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打ち上げやるよ、とリサさんから連絡が来た。金曜日の七時集合、朝まで騒ぐからそのつもりで、と絵文字たっぷりのメールが来て、リサさんの浮かれぶりがよく伝わる。
了解の返事を、私には珍しくこちらも絵文字付きで返して、もう一通、今度は別の人に当てたメールを打つ。
『金曜日、打ち上げの前に、少し話せないかな?』
潤平くんに、きちんと気持ちを伝えなきゃ。彼のあの優しい目は、私ではなくてほかの子に向けられるべきだと思うから。
潤平くんからの返事はすぐに来た。
『六時に、バス停の前のコーヒーショップで待ってる』
当日、少し早目に店に着いた私は、入口からすぐ目に着く場所に席を取った。ガラスの向こうに行き交う人の波を見ながら、ぼんやりとコーヒーを啜る。
もうすぐ春だな、と思った。まだまだ風は冷たいけど、だんだん日が長くなってきている。歩いている人の服装も、明るい色が増えて、なんだかみんな足取りが軽くなっている気がする。
新しい生活が始まる季節だ。そして、いろんなものに終わりを告げる季節。
この一年、いろいろあったな、としみじみ思う。違う世界を覗くことができて、そこでいろんな人に出会って、きっと前の自分より強くなった。
私を変えてくれた人のことを、思い浮かべる。想いの形は変わっても、きっとずっと、大切な人であり続けるんだろう。この恋がどんな決着を迎えようと、私を強くしてくれた事実は変わらないから。
潤平くんが窓の外を歩いてくる姿が見えた。私に気付いたので手を振ると、小さく振り返してくれる。店内に入ってきて、自分の分の飲み物を買って、私の前に座った。
「元気にしてた?」
「うん。潤平くんは?」
「俺も相変わらずだよ。バイトと家の往復」
そう笑って言うと、少し顔を引き締めた。
「話したいことって、なに?」
いつもと変わらない余裕の中に、少しだけ緊張感が滲んでいる。
私はどう切り出そうか、ちょっとだけ迷ってから、ゆっくりと口を開いた。
「あれからいっぱい考えたんだ、自分がどうしたいのか。初めは考えないように、って意識してたんだけど、私には無理だったから。じゃあ逆にとことん考えよう、って思って、考えて考えて、やっぱりわかった。私は桐原さんのことが好き。この気持ちは、簡単には消えないって」
潤平くんは私を見つめながら黙って聞いている。