秋から変わったのはメンバーたちだけではなかった。

 不定期ながら、清正も情報番組でコメンテーターをすることになったのである。

「無名の学校を有数の人材輩出校に変えた人物」

 として評価を受けたことが要因であった。

「何もやっとりゃせんのですよ」

 ただ彼女たちに自分で決めさせ、自分で責任を取ることをさせている…それだけのこと、と清正は言う。

「スクールアイドルって、一見チャラチャラしとるようにも見えますけど、人間力の形成にはうってつけなやり方やと思います」

 目標意識、協力の重要性、相手を尊重する配慮、さらには裏方として金銭の管理や、ビジネスの基本を学ぶこと…。

「これが見事に詰まってる世界なんですよね」

 求められると清正が書いたのは、

「才高く智明るしといえども、見聞をあやまてば酔生夢死(ぼうし)して、みずから(さと)らざるなり」

 という、古典の教師らしい程子(ていし)語録の一節である。

「つまり自分が見聞きしたことを活かしなさい、って意味なんですけどね」

 それをあとから聞いた英美里は、はじめて清正の頭の中ですべてがつながっていたような気がした。

 こうした清正の思考ははるかな後に書籍にまとめられたのだが、このとき関わったのはこのときすでに社会人となっていたみな穂と、ストーリーライターから作家となっていた藤子(とうこ)であった。