上に空を見上げながら寝ころんだ。

空には小さい雲ひとつ無く、まさに快晴という天気だった。

仰向けになった体で空を見上げる。
視界に映るのは、あたり一面の真っ青な空だった。

こういう色を群青というのだろうか。
こんな光景は見たことがなかった。

なんて綺麗なんだろう。
空ってこんなに綺麗だったんだ・・・・。

「あー、気持ちいい!」
僕は学校をサボっているという罪悪感を吹き飛ばすように叫んだ。

だんだんと気持ち良くなり、さらに睡魔が襲ってきた。
いつの間にか僕たちはウトウトと眠ってしまった。

しばらくすると、周りに何か嫌な違和感がした。 
さっきまで周りに見えていた岩が無いのだ。
あたりを見回すと、僕たちがいる岩場は水に囲まれていた。

「やっばい! 満ち潮だ!」

僕は叫んだ。
そう。僕たちは岩場に取り残されてしまっていた。

「どうしよう・・・冴木くん」

彼女は今にも泣きそうな顔になっている。
落ち着いて海面をよく見ると、水面の奥にはまだ岩が透き通って見えていた。

「大丈夫、まだ浅い。行けるよ」

僕は制服のズボンをヒザまでまくり、海の中に足を入れて深さを探る。
どうやら水はまだヒザ下までだ。
よし、行ける。

「大丈夫だ、靴とソックスを脱いで」
「うん・・・・」

僕は彼女が脱いだ靴とソックスを受け取り、彼女の手を引く。

「ゆっくり・・・ゆっくり下に降りて・・・滑らないように気をつけてね」