そう決めてじっとキャンドルを見つめていると、塩見くんが怪訝な顔で尋ねた。

「先輩、どうかしたんですか? 顔がこわばってますけど……」
「あ、ううん。なんでもない。なんか、クリスマスだけどいつも通りだなーって思ってたの。ロマンチックっていうより、落ち着く感じっていうか。あ、ええと、私が相手じゃ、そもそもロマンチックな雰囲気にはならないと思うけど……」

 なにを言っているんだ、私は。これだと、塩見くんとロマンチックな雰囲気になりたかったみたいじゃないか。

 わたわたと言葉を探しながら言い訳をしていると、

「先輩は、ロマンチックなほうがよかったですか?」

 と訊かれた。ふだんの塩見くんとは違う、真剣な顔で。

「う、ううん。いつも通りじゃないと緊張しちゃって、おつまみがおいしく食べられないかもしれないもの。塩見くんが演出してくれたスノードームとキャンドルのほっこりさが、ちょうどいい感じ」

 まさに今、いつも通りじゃないあなたに緊張しているのですが。
 私には、どうして塩見くんの顔から笑顔が消えたのかわからなかった。

「……そうですか」

 じっと、塩見くんが私を見つめる。いつの間にかふたりのお皿からケーキはなくなっていて、キャンドルの灯も消えていた。