十二月に入ると、アイドル部は音楽番組への出演で忙しくなる。
札幌からの生中継がほとんどなので、移動のリスクは低いが、それでも各局に出るのでてんやわんやとなる。
とりわけ今年は、
「モデルデビューした鮎貝みな穂ちゃんです!」
などと、だいたいがみな穂にクローズアップされるので、
「先輩には悪いけど、うちらは楽できるよね」
翔子が言うと、なぜか笑いが起きる。
ほぼ毎週あちこち出まくって、あとは六本木と紅白を残すだけとなった頃、
「あ、駿平から来た」
るなのスマートフォンに、メッセージがある。
「でも少し文体が違うね」
それもそうで「駿平の姉です」とある。
「あなたにだけ、駿平のLINEを借りてお話しておきます」
読み進んでゆくと、るなの顔が蒼ざめてゆく。
思わずスマートフォンを落としそうになり、隣にいた薫が咄嗟に拾った。
るなは薫から受け取ると、
「…ありがと」
るなは部室を出た。
さっきまで降っていた雪は止んで、薄暮にも関わらず雪で明るい。