秋は食べものが一年で一番おいしい季節だ。サンマの塩焼き、秋鮭のちゃんちゃん焼き、栗ごはん、デザートにはかぼちゃのプリン。

 これらは全部、秋になってから塩見くんの家で食べたおつまみごはんだ。夏場は食欲がなかったぶん、解禁された胃袋がおいしいおつまみを求めて唸り声をあげている。最近、自分の食欲にそんな恐れを抱いている。

「先輩、もしかして少し太りました?」

 シフォンブラウスの上にツイードのジャケットを羽織って、ワイドパンツで出勤したら、デスクに荷物を置いた途端に久保田が目を光らせた。

「うっ」

 最近身体のラインを拾わない服ばかり着ているのを気づかれたのだろうか。それともこのワイドパンツの後ろ部分がゴム仕様だから?

「わ、わかる?」
「あ、やっぱりそうなんですか? なんとなく顏が前より丸いかな~って思ったくらいでした。でも、先輩今までが痩せすぎだったんだから、少しは太ったほうがいいと思いますよ」
「そ、そう? でも最近、スカートとかブラとかきつくなってきて……」

 私がウエストのお肉をつまみながらぼやくと、久保田は「うう~ん」と唸った。