清正は午後から合流予定である。
「現役スクールアイドル、ついに降臨」
というのもあって、通常なら割と空いているはずが、なぜか混んでいるのだという。
昼近くなって清正が入構証を提げてあらわれた。
「入ってくるとき、何でか知らんがサイン色紙書く羽目なったわ」
この頃になるとプロデューサーのようなポジションの清正は、
──お屋形さま。
とコアなファンの間ではそう呼ばれていた。
「今回はレアキャラのお屋形さまが来る」
というので、ちょっとした話題となっていたらしいのだが、当の清正は知らなかった。
ただの学校の先生やで、と清正はボヤいたが、
「でも澪の時代から数えたら、四年ぐらい顧問やってますよね」
美波に言わせると、大事なサブキャラらしい。
「だいたいスクールアイドルって言ったらプロデューサーは架空とか、あとはゲームプレーヤーですけど、うちのは実在してるんだぁ…みたいなもんですからね」
「ワイは初音ミクか」
清正のツッコミにメンバーは少しほぐれたようであった。
「うちら薫ちゃんの分まで、はっちゃけて来るから」
英美里に珍しく函館弁が出た。
薫はそれだけで、なにやら嬉しくなっていた。
部長のみな穂を中心に円陣が組まれると、
「アイドル部、いくぞーっ!!」
「オーッ!!」
全員で声出しをした。
「アイドル部のみなさん、本番でーす!」
スタッフに促され、駆け足で舞台袖へ移動した。