#クイーンの歌 7日間リレー day 4

#クイーンのうた7日間リレー by Roger M.T.
Day 4
White Man
 『A NIGHT AT THE OPERA』の大成功でついに悪徳マネージメントと決別し、長年苦しめられた金銭的問題を解決、”自由と成功と自信“に満ち溢れた4人がやりたいことを全部やった的なアルバムの曲。プロデューサーは今までのロイ・トーマス・。ベイカーから離れ、初めてクイーンによるセルフ・プロデュースが行われた。サウンド・エンジニアは凄腕Mike Stone。デビュー・アルバムからエンジニアとしてクイーンと深くかかわり、メンバーと気心知れたエンジニアだ。この作品、および次作『NEWS OF THE WORLD』では共同プロデューサーとしてクレジットされている。

 このMike Stone、ホントに凄い人。アビーロード・スタジオでのビートルズ・セッションでキャリアをスタートし、のちにトライデント・スタジオに勤務、ロイの1番弟子的存在のエンジニアとなった。音にこだわるクイーンの4人のリクエストに応え、求める音を適格に造りあげ録音できる能力に長けていた。取りまとめ役のロイ・トーマス・ベイカーとともにクイーンの初期サウンドを握った大変重要な人物。スケジュールの関係でクイーンとの仕事は『News Of The World』までだが、この2作で得た経験をもとにジャーニーの最大ヒットアルバム2作となる『Escape』、『Frontiers』、そしてエイジアの『ASIA』『ALPHA』という「80年代商業ロック」の代表的アルバムを次々に生み出すスーパー・プロデューサーに成長した。深く、大きく響くドラムの音はロイ・トーマス・ベイカー譲りだが、その音のクリヤさはそれぞれの作品を聴くとよくわかる。ロジャーはもちろん生音が素晴らしいドラマーなので出来上がったものがいい音なのは普通に理解できるが、普段ペラペラな音のドラマーの出音もじつに魅力的な音に代えることができる魔術師だ!(特に誰とは言わないけど、ジャーニーのSteve Smithではない ←言ってるし (笑))

 さてなぜ「White Man」か?それはズバリ“ギターとドラムの音“。特にドラム・サウンドの響き方が素晴らしいからだ。デビュー以来使ってきたキットから”これでもか!”と欲しかったものを全部並べまくったような巨大なドラム・キットを導入。6”,8”,10”,12”,13”,14”,15”,16”,18”,20”とこの世に存在するすべてのサイズ、10個ものタムを独創的な配置で並べ、その周りにシンバルをぐるっと林のように樹立させたものなのだ。同じアルバム内の「You & I」「Long Away」の中間部ではこれを全部使ったフィル・インが聴ける。この時期のこのキットでないと絶対に出せないフィル・インが見事に曲の1部になっていると感じるが、もしロイ・トーマス・ベイカーがプロデューサだったらきっとボツにしているだろうと推測する。(笑)
 White Manの素晴らしさは音だけでなく、そのドラムのフレーズ、「これぞロジャー・テイラー!」のオンパレード。イントロのフレディのボーカルのバックではPaiste 22” China Typeのシンバル・ロールが空気感を与え、そこから短い静寂の後大きなタム2つの連打と深いスネアの音で「ドドタン!」。シンバルのクラッシュ・ミュートを拍の頭においてスタートした後の盛り上げ、「ドドドド!」の2つのタムの連打。ギター・ソロバックでのタムの連打から間髪入れずにシンバルのクラッシュ・ミュート、随所に入る大きなタムのフィル・イン。ラストではフレディのアウトロ・ボーカル後ろにChina Cymbalで空気感を与え、最後のとどめは大きなフロア・タムとバスドラムで入れる「ドロン!」というロジャー印! もう、すごいったらない。
 ライブの方では同時期に手に入れた、当時世界に8枚しか存在しなかったPaiste Symphonic Gong 60”を背後に置き、激しくブチ鳴らす!(それまではレンタル品) ビデオで注目してほしいのは銅鑼をマレットを用いてバンバン鳴らす時も、決して真ん中を叩いていないこと。銅鑼の真ん中のしるしは「ここを叩いてはいけない」という印で、叩く目標ではない!銅鑼は真ん中を叩くと簡単に割れてしまうものなのだ。またその後、こぶしでロールさせる叩き方も銅鑼の演奏テクニックで重要な叩き方。こういう細かなところまでしっかり基本を守るのもお師匠流。1977年Houstonでのライブ映像が残っているのでここに貼っておく。
https://www.youtube.com/watch?v=0qzAPQyQWUc
ライブ版の方がスピーディなフィル・インが多い。この曲はスタジオ版でもライブ版でもどちらも大好きだけど、Queerで演奏する時はこの1977年ライブ・バ-ジョンに忠実に演奏している。もちろん後ろにフレディのソロ、そして預言者の歌をくっつけて!
 
 セルフ・プロデュースはいい面も悪い面も出る。メンバーの創作意欲をそのまま作品に反映できる反面、取りまとめ役がいないと作品が散漫になる危険性もある。のちにブライアンはインタビューでこう語っている。「自分たちはセルフ・プロデュースができない。自分たちを取りまとめる誰かが必要不可欠だ」と。残念ながらこのアルバムはタイトルからして前作の2番煎じ的なみられかたをされることが多いが、音から感じ取れる“自由の喜び”は素晴らしいものがある。個人的には歴代で1、2を争う大好きなアルバムだ。間違いなく素晴らしいアルバムではあるが、セールス的には振るわなかった。クイーンの歴史的ヒット作となるアルバムたちにはロイ・トーマス・ベイカー、マイク・ストーン、ラインホルト・マック、デヴィッド・リチャーズ。 これらの「魔術師」が必要だったのも事実なのだ。

White Manだけの綺麗な映像はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=4or_4CNypY4

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